まずは、次の2問にトライ!

2カ月で200万部売れたベストセラー『うんこ漢字ドリル』。子どもたちは日々、日本語習得に励んでいます。オトナだって負けてはいられません。いまさら日本語かぁとスルーする前に、まずは次の2問にトライしてからでも遅くありません。

第1問 次の( )に、よりふさわしい文字を入れよ。
( )、一、二、三……

第2問 最も正しいものを1つ選べ。
   「正しいです」、「正しくない」、「正しくないです」

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正解  第1問目、「〇」。 第2問目、「正しくない」。

正解に納得できない方は、以下をお読みください。

第1問目は、一、二、三……と続いているので、先頭の( )にはゼロが入ることは予想できます。ちなみに、ゼロはいまや日本語であるかのようになじんでいて、ワードでも「ゼロ」と打ちこんだら「零」と変換されますが、実は外来語。日本語では「レイ」です。

で、「零」を入れると、壱、弐、参……となります。手形や小切手などで見かける漢字です。以後は、肆、伍、陸、質、捌、玖、拾と続きますが、拾以外、日常生活ではめったに見かけない漢字です。

ワードで「ジュウ」と打ち込めば「十(拾)」とが出てきますが、「十把一絡げ」を出したいときに「ジュッパヒトカラゲ」と打ち込んでも一発変換はされません。正確な読み方が、「ジッパ」だからです。

十返舎一九なら「ジッペンシャ」で、十個、十手なども「ジッコ」「ジッテ」。正確な読みを知っていれば、イライラしながらいたずらに時間を費やさずにすみます。

漢数字「〇」と、〇(マル)は、どこが違うか

ゼロの概念が生まれたのはインドであることはよく知られています。アラビア人がヨーロッパに伝え、世界じゅうに広まりました。これが0、1、2、3……のアラビア数字です。算用数字とも呼ばれ、さまざまな場面でよく見かけます。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ……のローマ数字も見かけますが、ゼロの表記はないようです。

インドのほか、エジプトやバビロニアにもゼロの概念があったとする説もありますが、文献上、数字という記号は残されていません。漢数字のゼロができたのは、8世紀。他の漢数字に比べるとかなり新しく、現状で最も古い「〇」は、唐の武則天時代の文書にあるものです。

〇(マル)との見分けが難しい〇(レイ)。マルが下から書きはじめ時計回りにするのに対し、レイは右上から反時計回りに書くのが違いだとする説もありますが、定かではありません。

そもそもレイ(〇)を漢数字とすること自体にも異論があり、位取り記数法上の記号にすぎないとする説もあります。

漢数字かどうかの追究は学者にまかせるとして、一、二、三……とある文章では、零や0ではなく、〇を使ったほうがすっきりします。だから、冒頭の問題文にも「よりふさわしい」としました。

正しい日本語は、社会人のリスクマネジメント

第2問目。「正しいです」「正しくないです」、どちらもよく使われています。でも、間違いなのです。なぜなら、「正しい」も「ない」も形容詞で、「です」は体言、つまり名詞にしか接続しないからです。

形容詞「ない」は形容詞「正しい」に接続できるので、「正しくない」が正解になります。

「すごく明るい」は正しい日本語ですが、「すごいです」は誤った日本語というわけです。

おいしいです、怖いです、若いです、いいです、わるいです……日常生活だけでなく、ドラマやアナウンサー、雑誌などでもごく普通に使われていますが、いずれも日本語としては誤りです。おそらく、形容詞を、名詞として扱っているのでしょう。

いつごろから誤った使われ方をされてきたのかは定かではありませんが、筆者が考えるにはアニメ『サザエさん』に登場するタラちゃんあたり。

幼いタラちゃんが形容詞を名詞として理解し、丁寧語の「です」を接続させたのを一般社会人までがマネをするようになったのではないかと推測しています。

「行きますです」。幼い子どもなら可愛いのですが……。

間違った日本語で、知らないうちに軽蔑されているかも?

言葉は変化するもの。社会で普通に使われているなら間違えて使ってもいいじゃないかというのは、もっともな意見。賛同できます。国語審議会さえ認めているくらいです。だからといって、すべての人が受け入れているわけではありません。

筆者自身も「美しいです」と書き、幼稚だと怒鳴られたことがあります。どこかで、だれかが、心の中で、「幼稚な人」だとランク付けしているかもしれません。社会人としてのリスクマネジメントを図るなら、少しでも正しい日本語を身につけたほうがよさそうです。

最後に、形容詞に「です」を付けるなと言われても、どうすればいい? というの方のために。

「おいしいです」は「おいしい料理です」、または、「おいしくいただきました」、などと一工夫します。「ないです」なら、「ありません」。あるいは、体言(名詞・代名詞)に準じる語である「の」を挟めばいいです。じゃなくて、いいのです。

間宮 書子