新手の詐欺として知られる還付金詐欺。振り込め詐欺の一種ですが、何と”オレオレ詐欺”には引っかからなかった大阪人が還付金詐欺には騙されるようで、大阪での被害が他府県に比べ突出しています。

ここには、「大阪人はお金にガメツイ」という簡単な答えだけでは片付けられない事情があるのではないでしょうか?

大阪で多発している還付金詐欺被害

還付金詐欺は、公務員等を装い税金や保険料を還付すると偽って、逆に現金を振り込ませるという振り込め詐欺の一種です。

この還付金詐欺が大阪府で多発しています。平成28年度の全国の認知件数3,682件(被害額42億6000万円)のうち、大阪府が725件と2位の千葉県(481件)を圧倒しています。

大阪人といえば、”オレオレ詐欺”に引っかからないことで有名。そんな大阪人がなぜ還付金詐欺には騙されてしまうのでしょうか。その背景を探ると、大阪=お金にガメツイ、という一般的なイメージだけでは捉えられない、深刻な貧困問題が見えてきます。

大阪人はお金にガメツイから騙される?

昔から商いの街として知られる大阪には、今もその面影が随所に残っており、大阪人=商売上手、というイメージが定着しています。

その反面、大阪人はガメツイというイメージもあります。そんな事情を背景に、大阪で還付金詐欺被害が突出していると聞くと、大阪人はお金にガメツイからお金を得ようとして逆にお金を失っているのか・・・、と思ってしまいます。

話のネタとしては面白いのですが、大阪での還付金詐欺被害の多さにはそれだけでは割り切れない事情が潜んでいるように思えます。

「商業の街」の裏にある貧困問題

商業の街、そして最近では外国人観光客の増加で華やかなイメージのある大阪ですが、実は深刻な貧困問題を抱えている都市でもあります。

大阪府発表の生活保護統計によると、平成26年度の生活保護率は全国平均の17.0%に対し、大阪府全域で34.1%、大阪市では55.5%となっています。

また、総務省の就業構造基本調査をもとに山形大学・戸室健作准教授が研究したところによると、大阪府では子育て世帯の貧困率も21.8%と、全国平均の13.8%を大幅に上回っています(注)。同じく大都市を抱える東京都の10.3%、愛知県の10.9%の2倍にも上る貧困率の高さです(2012年のデータ)。

注:生活保護費の受給対象となる最低生活費以下の収入しかなく、かつ17歳以下の子供がいる世帯数の20年間の推移を調査

近年の生活保護受給世帯は高齢者層が多くを占めていますが、子育て世帯の貧困率の高さを考えると、大阪は世代に関係なく貧困問題が重くのしかかっている状態と言えます。

還付金詐欺の特徴は、税金や年金、医療費などの過払い金をもらえる(還ってくる)と説明される部分にあります。生活に困窮している時に藁をもすがる思いで一縷の望みを託した結果、還付金詐欺に遭うという構図も少なからずあるのではないでしょうか?

還付金詐欺に引っかかるなんて、そんな甘い話はあるわけないよ、と冷静に言うのは簡単ですが、お金に困り日々の生活に必死になった時、少額の手数料で多額の資金を得られると、公務員(実際は詐欺師ですが)から言われれば、誰にも騙される可能性はあると思います。

大阪の光と影

大阪の貧困問題は古くからのテーマです。かつてドヤ街として知られた西成区のあいりん地区も、最近では外国人観光客が安宿を求めて多く訪れるなど、街の風景が一変しています。しかし、貧困問題と高齢化問題が同時進行で進んでいるのも西成の現実。外国人観光客の増加と対照的な、大阪の光と影を如実に現しているようです。

大阪人はお金にガメツイから還付金詐欺が多い、と笑い話にするのは簡単ですが、被害の突出は大阪の貧困問題の裏返しの可能性も考えられます。この事実は大阪の抱える古くて新しい貧困問題を考えるきっかけになるかもしれません。

石井 僚一