2017年6月16日、米大手ECアマゾン・ドット・コムが米大手スーパーマーケットチェーンのホールフーズ・マーケットを買収することで合意したと発表しました。

アマゾンは一株当たり42ドルでホールフーズ・マーケット株を獲得する予定です。買収金額は137億ドル(約1.5兆円)で、ホールフーズ・マーケットのネット負債も引き継ぐことになります。

では、なぜネット企業のアマゾンがリアルの店舗を持つスーパーを買収することになったのでしょうか。投信1編集部が、海外のネット企業などに詳しいテクノロジーアナリストの泉田良輔氏に伺いました。

アマゾンがスーパーマーケットチェーンを買収した理由とは

――なぜ、ネット企業のアマゾンがスーパーマーケットチェーンのホールフーズを買収することになったのでしょうか。

泉田良輔(以下、泉田):今回のアマゾンによるホールフーズ買収には大きく2つの思惑があるのではないかと見ています。1つは顧客接点の強化、もう1つは新たな決済機能の強化です。

アマゾンと顧客との関係性

――では、1つずつお伺いします。顧客接点の強化とはどういったことでしょうか。

泉田:アマゾンで売られている商品は、本、アパレル、日用雑貨、家電といったものが多いですよね。まず、これらを購入する頻度を想像してみてください。

人によるとは思いますが、アマゾンで購入する商品は決して毎日買わなければならない商品ではありません。一方、スーパーマーケットには毎日買い物に行く人もいるでしょう。つまり、同じ顧客で見ても顧客と接する「頻度」が上がることになります。スーパーを自社で運営することで顧客接点の強化をすることができます。

アマゾンが決済システムをどうしたいのか

――2つ目のポイント、新たな決済機能の強化とはどのようなことでしょうか。

泉田:アマゾンはこれまで、"Amazon Go"(編集注)としてレジが不要(無人レジ)のコンビニエンスストアのようなモデルを模索していたと思いますが、実際のスーパーを手にすることで、その実現についてより具体的な実証をすることができる環境を手に入れることになります。アマゾンにアカウントを持つことで、決済のストレスが低減されていきます。

話は少しそれてしまいますが、仮にアマゾンがホールフーズで「無人レジ」といった決済システムを完成することができると、別の取り組みも考えられます。

それは何かというと、無人レジシステムの他スーパーへの横展開です。ホールフーズ以外のスーパーが無人レジのシステムを導入すれば、それらのスーパーは人手を省くことができますし、シームレスな決済を顧客に提供することができます。

編集部注:https://www.amazon.com/b?node=16008589011

アマゾンがインフラを担うというケース-AWS

――アマゾンが決済システムの外部利用を可能にすることなどあり得るのでしょうか。

泉田:アマゾンはAWSというクラウドサービスを展開しています。ICT企業であるアマゾンは自身がネット企業でありながらそのデータセンターを外部顧客にクラウドサービスとして提供しています。まさにインフラサービスとしての取り組みです。決済システムもインフラの1つとして捉えていてもおかしくはないのではないでしょうか。

アマゾンのホールフーズ買収による他産業への影響