ロシア疑惑の深層~ウォール街は「ペンス大統領」を待っている

トランプ政権を揺さぶるロシアゲート問題、景気への影響は?

Evan El-Amin / Shutterstock.com

トランプ政権とロシアの不適切な関係を巡る疑惑、「ロシアゲート」の行方に注目が集まっています。ただ、一口にロシアゲートと言っても漠然としており、報道も断片的になりがちです。そこで今回は、ロシアゲートとは何かを簡単にまとめ、今後の見通しや景気への影響などを整理してみました。

トランプ大統領とトランプ陣営を分けて考える

ロシアゲートとはトランプ政権とロシア政府との不適切な関係を巡る一連の疑惑を総称していますが、時間の経過とともにさまざまな出来事が発生した関係で、そもそも何が問題となっていたのかがわかりづらくなっています。

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たとえば、最近では機密情報の漏えいであったり、捜査妨害などへの関心が高まっていますが、これらはロシアゲートから派生した問題であり、核心ではありません。

まずはトランプ大統領本人への疑惑とトランプ陣営とロシアとの共謀疑惑の2つの視点を便宜的に分けて考えると整理しやすいでしょう。

たとえば、これまでの主なイベントを挙げると、

  1. トランプ陣営の選対本部長、ポール・マナフォート氏辞任(2016年8月19日)
  2. ドイツ銀行、ロシアのマネーロンダリング(資金洗浄)を巡り4億ドル強の和解金で同意(2017年1月30日)
  3. マイケル・フリン大統領補佐官(国家安全保障担当)が辞任(2月13日)
  4. トランプ大統領、マンハッタン連邦地検のトップを罷免(3月11日)
  5. コミー米連邦捜査局(FBI)長官、ロシアゲートを捜査中と異例の公表(3月20日)
  6. トランプ大統領、FBI長官を解任(5月9日)

2つの視点は重なる部分も少なくはありませんが、1、3、5は主にトランプ陣営、2、4、6は主にトランプ大統領本人との関連が強そうです。

トランプ大統領はロシアとの不適切なビジネスに疑惑

ドイツ銀行はトランプ氏への主な貸し手です。ドイツ銀行からの融資は1998年に開始されており、これはロシア危機でルーブルが暴落し、ロシア国内から海外へと資金が流出した時期と重なります。

また、ドイツ銀行は“トランプ・ワールド・タワー”にも融資していますが、このタワーにまつわるロシア疑惑も報道されています。

今回発覚した資金洗浄は株取引を利用した比較的最近の動きであり、トランプ氏と直接関係はありません。ただ、事件が明るみになったことでドイツ銀行はトランプ氏とロシアとの取引記録を精査して司法省に提出する準備を整えていました。

こうしたなかで、ドイツ銀行の資金洗浄を捜査していたマンハッタン連邦地検のトップが解任される事態となり、これはロシアを舞台とした資金洗浄の捜査がトランプ大統領にも迫っていた可能性を示唆しています。

トランプ大統領は過去に破産を繰り返してきたことで有名ですが、破産した経営者に誰が資金を提供してきたのかというのは素朴な疑問です。

1990年代後半、経営していたカジノが破たんし、思うように借り入れができなくなったトランプ氏と、ロシア危機で資産を海外に移動したいロシア富豪の利害が不動産取引で一致したことは想像に難くありません。

このように、見方によっては20年ほど前に始まったロシアとの不動産ビジネスがロシアゲートの端緒となっているとも言えるわけです。

トランプ陣営には経済制裁解除を巡る疑惑

ロシアがトランプ陣営を支持した理由は明白で、ウクライナ問題を巡るロシアへの経済制裁解除が狙いだったと考えられています。

その窓口となっていたのが、マナフォート氏とフリン前補佐官であり、ウクライナの親ロシア派やロシア企業などから資金提供を受けていたことが次々と明らかになっています。ただ、疑惑が彼らに留まるのであれば、わざわざFBI長官をクビにする必要はないでしょう。

トランプ大統領はコミー前長官に繰り返し捜査対象になっているのかどうかを尋ね、「なっていない」ことを確認しています。恐らく、「なっていない」のは経済制裁解除を巡る疑惑に関してであり、トランプ大統領が知りたかったのは資金洗浄の捜査がどこまで進んでいるかだったと推測されます。

コミー前FBI長官は解任される直前にロシアゲートを捜査するスタッフの増員と予算の増額を要求しています。トランプ大統領は捜査が本人にまで及ぶことを恐れた可能性がありそうです。

ウォール街は早期辞任を歓迎

FBI長官の突然の解任や国家機密の漏えいといったスキャンダルが並んだことで、株式市場は一時世界同時株安の様相を呈しましたが、ウォール街の市場関係者は意外と冷静です。理由はトランプ大統領の辞任は米景気にとってはむしろプラスと受け止めているからです。

共和党が上下両院を制しているにもかかわらず、トランプ政権は政策の実現が危ぶまれています。トランプ政権と共和党との関係がぎくしゃくしているからです。トランプ大統領の目指す政策は必ずしも共和党の政策とは一致していません。

その点、共和党の重鎮でありライアン下院議長とも親密なペンス副大統領が政権を引き継げば、こうした懸念は大きく後退します。また、政権移行チームを指揮したのは、ほかならぬペンス副大統領ですので、閣僚人事も含めて政権が安定することが見込まれます。

ペンス副大統領も減税推進派であり、財政政策は景気にプラスとなることが予想されるほか、ムニューシン財務長官をはじめとする金融規制緩和派の経済閣僚も安泰であれば、景気も盤石が見込まれますので、ウォール街も枕を高くして寝られるというわけです。

共和党の手のひらで踊っている?

ロシアゲートの一連の動きを踏まえると、トランプ大統領は共和党の手のひらで踊らされている可能性もありそうです。

たとえば、以下が挙げられます。

  • FBIはロシアゲートの捜査を昨年7月から着手したとしており、これはトランプ氏が共和党の大統領候補に指名された時期と一致
  • オバマ前大統領からの警告にもかかわらず、フリン氏を補佐官に起用
  • トランプ氏のロシア関連口座を精査
  • 通常、進行中の捜査については言及しないFBIがロシアゲートを捜査中と公表
  • 特別検察官を迅速に任命

ロシアゲートは表向きには、トランプ陣営とロシアとの協調を捜査していますが、水面下ではトランプ氏とロシアとの不適切なビジネス関係の解明を進めている模様です。

参考
ドイツ銀行がロシア資金洗浄で和解に合意」「ドイツ銀行、トランプ氏のロシア口座を精査」「ドイツ銀行とトランプ氏」「トランプ・ワールド・タワーとロシア」「オバマ大統領、フリン氏起用に警告

投信1編集部

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投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。