株価が1年間で3倍に。業績も絶好調

小顔・美顔グッズで人気の美容家電のパイオニア、ヤーマン(6630)の株価が好調です。2017年5月30日の同社の株価は、同日付けの日本経済新聞による業績観測報道により前日比+8%高となり、翌日も+4%高まで買われ、2日間で+12%の上昇となっています。

また、直近の株価は、今年3月10日に付けた上場来高値(6,740円)からは約▲5%下回るものの、1年前に比べると3倍超まで上昇した水準にあります。

業績についても極めて好調です。同社は2017年4月期の会社予想について、昨年8月と11月に2回の上方修正を行っています。さらに、30日の日経報道によると通期営業利益は前年比3.2倍の33億円前後の大幅増益となり、従来の会社予想に対して4億円強の上振れになった模様と報じられています。

詳細は6月13日に行われる決算発表を待つ必要がありますが、引き続き主力の美顔器や痩身機器が中国向けに好調であることが業績の上振れにつながっているようです。

なぜヤーマンの好調は続くのか

ここで不思議に感じるのは、ヤーマンと同様に爆買いの恩恵を受けた時計大手3社と、その後の展開が対照的なことです。

時計大手3社、カシオ計算機(6952)、セイコーホールディングス(8050)、シチズン時計(7762)の2017年3月期業績は、前の期まで好調であった中国人向け需要の一服や円高の影響により、営業利益が2桁の大幅減益となっていました。

一方、ヤーマンの業績は2012年4月期以来5期ぶりに最高益を更新する見込みと極めて好調です。この背景としては、同社の中国市場への本格参入が比較的新しいことや、国境をまたいだ「越境EC市場」の開拓が順調に進んでいることが考えられます。

同社は2015年12月に、中国の電子商取引(EC)大手アリババ集団が運営する越境インターネットショッピングサイト「Tmallグローバル(天猫国際)」に旗艦店をオープンし、これを契機に中国向け販売を本格化させています。

その後順調に売り上げを伸ばし、2016年11月11日の中国の「独身の日」には、Tmallの美顔器部門における販売実績1位を獲得。取扱製品が美容家電だけであるにもかかわらず、パーソナルケア部門でも2位を獲得するなど目覚ましい成果を上げています。

また、今年3月に中国上海で開催された中国最大級の「家電博覧会(通称AWE)」に初めて参加し、美容家電で唯一の「2017 AWE Best Product 賞」を受賞しています。

このように、最近開始したばかりの中国市場への参入が順調に進展していることが、日本国内で中国人による爆買い需要が一服するなかでも好業績を上げられている背景であり、また、そのことが時計大手3社と差がついた要因の一つであると推察することができます。

加えて、製品単価の違いも無視できない要因です。美容家電の売れ筋商品の単価は2~3万円と、10万円以上する高級時計に比べるとかなり低いのです。このため、美容家電のほうが中国からの訪日観光客市場や越境EC市場において、幅広い所得層を取り込むことが可能と考えられ、そのことも足元の好調につながっていると推察されます。

今後の注目点

過去1年間の株価の急上昇は、業績の急拡大によって十分に説明できますが、当然ながら今後の株価はこれからの業績次第となります。

そこで、まず注目すべきなのは、女性社員を積極的に活用した感性に訴えるマーケティングや製品開発力を強みに、今後も魅力的な新製品を継続的に投入することができるかどうかです。

また、正確な需要予測が難しい「需要創造型商品」を扱っているだけに、需要予測の読み誤りによる在庫増や、開発費・販売費等の使い過ぎなどのリスクについては常に注視する必要がありそうです。

さらに、緒についたばかりの中国市場において、今後ブランド認知度を高め、市場を深堀りしていくことができるのか、また、女性向けばかりではなく男性向けの製品も拡充することが可能かなどについても注視していきたいと思います。

ヤーマンの過去1年間の株価推移

 

和泉 美治