皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで調査グループ長を務めます柏原延行です。

ここ1週間程度は、花粉症の最盛期は過ぎ、まだ梅雨入りしていない1年で一番気持ちがいい季節であるように感じています。たしかに、日中は暑いものの、まだ湿度はそれほど高くなく、テラスなどの外での飲食が気持ちのいい季節です。先週訪れた公園では、大勢の方が屋外での食事を楽しんでいらっしゃいました。

さて、6月2日の日経平均株価は、終値ベースで、20,000円台を回復しました。この節目には、5月に数回チャレンジしましたが、なかなか20,000円を超えることができなかったため(図表1)、本日の20,000円台回復は、各種メディアで大きく報道されるのではないかと考えています。

図表1:日経平均株価の推移
2017年1月4日~2017年6月2日:日次

出所:ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成。

しかし、実は、本日の20,000円台回復には、上昇の明確なきっかけとなるニュースがないように思います。そこで、各種報道では、①米国の堅調な株式市場の影響や、②好調な日本企業の収益動向が上昇の原動力になったと説明される可能性が高いと感じています。もちろん、この解釈は間違いではないのですが、私は、20,000円台回復の最大の要因は、米国景気に対する信頼感の回復にあると考えています。

3月から5月中旬まで、発表された米国の経済指標が、全体として「事前予想比、低位に留まった」ことが経済の先行きに関する投資家の信頼感を揺るがせた局面があったと考えています。当社では、「発表された経済指標」と「事前予想」の乖離を把握するための独自分析ツール(MSEと呼んでいます)を保有しています。このMSE(米国部分)を見ると、3月頃から下降が加速しており、3~5月中旬までに発表された経済指標は「予想に届かないものが多かったこと」が示唆されています(図表2)。

図表2:MSE米国総合指数の推移
2016年9月30日~2017年5月30日:日次

出所:ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成。

※MSE(ミスイー)とは、当社独自のマクロサプライズ・インデックスです。 経済指標のサプライズ情報を集計することで、市場関係者のマクロセンチメントを定量化したものです。
※データは、加重移動平均3ヵ月。

予想に届かなかった経済データの典型的な例をお話すると、米商務省が4月28日に発表した第1四半期(1~3月)の実質国内総生産(GDP、季節調整済み、速報値)は、前期比年率+0.7%増であり、エコノミスト予想の中央値+1%増(ブルームバーグ集計)を下回りました(その後、発表された改定値は前期比年率+1.2%)。

この低調な経済データには、季節調整の問題があると考えています。月次や四半期の経済データは季節の移り変わりを反映して、季節的に変動するため(例:ビールは夏に売れます)、基調を捉えるために季節性を除去するテクニックが季節調整です。3月~4月の経済データに関していえば、復活祭が2016年には3月に、2017年には4月にあったことの影響が季節調整のテクニック上、うまく処理できていない可能性が取り沙汰されています。

私は、季節調整の問題が、MSE下落加速原因の主要な部分を占めると考えており、こう考える理由は、米国の地区連銀(ニューヨーク連銀とアトランタ連銀)が予想した第1四半期GDPの数字の乖離があまりにも大きいことです(図表3)。各地区連銀には当然のことながら優秀なスタッフが所属していると思われ、予想の大幅な乖離は、季節調整のような「テクニカルな要因」が存在していることを示すと考えています。 

図表3:米国のGDP予想モデル(NY連銀、アトランタ連銀)とブルームバーグコンセンサス
2017年1-3月期予想

出所:ニューヨーク連銀、アトランタ連銀、ブルームバーグのデータを基にアセットマネジメントOneが作成。

※ニューヨーク連銀:2017年1月27日~2017年4月28日、アトランタ連銀:2017年1月30日~2017年4月27日、
ブルームバーグ:2017年1月27日~2017年4月28日、実績値は改定値。

もし、3月から5月中旬にかけての米国経済指標の不振が季節調整要因であれば、この要因がなくなる今後については、強いデータが続くことが予想されます。たとえば、第1四半期が低調な結果であれば、その分第2四半期(4~6月)のデータが実態よりも強く発表され、半年を通じて見れば、経済実態は穏やかな拡大であったと評価できると考えており、5月中旬以降のMSEの上昇もこれを裏付けるものではないかと考えています(図表2)。

季節の移り変わりは人生を豊かにすると考えますが、経済データの分析においては、頭の痛い問題です。

(2017年6月2日 15:00執筆)

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柏原 延行