民営化からもうすぐ12年、NEXCO3社の株式上場はいつ?

なぜIPOの機運が盛り上がらないのか

5月26日は東名高速道路の全線開通記念日

5月26日は東名高速道路の全線開通記念日です。

東名高速道路は、日本の大動脈として高度経済成長を牽引し、現在でも最重要の高速道路の1つとして位置付けられています。1958年の建設決定、1962年の第1期工事着手、1968年の第1次開通を経て、1969年5月26日に全線開通となりました。

また、東名高速道路の建設にあたっては、当時の日本道路公団が世界銀行から多額の融資を受けましたが(道路公団が受けた6回の融資のうち第3次借款~第6次借款)、その規模は同じ世界銀行からの融資プロジェクトである東海道新幹線の約4倍弱に上るビッグプロジェクトでした。

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なお、日本の戦後復興に向けて世界銀行から融資を受けるプロジェクトは、この東名高速道路が最後となっています。

日本道路公団の民営化は小泉構造改革の大きな成果の1つ

さて、話は変わりますが、2001年~2006年の5年強にわたる小泉政権では、郵政民営化を始めとする様々な構造改革が行われました。いわゆる“小泉構造改革”で、その中の1つが日本道路公団の民営化です。しかし、残念ながら最近はすっかり話題にならなくなりました。

日本道路公団は、高速道路と有料道路の建設および管理を一手に担う特殊法人でした。しかし、“税金の無駄遣い”とか“利権の温床”など、常に厳しい批判にさらされており、実際、数々の談合事件や天下り疑惑を起こしています。

その背景には、「道路族」と称される国会議員グループがあり、改革とは無縁の世界だったと言っても言い過ぎではないでしょう。

そこに小泉首相が2001年の就任直後からメスを入れ、紆余曲折を経て2005年10月に民営化が実現されたのです。これは郵政民営化以上に画期的だったと断言していいでしょう。

民営化後、機構とNEXCO3社に分割

なお、民営化に伴い日本道路公団は、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(以下、「機構」)と、東日本高速道路(NEXCO東日本)・中日本高速道路(NEXCO中日本)・西日本高速道路(NEXCO西日本)の3つの株式会社に分割されました。

普段クルマに乗っている方々にとって、NEXCOという名称は既にお馴染みではないでしょうか。

機運が高まらないNEXCO3社の株式上場

郵政民営化の最終ゴールの1つが株式上場(2015年11月、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3社)であったように、道路公団民営化でも3社の株式上場が期待されています。また、民営化後の経営の独自性と透明性を高めるためにも、早期に上場するべきだという見解もあります。

しかしながら、現時点では、NEXCO3社のIPOが話題に上ることは少ないのが実情です。確かに、何か大きなIPO案件(たとえば、日本郵政やLINEなど)があると、“次はNEXCOか?”という期待感が出るものの、その機運は盛り上がらないままになっています。

せっかく民営化したのですから、政府が一定の影響力を有する範囲で、広く資金調達をすればいいと考えるのは自然な見方です。

NEXCO3社はホームページでIR情報を開示

これらNEXCO3社のホームページを見ると、いずれも「IR情報」を掲載しており、毎期の決算短信や有価証券報告書もアップされています。

株主がたった1名(財務大臣)の非上場の企業としては、なかなか力が入った情報開示です。これだけでも、将来の株式上場を視野に入れていることが推察できます。

そして、ここ数年間の決算情報を見る限りですが、投資家の注目を集めるためには、まだ収益性の“構造改革”が必要不可欠であることがわかります。

高速道路事業の低採算性は深刻、不安定な営業収入が影響か

3社の業績にはややバラツキがあるものの、いずれも主力事業である「高速道路事業」は売上高(営業収入)の95%前後を占めていますが、その収益性の低さと営業収入の浮き沈みに苦しんでいるようです。

特に、高速道路の営業収入源である道路交通量は、ガソリン価格の変動や、航空会社や鉄道会社との価格競争の影響を受けて、非常に不安定な状況が続いています。

また、3社とも機構から道路資産を賃借している上、その賃借料に加算条項が含まれているため、コスト削減がなかなか進まないように思われます。

ちなみに、2016年3月期の「高速道路事業」の営業利益率は、東日本が1.3%、中日本が0.3%、西日本が0.5%に止まっています。また、未発表の2017年3月期は、中間決算の状況を見る限りでは東日本が大幅悪化し、残り2社も横ばい、もしくは、若干の改善に止まることが見込まれています。

関連事業への注力だけでは限界、次なる構造改革が急務?

各社とも関連事業に注力しており、特に「休憩所事業」では、着実な増収増益が実現されています。皆さんの中にも、最近のSAは利便性が高くなったと感じている人も多いかもしれません。しかし、それでも、全体の業績を押し上げるにはあまりにも力不足です。

NEXCO3社が国内外の投資家から注目されるためには、兎にも角にも、高速道路事業の収益性改善が必要不可欠です。民営化からそろそろ12年が経とうとしますが、NEXCO3社が自ら行う構造改革に期待しましょう。

投信1編集部

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投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。