6月22日は『かにの日』

6月22日は『かにの日』です。ご存知でしたか?

これは、大阪の有名なかに料理店「かに道楽」が1999年に制定した“記念日”です。6月22日が星占いのかに座の初日であることと、50音表で「か」が6番目、「に」が22番目であることから、この日が選ばれたようです。

かに料理の美味しさを認知してもらうことが目的であり、ハッキリ言えば、典型的な商業キャンペーン日です。実際、かに道楽のホームページを見ると、『かにの日』に絡むイベントの告知が大々的に掲載されています。

なお、今年のイベントの目玉は、当日企画のスピードくじとなっています。一体何がもらえるのでしょうか。

最近よく耳にする魚介類の不漁ニュース、実態は?

さて、せっかくですから、蟹(カニ)の現状について見てみます。好き嫌いはあるでしょうが、カニは年末年始の料理、冬の鍋料理、寿司ネタなどに必要不可欠な具材であることは確かです。

ところで昨今、マグロやサンマなどを始めとして、一昔前まで普通に家庭の食卓に並んでいた魚介類が獲れなくなったという話を耳にします。今年はイカの不漁が大きなニュースになりました。

ここ数年間、カニが不漁というニュースも何度かあったかもしれません。そこで、カニのデータを見る前に、まずは日本の水産物全体の状況を把握しておきましょう。

日本の漁獲量は30年強の間にピークの3割水準へ激減

農林水産省が公表する漁獲量(生産量とは異なる。海面漁業のみ対象、以下同)のデータ推移を見てみると、日本の漁獲量が激減していることがわかります。

ピークと推定される1984年に1,150万トンだった漁獲量は、31年後の2015年には約355万トンまで落ち込みました。ピーク時の3割水準であり、激減と言うに十分過ぎるくらい値します。なお、2016年の速報値は約322万トンとなっており、さらに▲10%近く減っていることになります。

漁獲可能量が定められたことも激減の一因

ただ、この厳しい数字だけをもって、水産物資源が枯渇に向かっていると考えるのは無理があります。なぜならば、現在は多くの魚種に「漁獲可能量」が定められているためです。特に、1994年に発効した国連海洋法条約により(注:日本の批准は1996年)、こうした「漁獲可能量」の遵守が厳しくなっています。

ただ、確かに世界的に水産物資源の保護が進んでいることも一因ですが、それを勘案しても昔ほど獲れなくなっていることは間違いないと見られます。

養殖と輸入も頭打ち傾向から漸減へと転じる

こうした漁獲量の大幅減少を補うものの1つが、既にお馴染みとなった養殖です。しかし、ここ10年間の養殖漁獲量は概ね100万トンとなっており、減少した分をカバーするには全く至っていません。また、東日本大震災や気候不順の影響等により、直近5年間は100万トン割れもめずらしくない状況にあります。

輸入はどうでしょうか。水産物の輸入量を見ると、漁獲量の減少に伴って増加してきましたが、2002年の442万トンをピークに漸減傾向が続いており、2013年は249万トンまで減りました。2014年以降のデータは不明ですが、大幅な円安になっていることを考えると、輸入量が急回復している可能性は低いと言えましょう。

“獲れないから食べない”のか“食べないから獲らない”のか

結局、国内における水産物(魚介類)の消費量は減少が続いています。実際、水産庁が発表している「食用魚介類の1人当たり年間消費量」を見ると、ピークである2001年の40.2kgから2012年は28.6kgになっています。若年層を中心とした食生活の変化に加え、水産物の価格高騰も影響していると考えられます。

ただ、“獲れなくなったから食べない”のか、“食べなくなったから獲らない”のかを明確に判断することは難しいかもしれません。

カニの漁獲量も激減、ピークの3割未満

さて、カニの漁獲量はどうでしょうか。結論から言うと、カニの漁獲量は全体の漁獲量以上に減少しています。農水省が公表するデータの「かに類」は、「ずわいがに」「べにずわいがに」「がざみ類(注)」「その他のかに類」の合計ですが、ピーク推定である1983年の約10万トン強から、2015年には約2万8,700トンまで減りました。

なお、2016年の速報値は約2万8,400トンと減り続けており、ピークから3割未満の水準です。

ただ、カニの消費量がそこまで減っているという印象は乏しいと思う人も少なくないかもしれません。

注:「がざみ類」はワタリガニを指します。

カニが食べられなくなる日も遠くない?

では、養殖と輸入はどうでしょうか。カニの場合、養殖は非常に少ないと考えられます。一方、輸入は正確な数値を把握するのが困難と言われています。もちろん、水産庁が把握している輸入データはあるのでしょうが(非公表)、公式データには含まれない輸入量、いわゆる“闇取引”が少なくないとも言われています。実際はどうなのでしょうか。

最後に、世界の水産物需要に目を向けると、これは増加の一途をたどっています。やはり、アジアを中心とした新興国での消費量が増えたためです。現在は日本向けである輸出が、新興国へ次々にシフトすることもあるでしょう。

とすると、カニが思うように食べられなくなる日もそう遠くない可能性があります。そんなことを考えながら、6月22日はカニの美味しさに舌鼓を打つのもいいかもしれません。

LIMO編集部