パナマ文書で脚光、「現金を持つ者に優しい国」とは?

中米の金融立国・パナマの不動産事情

Gualberto Becerra / Shutterstock.com

経済成長著しいパナマ

6月初め、パナマに行ってきました。

パナマは、北米と南米をつなぐ中米7カ国の中でも、ひときわ異彩を放つ国です。その特徴を簡単にまとめると次のようになります。

  • 太平洋と大西洋をつなぐ「パナマ運河」を持つ国
  • 中央銀行を持たず、100年以上「米ドル」を通用通貨としている国
  • タックスヘイブンとして名高く、海外富裕層向けの 「金融サービス」が高度に発達している国

パナマはラテンアメリカに属し、近隣諸国と同様にスペイン語を公用語とする国ですが、「運河」「米ドル」「金融」の3点セットを持つがゆえに、ラテンアメリカで最高レベルの所得水準(1人あたりGDP 1万4,000ドル超※)を誇ります。
※IMF 世界経済見通し(2017年4月)

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わずか人口400万人の小国ながら、首都パナマシティは中米で最も都会的な摩天楼を持つ街。失業率も5%と低く、近隣諸国のみならず、高失業率に悩むスペイン本国からパナマに職を求めてくる出稼ぎ組もいるほどです。

香港を彷彿とさせる金融都市パナマシティ(写真提供:筆者、以下同)

高層ビルが林立する首都パナマシティの金融地区は世界中から来たビジネスマンが闊歩し、高給を取るプロフェッショナルも多数。一方で、他のラテンアメリカ諸国と同様にパナマも貧富の差が激しく、首都を一歩出れば水道もない前近代的な環境で暮らす貧困層が大勢います。

また、道路インフラや公共交通が貧弱なところに都市が一気に拡大したこともあり、パナマシティは酷い渋滞に悩まされています。中心部から20km余り離れた郊外で一戸建に住む人が、片道の通勤に3時間かかることも珍しくありません。

平日の朝夕、長距離にわたって全く動かない車の列が続く日々。経済損失も大きいため政府は地下鉄の整備を急いでおり、現在は1路線だけ開通済みですが将来的には6路線が整備される計画です。

発展の代償、朝夕の渋滞は深刻な社会問題

中南米のマネーが集まるパナマシティ

近年はパナマシティの中心部や地下鉄沿線ではマンションの建設が相次ぎ、人々の「職住近接」ニーズに応えようとしています。

今、中心部で70~80平米、2ベッドルームマンションの価格は15~20万米ドル(1ドル110円換算で約1,650万円~2,200万円)が多く、職場の近くに住みたい共稼ぎの若いプロフェッショナル層に飛ぶように売れます。また、今の需給バランスなら月1,000ドル以上(10万円強)で賃貸に出すこともできそうです。

パナマの面白いところは、周辺諸国の通貨が軒並み弱く、米ドルに対して価値を下げていることです。隣国の通貨コロンビア・ペソの対米ドルの為替はここ2〜3年で4割程度も下がり、域内大国メキシコのペソでさえ似たような状況となっています。

そんな中、自国通貨の目減りに悩む周辺各国の富裕層が、米ドルで資産を持てるパナマに注目するのは自明の理。結果としてパナマシティはラテンアメリカ中のマネーが集まる場所になり、金融ハブとして存在感を高めています。

パナマは以前から、税率の安いタックスヘイブンとして富裕層向けの金融サービスに力を入れてきました。昨年の「パナマ文書」事件で、同国が世界中の金持ちや権力者が税金を逃れるために資産を置く場所である事実を知った方も多いことでしょう。

利子を稼ぎながらの不動産投資

そういうお国柄ゆえ、パナマの不動産融資制度も、自国民向けの住宅ローンを除けば「現金を持っている者に優しい」状況になっています。

「預金担保ローン」といって、不動産の売買代金全額をパナマの銀行に預ければ、それを担保に銀行が年利5%の融資を出し、同時に3%の利子も払う。その結果、差し引き2%前後の資金コストで不動産に投資することが可能です。

逆に、不動産代金の全額を用意できない者に対するローンの利率は非常に高く、年9%前後になります。この国では、現金を用意して、利子も稼ぎながら不動産投資するのが賢明であるようです。

最後に、パナマに投資する外国人は、税金面の考慮と相続や訴訟リスク回避の観点から「パナマ法人」を設立するケースが多いようです。期間1~2日、1,000ドル程度で簡単に設立できます。ひょっとしたら、パナマ文書事件の震源地となった「モサック·フォンセカ法律事務所」のご近所で法人をつくることになるかもしれません。

鈴木 学

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鈴木 学
  • 鈴木 学
  • アジア太平洋大家の会
  • 会長

大学卒業後、ITエンジニアとして世界で活躍し、現在は不動産専業。
日本、オーストラリア、タイ、アメリカ、イギリス、ドイツの6カ国で不動産を所有・運用中。2011年に海外不動産に特化した投資家コミュニティ「アジア太平洋大家の会」を立ち上げ、現在は2,300名の会員を擁する大所帯に成長。
業界紙コラムの執筆や海外不動産セミナー講師の依頼も多い。