就活にもビジネスにも「人間観察」が役立つ理由~決算説明会を例に

アナリストは決算説明会でこんなところも見ている

アナリストという職業柄、多くの決算説明会に参加します。特に3月決算の会社の発表が集中する4月下旬から5月にかけては、連日のように説明会が開催されており、長丁場の体力勝負のシーズンとなります。大相撲に例えれば五月場所、しかも、毎日何組もの取り組みがあるような感じです。

決算説明会でアナリストがどのように情報収集をしているかという観点から、「人間観察」がどれだけ役に立つかについて考えてみたいと思います。

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そもそも決算説明会とは?

決算説明会は、アナリスト・機関投資家向けとなっていることが多いのですが、投資とは直接関係しない金融機関の方(たとえば銀行の融資担当者など)や、メディアの記者やリサーチ会社の担当者、はたまた、同業他社の担当者が参加していることもあります。誰が参加できるかは会社が決めることですが、個人投資家の参加を可としている会社もあります。

決算説明会は、多くの場合、1時間くらいかかります。たいていの場合、会社側が決算報告と今期の見通しなどを一通り説明した後、参加者からの質疑応答の時間となります。アナリストとしては、出席者からどんな質問が出てくるかという点に注目しています。市場参加者がどこに関心を向けているかのヒントになることが多いからです。

最近は決算説明会のウェブ配信をする会社も増えてきた

最近では、決算説明会をウェブ配信する企業も増えてきました。ライブで配信する企業もあれば、後日、録画を公開する企業もあります。また、質疑応答のパートは配信せずに、会社側からのプレゼンのみ公開という会社もあります。

程度の差はありますが、こうしたウェブ配信はもっと増えた方が良いと思います。説明会に参加する側にとって便利ということもありますが、誰もが等しく情報にアクセスできるという意味で、すべての投資家を公平に扱うフェアディスクロージャーの精神にも合っているからです。

それでも決算説明会の現場でしか得られない情報がある

誰もがウェブ配信を通じて決算説明会を見ることができるようになれば、わざわざ決算説明会に参加する必要がないのではないか、という考え方も出てくるでしょう。しかし、私はそうは思っていません。決算説明会の現場でないと得られないものがあるからです。

それは何かというと、「会社側参加者の様子」です。その大事な情報を得るため、決算説明会では、私はなるべく前の方に座るようにしています。

決算説明会の現場でしか得られない情報1~経営チームの雰囲気

会社側参加者というのは、プレゼンをする人(社長のことが多い)だけではありません。CFO(最高財務責任者)や営業統括の役員、経営企画や財務の担当者、はたまたプレゼン資料のためにパソコンを操作する社員の方もいます。まるで、会社の役員会が目の前で開かれようとしていると言っても過言ではありません。

それを1つのチームとして観察します。すると、自ずとマネジメントチームの雰囲気も伝わってくるものです。社長の指示の出し方や、質疑応答での回答者の決め方などから、社長が何でも一人で決めている完全なトップダウンの会社なのか、何でもフランクに話せるフラットな雰囲気に包まれた会社なのかが分かります。

よく見ていると、社長以外のキーパーソンが誰か、ということのヒントが得られることもあります。

決算説明会の現場でしか得られない情報2~業績の確信度

また、プレゼンの際の表情や話し方、声のトーンなどから、「業績悪化の局面が峠を越えた」とか、「業績が好調なことをあまり話したがっていない(それだけ好調である)」という、現状や将来に対する経営チームの確信度が伝わってくることもあります。

逆に、社長が大きなこと、強気なことを言っている横で、同席している会社出席者が何となく渋い表情をしている時もあります。このような時は、会社予想に落とし穴がないかということに注意するようにしています。

「人間観察」を意識的に行うことで得られる情報

アナリストの仕事は、将来の業績や短期的な株価を当てることではありません。その会社がどのような状況に置かれているのか、将来どの方向に進もうとしているのか、さらには、この経営陣ならやってくれそうか、といったことを伝えることだと思っています。

今あげたことのほとんどは、最終的には人間力で決まるものですから(特にベンチャー企業の場合)、決算説明会の現場から得られる「人間観察」に基づく情報というのは、大変貴重なものなのです。

こうした話は、アナリスト・機関投資家向け説明会に限った話ではありません。

そもそも、アナリストに限らず、どんな仕事でも、または仕事以外でも、面と向かって人とコミュニケーションをとる場合、人は無意識のうちに、「人間観察」を通じて、相手がどのような人なのか、また、相手がどのような状態にあるのかを知ろうとしています。

「人間観察」を普段から意識的にやってみるだけでも、得られる気づきの量が格段に増えるはずです。

投資や資産運用の分野で言えば、これからシーズンを迎える株主総会に実際に足を運んでみるとか、証券会社等で行われているIRイベント等でのプレゼンを生で聞くとか、思っている以上に機会があるものです。

また、6月に入って大手企業の採用面談が解禁となりましたが、就職活動をする人にとっては、会社の人に直に会う機会はもっと多いかもしれません。

なお、1つだけ言えることがあります。それは、「生理的に受け付けない」と表現されるような、理由はよく分からないがネガティブな印象しか感じない時は、決して深入りしないということです。人間の危機回避本能がそうさせるのか、ネガティブな直感というのは、たいてい当たるものです。

藤野 敬太

ニュースレター

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藤野 敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。日本ファミリービジネスアドバイザー協会執行役員・フェロー