いまさら聞けない、「パフォーマンスがいい」投資信託って何?

投資信託(ファンド)の良し悪しは「勝率」でわかる

「パフォーマンス」の定義とは?

投資信託(ファンド)を購入しようという時は、「パフォーマンスがいいファンドを買いたい!」「紹介して欲しい!」って誰しも思いますよね。でも、「パフォーマンスがいい」とはどういう意味で言っていますか? いくつか想定される定義をあげてみましょう。

① 「リスクがなく必ず儲かる」

もしあれば、まさにパフォーマンスがいいと言えるでしょうね。でも、この記事をお読みの読者ならそんなうまい話はないことはおわかりでしょう。

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② 「基準価額が10,000円をずっと超えている」

基準価額は設定時のタイミングにより、たまたま10,000円で始まり、その後のマーケットの状況で価額が動いていきます。

設定時に買った人はその後10,000円を超えていれば確かに儲かってはいますが、ベンチマーク(運用の指標)がそれ以上に上昇してα(アルファ=運用による超過収益)が出ていないなら、パフォーマンスがいいファンドとは言えません。

逆に、新聞の基準価額欄で、ある運用会社の全ファンドが10,000円を大きく下回っていても、必ずしもその会社の運用が下手だということにはなりません。

③ 「分配金が多い」

以前にも述べたように、分配金を出すと基準価額は同額だけ必ず下がります。分配金を基準価額で割ったものを分配金利回りと称してファンドを比較する向きもあります。しかし、これは単にそのファンドの分配方針が多数の投資家にとって元本の取り崩しになるような多額の分配でもできる設計になっているだけであって、運用が上手でパフォーマンスがいいファンドとは言えません。

上記①~③は、投資家から見た場合に投資の目的によっては効用があるファンドかもしれないことは否定しません。しかし、金融理論やそれを用いたファンドの優劣比較の場面において「パフォーマンスがいい」という定義には当てはまりません。

ファンドの分析者が優秀と評価するのはどれ?

では、どういうファンドを「パフォーマンスがいい」と言うのでしょうか? あるいはファンドの分析者が優秀なファンドと評価するのでしょうか?

ここで前回ご説明したベンチマークとαを思い出してください。

ベンチマークを設置しているファンドではαがコンスタントに多く出るファンドが「いいファンド」です。具体的に見るために以下の3つの例を比較します。単純化するためにベンチマークの騰落は割愛し、各年度のαだけ取り出しています。設定来累計とは、設定後3年経って基準価額が設定時の10,000円からいくら上昇したかを表しています。単純平均は各年度に出たαを平均したものです。

3つのファンドの設定後1~3年目の超過収益(α)比較

結果だけ見ると、設定来累計が同じ33%の上昇ですので同じだけ儲かっています。また、αの単純平均はC>A>Bです。

しかし、ファンド評価の見方からすると、おそらくプロの評価者はBを最優秀と評価するでしょう。少なくとも筆者が買うとしたらBを選びます。

まず、Aは最初1年目にドカンとベンチマークに勝って、その後はトントンか、やや負けです。基準価額とベンチマークを合わせてプロットしたグラフでは、常に累計がベンチマークより上にあるので優秀に見えますが、過去の貯金で上にいるだけで、芸能界でいうと一発屋です。

かなり銘柄数を絞って、たとえば以前お話ししたβ値の高い銘柄を、十分に分散もせず集中的に投資してマーケット全体の上昇時にベンチマーク以上に儲け、その後はあまり冒険せず、余生を過ごしているような例です。グラフでは見栄えでだまされやすいので、各年度のα値を丹念に見ることをお勧めします。

次に、Cは出入りが激しいですね。かつ最初にドカンと負けて下がっているので、その後相当大勝ちしなければ追いつきません。たとえば1年目に20%負けると2年目に20%勝っても実は元値には戻りません。当初の10,000円が1年後に8,000円、2年後に9,600円ということなので当初元本からは4%下がっています。

この手の経過を辿ったファンドは設定来累計が同じの場合、αの平均値は高く出ますが、最初下がった数字のマジックです。最初の負けを挽回するために相当リスクを取ってベット(=賭ける)しないと3年目の+39%は望めないでしょう。

最後に、Bはコンスタントに毎年10%上がりました。これは、上昇期、下降期等の色々な相場環境に柔軟に対応しながら的確な銘柄選択や売買のタイミングを駆使してαを出したと評価されます。

コンスタントであることを評価する理由は、AやCのようなファンドで、たまたまあなたが大きくαが出た年に投資していればよいですが、直近の実績を見て投資したら次の年はダメだった、という運の要素が少ないからです。

まとめ-勝率で見るとわかりやすい

上記のように、年度毎の単純平均は上に述べたようにむしろ数字のマジックにミスリードされることもあります。それよりも、累計パフォーマンスが同じようなファンドの優劣を数値化する手法としては、年次勝率、すなわち年度毎にベンチマークに対する勝ち負けを勝率として見るとわかりやすいでしょう。上の例ではAは1勝1敗1分け、Bは3連勝、Cは2勝1敗です。

機関投資家やファンド分析のプロによるデューディリジェンス(精査)では、月次勝率という細かいレベルまで丹念に見ることもあります。ただ、ベンチマークはすべてのファンドに設置されているわけではありませんので、次回はベンチマークのないファンドの良し悪しの見方をご説明します。

林 俊宏

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林 俊宏

国内大手信託銀行を振り出しに、系列の投信運用会社、外資系運用会社、販売会社等で一貫して商品企画に携わる。
株、債券、リートにとどまらずバンクローン、デリバティブ、ヘッジファンド、プライベートエクイティも投資または組成経験あり。
証券アナリスト協会検定会員、ペンシルベニア大学・ウォートンスクールにてMBA取得