早稲田塾縮小に見る塾・予備校の苦戦。エドテックは教育産業の起爆剤か?

生き残りのカギは多角化やネット化、今後は「エドテック」も

ナガセが「早稲田塾」11校舎を8月末に閉鎖すると発表

学習塾を運営するナガセ(9733)は6月6日、子会社の大学受験予備校「早稲田塾」のうち、11校舎を8月末に閉鎖することを発表しました。発表時点で「早稲田塾」は23校舎ありますが、そのうちの半分近くを閉鎖することになります。

背景には早稲田塾の生徒数の伸び悩みがあると考えられます。早稲田塾の最近3年間の業績を見ると、2016年3月期の純利益は5億円あまりの赤字でした。17年3月期は16億円の赤字で、18年3月期も8億4000万円あまりの赤字を見込んでいます。

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閉鎖するのは生徒の少ない採算の悪い校舎が中心で、ナガセでは早稲田塾の経営資源を集中して業績改善に取り組むとしています。早稲田塾は大きな校舎も多く、固定費負担が重いことから、その軽減も狙っていると思われます。

ナガセが早稲田塾を買収したのは2014年12月です。それから3年もたたないうちに売却することになりました。これを経営戦略の失敗と見るか、不採算事業の立て直しのための早い段階での意思決定と見るか、結果がわかるのはもう少し先になりそうです。

ただ、ナガセ全体としてみると、「四谷大塚」など小中学生部門や「イトマンスイミングスクール」は好調で、17年3月期は増収になっています。

少子化傾向で塾・予備校の多角化も進む

少子化で学習塾、特に予備校の経営が厳しいと言われます。大きな理由は、少子化による大学の全入時代になり、浪人生の数が激減していることです。

そのため、浪人生に依存してきたビジネスモデルが成り立たなくなっています。2014年には、大手予備校「代々木ゼミナール」を運営する高宮学園が全国27カ所の校舎を7カ所に減らし、話題となりました。

一方でしっかりと生き残っている塾・予備校もあります。キーワードは、「現役高校生や小中学生へのシフト」、「ネット配信事業」、「多角化」です。

前述したナガセは、早くから通信衛星を利用した衛星授業を行っています。地方の学習塾とFC契約を結ぶことで、全国展開が可能なのが大きな特長です。ナガセは大人向けの語学教育サービスにも力を入れています。

通信教育「Z会」を手がける増進会出版社は2015年、学習塾「栄光ゼミナール」を運営する栄光ホールディングス(現ZEホールディングス)を買収しています。増進会出版社は、「Z会キャリアアップコース」として、TOEICなどの語学のほか、公務員試験や公認会計士講座、簿記など通信教育コースの事業も伸びています。

塾・学習塾では、幼児向け学習塾や英会話教室を展開するところも増えています。個別学習塾「明光義塾」などを展開する明光ネットワークジャパン(4668)は、サッカースクール、学童保育、外国人向け日本人学校などを展開。2017年8月期第2四半期は期初計画を上回る増収増益となっています。

学研ホールディングス(9470)は2017年3月、市進ホールディングス(4645)を持ち分法適用会社にしました。市進ホールディングスは学習塾以外に、高齢者向けのデイサービス(通所介護)施設も運営しています。学研ホールディングスも2017年9月期第2四半期決算は増収増益です。

エドテック(EdTech)が教育産業の新たな起爆剤になるか

教育ビジネスを大きく変える可能性があるとして期待されているのが、「エドテック(EdTech)」です。「Education(教育)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語です。質の高い講師の講義を学校や自宅のスマートフォンやタブレットで視聴できるだけでなく、授業料も安価なのが大きな特色です。

リクルートホールディングス(6098)傘下のリクルートマーケティングパートナーズのオンライン学習サービス「スタディサプリ」は月額980円で利用でき、ユーザー数は25万人以上になっています。

ベネッセホールディングス(9783)とソフトバンクグループ(9984)が出資する高校生向けの動画配信サービス「クラッシー」は学校での授業に使われており、有料利用者数は70万人以上になっています。

「エドテック」は、ネット環境さえあれば導入が容易であるため、海外の展開も可能です。リクルートホールディングス傘下の英クイッパーは、フィリピンやインドネシアにすでに進出しています。また、LINE(3938)も、インドネシアの地元企業と提携し、教育事業に参入しています。

成長の機会を求めて、今後は日本の教育産業の海外進出が加速することも考えられます。

下原 一晃

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下原 一晃

マーケティング会社、リクルートなどを経て、PRプランナー・ライターとして独立。
株式投資、投資信託をはじめとする資産形成や、年金、相続などに関する情報提供を行っている。あわせて、個人投資家がテクニカル理論を身に付けるためのヒントや知識の紹介にも取り組んでいる。
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA)。