――アマゾンの今回の意思決定は関係産業にどのような影響を与えることになるのでしょうか。

泉田:今回の発表で、アマゾンの16日の株価は前日比+2.4%上昇するなど株式市場は好感しています。一方、米大手スーパーのウォルマート・ストアズは同▲4.7%の下落となっています。

株式市場の反応から言えば、アマゾンがネットとリアル店舗をより効率的に運営できるという見方が多くの人の第一印象ということになります。また、既存のスーパーはアマゾンのリアル店舗への進出により事業領域を脅かされ、競争優位を確立できないとの想定を持った投資家が多いということでしょう。

アマゾンの物流機能が最強になったら起きること

――アマゾンの攻勢はリアル店舗を飲み込んでいくだけでしょうか。

泉田:そうとは言い切れません。日本国内でもネット通販やオークション、フリーマーケットなど取扱量が増えた物流量をどのようにさばくのかが問題になっていますが、アマゾンはこの問題にも積極的に取り組んでくるかもしれません。

――具体的にはどういったことでしょうか。

泉田:将来的にアマゾンの物流倉庫に商品を納め、配送してもらうことが最も効率的だということになれば、メーカーなどがこれまでの物流を利用するのではなく、とりあえずアマゾンの倉庫に商品を納入するという選択肢も考えられます。

そうなれば、これまでのように消費者に直接配送してもらうことに加え、アマゾンの物流倉庫からスーパーなどに配送するということもあるでしょう。まさに物流倉庫、物流機能をインフラとして関係者に提供するのです。先ほどお話ししたAWSと同じような考え方ですね。

――卸や商社機能も飲み込むということでしょうか。

泉田:可能性はあります。卸などは物流機能に加え、金融の機能もありました。アマゾンはキャッシュフローを厳格に管理することで成長してきた企業なので、物流と金融をかけ合わせた領域は得意領域と言えます。

詳しくは拙著「銀行はこれからどうなるのか」に書いていますが、アマゾンはキャッシュコンバージョンサイクルという事業における現金化速度が圧倒的に早く、手元資金を厚くすることで自社の成長投資に向けてきたわけです。

編集部よりまとめにかえて

いかがでしたでしょうか。ネット企業アマゾンがリアル店舗を持つスーパーマーケットチェーンを買収するという行動は一見わかりにくいですが、アマゾンからすれば既存領域の強化および新規事業の取り組みのきっかけになりそうです。

また、それらが現実となった時には関係する産業構造も変化するという可能性も出てきました。アマゾンからは目が離せません。

LIMO編集部