投信1編集部による本記事の注目点

  • 海外のサービスロボット分野では、特に物品の運搬を代替するロボットの開発や実証が目立ちます。
  • アマゾンは、自社の物流施設に累計4万5000台以上のロボットを導入しています。
  • 宅配事業者などに代わり、店舗や配送の最終中継拠点から消費者までの配達、いわゆる「ラストワンマイル」の物品配送を行う走行型ロボットの開発も進行中です。

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ロボット市場の2016年の動向や17年の見通しを考察する連載の第4回。最終回となる今回は海外のサービスロボットについて取り上げる。

海外ではサービスロボットを手がける企業の数は日本に比べて少ない。しかし近年、その数は増加の一途を辿っており、かつ実用化に関する取り組みは日本の先を行っている事例が多い。特に物品の運搬を代替するロボットの開発や実証が目立つ。

自社の物流施設に累計4万5000台以上のロボットを導入しているアマゾンのほか、エーソンが手がける物品ロボット「TUG」は140以上の病院に導入されており、毎週5万回以上の運搬作業を行っている。そのほか、ホテル向けではサヴィオーク、農業向けではハーベスト・オートメーションといった企業が実績を積み上げている。

こうした海外ロボット企業には日本からも注目が集まっており、16年10月にはサヴィオークにリクルートホールディングスの投資会社が出資している。

また、米国市場に500億ドル以上を投資する方針を示しているソフトバンクグループも物流ロボットベンチャーのフェッチ・ロボティクスに出資しており、自社のロボット事業との相乗効果を見込んで、ロボット関連企業への出資が今後増えることも予想される。

サービスロボット分野では配達ロボットへの注目度が増している。

宅配事業者などに代わり、店舗や配送の最終中継拠点から消費者までの配達、いわゆる「ラストワンマイル」の物品配送を行う走行型ロボットで、英スターシップ・テクノロジーズ、米ディスパッチ、大手ピザチェーンのドミノ・ピザと取り組みを進める豪マラソン・ターゲッツなどが開発を行っている。

このうちスターシップ社の製品は、欧州最大級の食品配送会社である英ジャストイート(Just - Eat)が正式運用を開始した。

人間の代わりに配達を行うものとしてドローンの実証も進んでいるが、走行型ロボットは歩道を走るため規制が緩く、安全性も高い。信号の識別、防犯やイタズラ対策といった改善点・課題はあるものの、17年は欧米でジャストイートに続く本格採用や実証の件数が増える可能性が高い。

また、海外企業が日本での展開を加速させることも予想される。

直近でもアマゾンが川崎市の物流拠点「アマゾン川崎FC(フルフィルメントセンター)」にロボットを導入したほか、米フェロー・ロボッツ(Fellow Robots)は商品場所への誘導や在庫などの情報を提供できる買物支援ロボット「NAVII(ナビー)」の実証をヤマダ電機テックランド青葉店や仙台パルコ2で行った。

そのほか、中国トップのサービスロボットメーカーであるパンゴリン(Pangolin Robot)が17年から日本市場での展開を本格的に始動する。17年春ごろに日本事務所を構えるとみられ、主に飲食店や商業施設などで使用する運搬・案内ロボットの販売を進めていく。

日本では過去に掃除ロボットの実用化の際、「100%の安全性を確保できない」ことを理由に各社が商品化を見送った。その間にアイロボットの「ルンバ」に代表される海外メーカー製品がシェアを伸ばし、結果、グローバル市場だけでなく、日本市場でも後を追うかたちになった。

日本はロボット大国と表現されることも多く、産業用ロボットでは世界シェアの5~6割を有しているが、サービスロボットは実用化で遅れをとっており、現在の状況をみると、17年は海外企業が日本勢をさらに引き離す流れになりそうだ。

電子デバイス産業新聞 記者 浮島哲志(この稿終わり)

投信1編集部からのコメント

最近大きな話題となったヤマト運輸の当日配送撤退の一件などを始め、人手不足は少子高齢化を迎える先進国の多くが直面する課題です。記事にあるように日本ではサービスロボットに目が向いている傾向はありますが、今後は自動運転と物流関連のロボットは切り離せない領域となる可能性があります。

もし、近い将来そのトレンドを目にするようになった時、日本企業が物流関連ロボットで後れをとると自動車産業にも少なからず影響が出るかもしれません。いずれも個別の産業動向ではなく、相互に関係していく社会システムの一部として注目していく必要があるでしょう。

電子デバイス産業新聞×投信1編集部

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