5月17日は『お茶漬けの日』

5月17日は『お茶漬けの日』です。ご存知でしたか? これは、お茶漬けの最大手である永谷園が、2012年に一般社団法人の日本記念日協会に登録・制定した記念日です。

永谷園のHPによれば、「弊社のルーツは、江戸時代にお茶の製法を発明し、煎茶の創始者として京都にて“茶宗明神”として祀られている永谷宗七郎(宗円)にさかのぼります。弊社創業者の永谷嘉男は、永谷宗七郎からつながる由緒あるお茶屋の家系です。『お茶漬けの日』は、その永谷宗七郎の偉業をたたえ、命日の5月17日に制定しました」とあります。

永谷園という企業にとって、非常に重要な意味を持つ日であることが分かります。

お茶漬けを食べるシチュエーションは様々

それはともかく、お茶漬けが嫌いな人は少ないのではないでしょうか。ほとんどの人が、一度は永谷園のお茶漬けを食べたことがあると推察されます。

お茶漬けを食べるシチュエーションは様々です。飲み会の〆に食べる、小腹が空いたときの夜食に食べる、食欲がない時のエネルギー補充に食べる等々でしょうか。また、海外から帰国した時に真っ先に食べたくなるのがお茶漬けという人も多いかもしれません。

熱いお茶を注いでサラサラっと食べるお茶漬けは日本の伝統的食事?

実際、ご飯に熱いお茶をかけてサラサラッと食べるお茶漬けは、世界的に見ても珍しい料理のようです。確かに、似たようなお米料理は、リゾット、中華粥、クッパなど数多くありますが、どれも急いでサラサラッと食べるものではありません。

お茶漬けは、日本の伝統的文化を引き継ぐ料理というと言い過ぎでしょうか。業界最大手の永谷園には、江戸時代からの伝統を今後も守ってほしいものです。

2016年から株価が上昇基調にある永谷園ホールディングス

さて、その永谷園の持株会社である永谷園ホールディングス(2899)ですが、株価が好調に推移しており、1989年に付けた上場来高値(1,850円)が視野に入りつつあります。

まずは10年来チャートを見てみましょう。アベノミクス始動後に株価が上昇したのは他の企業と同じとしても、2016年2月を底として上昇基調にあることがわかります。確かに、凸凹もあるため一本調子の上昇ではありませんが、間違いなく上昇トレンドに乗っています。

思い返すと、昨年(2016年)は“トランプラリー”が始まる11月上旬まで、日本株の厳しい低迷が続いていました。しかし、既にその時、株価上昇が始まっていたのです。改めて、特筆すべき値動きだったと言えましょう。

永谷園ホールディングスの過去10年間の株価推移

緩やかな減退傾向にある国内のお茶漬け市場

ところが、少なくともこの時期には、株価上昇となる明確な理由が見当たりません。

まず、永谷園の主力製品であるお茶漬けは、その市場が緩やかな減退傾向にあります。2015年のお茶漬け市場は前年比▲3%減の175億円程度になった模様であり(出所:日本食糧新聞等)、ここ数年間は同じような傾向です。

実際、同社の有価証券報告書を見ると、「お茶漬け・ふりかけ類」部門の売上高は2014年3月期以降(それ以前は数値非公表)、155~161億円のレンジで推移しています。

少子化の影響があるかどうか定かではありませんが、国内のお茶漬け市場が成熟化して、成長が見込めないことは事実のようです。

過去最高益更新後に利益低迷が続いた直近5年間

同社が市場シェア8割超(推定)を有するお茶漬けがこのような状況ですから、業績もパッとしません。

2012年3月期に最高益を更新(営業利益42億円強)した後は低迷が続いており、特に、消費増税後の業績が冴えない状況です。2016年3月期実績の営業利益は約28億円まで減少しました。

こうした状況から見ても、2016年から始まった株価上昇は、足元の収益拡大を評価されたものではないと考えられます。

決して魅力的でない株主優待制度

そうすると、最近はやりの株主優待でしょうか? 永谷園HDも株主優待制度を導入していますが、投資単位株1,000株に対して、3,000円相当の永谷園商品詰め合わせに過ぎません。

2016年初当時の株価が1,000円強でしたから、この商品詰め合わせを手に入れるためには100万円以上の投資が必要でした。これでは、お世辞にも魅力的な株主優待制度とは言えません。なお、現在の株価なら150万円以上の投資が必要となっています。

また、配当性向は決して低くありませんが、1株当たり15円50銭で固定されており、配当利回りは高くないのが現状です(直近株価ではほぼ1%)。さらに、IRに注力する傾向が強い昨今ではめずらしく、決算説明会など一切行いません。

これだけで判断してはいけないのかもしれませんが、株主フレンドリーな企業とは違うような印象があります。

注力してきた新規事業、売上高伸長の牽引役に

では、なぜ?

もう少し詳しく見てみると、過去最高益を更新後に利益が低迷した直近5年間、売上高は着実に伸びてきました。そして、その牽引役が新規事業です。同社は「ビアードパパ」ブランドのシュークリーム等の菓子製造販売や、テイクアウト寿司の製造販売を手掛ける「中食その他事業」を、海外市場を中心に伸ばしてきたのです。

多くの人が持つ永谷園のイメージとかなり懸け離れていますよね。

2018年3月期は6期ぶりの過去最高益更新へ

先日行われた2017年3月期決算発表では、こうした事業領域拡大の取り組み効果が出ること等から、2018年3月期は6期ぶりの最高益更新となる会社予想を公表しました。営業利益は対前期比+57%増の48億円5千万円の見込みです。この決算発表後に株価が一段高となっていることは言うまでもありません。

もしかしたら、2016年初から始まった株価上昇は、今回の収益拡大を一足も二足も早く織り込み始めていたのかもしれません。今後の事業拡大に注目したいと思います。

LIMO編集部