株式やFXなどの投資を行っている個人投資家の中には、年間数千万円の利益を上げる方もいらっしゃいます。このように、投資で一定の利益を上げることができるなら、一度は考えたいのが法人化です。

一般的に法人化と言えば、社会的信用の向上や、取引先の拡大など目的はさまざまですが、個人投資家にとって法人化といえば、税金対策が重要な要素となります。

個人の税金と法人の税金

ここに、Aさんという個人投資家がいます。ある年にAさんが株式投資で800万円の利益を上げました。個人での株取引については、税率は20.315%(所得税15.315%+住民税5%)なので、株式売買の手数料を無視すると800万円の利益であれば1,625,200円を納税することとなります(基本的には証券会社が売買の利益から源泉徴収するケースが多いので、実際に確定申告することはあまりないかもしれませんが)。

それでは、Aさんが会社を作って株式投資している場合はどうでしょうか? 会社が納める税金は、主に法人税と地方税(住民税・事業税・地方法人特別税)という税金で成り立っています。この税金の合計の税率はおおよそ23%です。

「税率が個人よりも高いから会社は損なのでは?」と思えますが、話はそう単純ではありません。会社の場合、社長であるAさんへの給与支払いが発生します。Aさんの給与を額面で400万円と設定すると、この金額は会社にとって経費となります。そのため、会社として納める税金は400万円×23%=92万円となります。

一方、Aさんの給与については所得税と住民税が課税されます。詳細な計算は省略しますが、Aさんに扶養などの控除がないとして、所得税と住民税の合計で37万円程度の税金が発生します。結果として、合計で129万円程度の税金となります。ちなみに、株式の売買やFX取引については消費税はかかりませんので、他の事業を行わない限りは消費税について考慮する必要はありません。

個人と会社、どちらがお得かということは社会保険料なども加味する必要がありますので、役員への給与の額次第といえます。とはいっても、自分の会社である以上、自分への給与をいくらに設定するかということも自分次第。最終的には、会社の方が節税に繋がるということが多いといえます。

会社はどの形態を選べばいい?

証券会社で会社の口座を作るには、口座開設の審査を受ける必要がありますが、その前段階として、まずは会社設立の登記が必要となります。口座開設には、会社の登記簿謄本などを提出する必要がありますので、まずは登記が終わっていないと口座開設の申込すらできません。

それでは、会社はどのように作ればよいのでしょうか? 具体的な手続きや書類については法務局のサイトなどに載っていますが、まず決めなければならないのは、株式会社か合同会社かということです。

結論から言えば、個人投資家が作る会社は合同会社でよいでしょう。対外的には、株式会社のほうが通りがいいのですが、個人投資家が会社の名前を表に出すということはあまりありませんし、外部から出資を募るということもないでしょう。

また、合同会社は株式会社に比べて、設立にかかる費用が少ないのも有利なポイントです(株式会社が約25万円かかるのに対して、合同会社は約10万円)。また、株式会社は役員の任期(1~10年)が来るたびに登記をする必要がありますが、合同会社は役員の任期が存在しないので、その必要もありません。

このように、主に節税目的のプライベートカンパニーについては、合同会社のほうが適しているのです。

ただし、一点注意しておきたいのが、証券会社の口座開設です。株式会社でないと口座開設ができないという証券会社もあるようです。会社を作ったのに作りたかった証券会社で口座が開設できないといったことを防ぐため、会社を作る前に事前に証券会社に確認を取っておいた方がよいでしょう。

渋田 貴正