ぶれないトランプ、でもそれで大丈夫なのか

トランプ政権発足から約5か月が経過しましたが、これまでのところ、トランプ氏は選挙中の公約をあきらめる姿勢は示していません。そのため、トランプ大統領は依然として相場のかく乱要因だと言えるでしょう。ただ、米国および世界経済が堅調であるため、株式市場は大崩れしないというのが今のところ大方のコンセンサスになっているようです。

実際、2017年5月31日には、米国の「パリ協定」離脱が近く決定されるという複数のメディア報道に対し、テスラ社のCEOでありトランプ政権の支持者でもあるイーロン・マスク氏が大統領の諮問委員会を辞める可能性を示唆するなど、政権内部の不安定さを示す動きがありました。それにもかかわらず、日米の株式市場は大きく反応しませんでした。

とはいえ、以下の記事にあるように、トランプ政権の政策は、短期的な景気浮揚効果はあるとしても、中長期的には米国経済を弱体化させる可能性が高いという見方が根強くあります。また、トランプ氏の周辺には長女イバンカさんをはじめ「パリ協定残留派」が多くいることから、政権内部の混乱はこれから本格化する可能性も考えられます。

このため、今後も米国政治の動きが株式市場に大きな影響を与えるリスクには十分な注意が必要であると考えられます。

出所:米経済を弱体化するトランプ政策 5つの誤り(楽天証券)

欧州の次の火種はイタリア

不安が残るのは米国だけではありません。欧州についても、フランス大統領選は株式市場には波乱を与えず無事通過したものの、2018年に予定されていたイタリア総選挙が前倒しで行われる可能性が浮上していることには注意が必要です。

以下の記事にあるように、イタリアで今秋に選挙が行われることが決定したわけではありませんが、「前倒しの可能性」が報道されただけで、イタリアの株式市場は大幅安となり、イタリア国債の金利は急上昇しています。

それだけ、反体制・反ユーロを掲げるポピュリスト政党、五つ星運動が勢力を拡大する可能性に対して、金融市場が神経質になっているということです。

出所:欧州に残る心配の火種、イタリア総選挙前倒しの可能性(投信1)

「中国の懸念」顕在化は2018年以降?

最近、比較的静かな中国についても見てみましょう。5月24日に米格付け会社ムーディーズが中国の格付けを“Aa3”から“A1”へ1段階引き下げましたが、これに対し、日本や中国の株式市場および為替市場では目立った動きは見られませんでした。

このため、今回の格下げの主な理由であった中国経済の成長率の低下と債務比率の上昇については、既に織り込み済みということになります。

とはいえ、以下の記事で言及されているように、中国の自動車販売が減税終了で急減速していること、住宅価格の上昇に陰りが見えてきたこと、インフラ投資は足元では好調ではあるもの、シャドーバンキングから地方債への借り換えによる金利低下効果が来年は剥落する可能性があることなどには注意が必要であると考えられます。

出所:中国の格下げ、懸念される経済の「3つの減速」とは?(投信1)

「配当貴族指数」に注目

では、このような不確実性が残る局面では、どのような投資行動を起こすべきでしょうか。その1つのアイデアとして考えられるのが、過去のパフォーマンスの実績(トラックレコード)が優れている「配当貴族指数」に注目するというものです。

米国の株式市場には、「S&P500指数構成銘柄のうち、25年以上連続して増配してきた銘柄群(40~50銘柄程度)」から構成された「S&P500配当貴族指数(S&P500 Dividend Aristocrats Index)」という株式インデックスがあります。この指数は、以下の記事にあるように、2000年を100とした場合の直近の相対指数は526と、S&P500種の231を大きく上回っています。

もちろん、S&P500種に対してどの期間でもアウトパフォームしているわけではありませんが、長期間で見た場合には明らかに高い成績を上げていることが実証されています。

ちなみに、日本では「25年以上」という長期にわたり減配や無配にならず連続増配を続けてきたのは花王(4452)だけですが、「過去10年以上連続して増配、または安定配当を維持している銘柄群」は多く存在し、これに対応した公募投信やETFが上場しています。ぜひ検討してみてください。

出所:不確実性を乗り越える?日本の配当貴族に注目(楽天証券)

LIMO編集部