天才中学生はどう作られるのか~脱・ゆとり教育世代の活躍

子どもが伸びる環境づくりは家庭でできる最高の投資行動

将棋でも、卓球でも、芸能界でも活躍が目立つ中学生たち

ここ最近、14歳2カ月という史上最年少でプロ棋士となった将棋の藤井聡太四段(2002年7月生まれ)のニュースを耳にしない日はありません。

連勝記録がどこまで伸びるか、また、一気にタイトルを取るのではないかなど、将棋に詳しくない人にとっても興味が尽きません。署名入り扇子があっという間に売り切れてしまうなど、もはやブームと言ってもいいでしょう。これで、減少が続いてきたとされる将棋人口も、増加に転じることになるかもしれません。

続きを読む

一方、卓球の世界では、「チョレイ!」の雄叫びとともに多くの対戦相手に打ち勝ち、13歳という史上最年少で世界選手権の8強入りを果たした張本智和さん(2003年6月生まれ)にも注目が集まっています。

また、芸能人でありながら複数の難関中学に合格したことで話題を集めた芦田愛菜さん、その芦田愛菜さんと共演した「マルモのおきて」というドラマを出世作として一躍注目を集めた鈴木福さん、子役でありつつフィギュアスケートの選手でもある本田望結さんは、皆そろって2004年6月生まれの中学1年生です。

今の中学生は「脱・ゆとり教育」の最初の世代

最近の中学生の活躍ぶりには目を見張るばかりなのですが、こうした中学生の活躍には、何か背景があるのでしょうか。

今の中学生は2002年~2004年の生まれです。21世紀生まれの世代ということだけでなく、2001年9月11日に起きた米国同時多発テロを、「私たちが生まれる前の時代の話」と言え、小学校高学年の頃にはスマホが当たり前のようにあったという世代です。

そしてもう1つ、「脱・ゆとり教育」が始まった世代だということです。

学習指導要領に基づく形で正式に「ゆとり教育」が行われるようになったのは、2002年からです。同じ頃、PISA(OECDによる生徒の学習到達度調査)や、TIMSSといった国際的に行われる学力調査の結果から、日本の(学力面での)相対的な地位が低下しているという指摘がされるようにもなりました。

「ゆとり教育」との関連性があるのかどうかは諸説あるものの、「ゆとり教育」の弊害の1つとして、学力の低下が言われることが多くなったように思われます。同じ頃、私立中学校を受験する人数も増加していましたが、学力の低下に伴う公立学校への不信がその背景にあったとも言われています。

そのため、第1次安倍内閣のもとで2007年に設置された教育再生会議では、授業時間の10%増を柱とした提案がまとまり、通称「脱・ゆとり教育」として、2008年に学習指導要領が改訂され、2011年度以降に順次完全実施となりました。厳密に言うと、「ゆとり教育」と「脱・ゆとり教育」の間には移行期間があり、2009年度からが移行期間とされています。

この移行期間は、2002年生まれの現在の中学3年生が小学校1年生になった時から始まっており、2002年生まれの人たちが、事実上の「脱・ゆとり教育」世代の最初となります。

もちろん、「脱・ゆとり教育」の世代というだけで、凄い中学生になれるわけではありません。「脱・ゆとり教育」によって、ついていけない生徒が増え、子どもの間の学力格差が広がったという指摘もあります。

しかし、「脱・ゆとり教育」によって、しっかり学ぶという姿勢を身につける機会が増したと考えるのであれば、勉強でも、勉強以外でも、早くから才能が開花する素地ができたのではないかと考えられます。

なお、2017年3月に学習指導要領が改訂されました。完全実施は2020年度から順次ということになりますが、来年からは移行期間として、新しい学習指導要領に基づく内容が部分的に実施されるため、「脱・ゆとり教育」からさらに一歩先の段階に進むことになっていきます。

活躍する中学生の家庭に共通するのは?

公表されている記事を読む限りでの印象になりますが、絶賛活躍中の中学生たちの家庭には、以下のような共通項があるように思われます。

  • 子どもが熱中する環境を用意している。
  • 子どもが熱中している時には、周りの大人は邪魔をしない。余計な口出しをしないで見守ることが多い。
  • それでも親や家族は、子どものために時間を使っている。
  • 早くから他所の大人と触れさせている(対戦相手や共演者など)。
  • 「ここまでやればいい」というような、伸びしろの上限を大人の側で勝手に設けない。
  • 競争環境に身を置くようにしている。そして、負けたら悔しいというような、健全な負けず嫌いの気持ちを育むようにしている。
  • 日本だけでなく世界を意識させている。

教育は家庭でできる最高の投資行動

しっかり学ばせる教育制度と、家庭での育み方がうまく合致した時に、子どもの才能が大きく開花するのだとすれば、家庭で子どもが伸びる環境をつくることは、家庭でできる最高の投資行動だと言えます。

子どもが持つ可能性を考えれば、得られるリターンも限りなく広がります(もちろんお金のことだけではありません)。しかも、生まれてから成人になるまでと考えれば、20年近くの長期投資となりますから、まさに、人生を賭けた投資行動です。

これをどれだけ楽しめるかで、人生の中での幸福度(これも家庭で得られるリターンの大きな1つ)が変わってくるように思います。

藤野 敬太

PR

藤野 敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。日本ファミリービジネスアドバイザー協会執行役員・フェロー