米国には、世界的に有名な企業がたくさんあります。アップルやマイクロソフト、GEやアマゾン、コカ・コーラ、マクドナルドなどは、おそらく誰でも耳にしたことがあるでしょう。一方で、企業名はよく知っていても米国株投資となるとよくわからない、英語が苦手だと言って敬遠していませんか?実は、日本にいてもそれほど難しくなく米国株投資をすることができるのです。ここでは、米国株式市場や米国株の仕組み、米国株投資のはじめかたなどをわかりやすく解説します。

目次
1 なぜ、米国株か

2 米国株式市場とその仕組み(取引時間、休日など)
 2.1 ニューヨーク証券取引所(NYSE)
 2.2 NASDAQ証券取引所

3 主な株価指数
 3.1 ダウ工業株30種平均
 3.2 S&P500
 3.3 ナスダック総合指数

4 米国株のメリットとデメリット(日本株との相関は?高配当?成長性など)
 4.1 米国株のメリット
  4.1.1 市場が大きい
  4.1.2 日本に比べると高配当銘柄が多い
  4.1.3 少額からの投資が可能
  4.1.4 リアルタイムでの取引ができる
 4.2 米国株のデメリット
  4.2.1 企業情報が得にくい
  4.2.2 為替リスク
  4.2.3 手数料が高い

5 米国株投資のはじめかた
 5.1 証券会社を選ぶ
 5.2 投資対象を考える
 5.3 注意すべき点

6 米国株の税金はどうなるの?
 6.1 売却益にかかる税金
 6.2 配当金にかかる税金

7 まとめ

1 なぜ、米国株か

米国株とは、世界最大の経済大国、金融市場の本場である米国で取引されている株式のことです。米国株は長期間にわたって上昇トレンドにあり、また今後も上昇を続けるだろうと予想されていることから、資産形成に向いていると言われています。米国と日本の代表的な株価指数であるNYダウと日経225の過去10年間の推移を比較してみましょう。

これを見ると、2009年9月のリーマンショック以降、日本株に比べて米国株は回復も早く、上昇が続いていることがわかります。出生率の低迷と超高齢化社会で経済成長が停滞すると予想される日本経済に対して、先進国でも唯一人口増加が予想される米国は経済成長が続くと言われており、今後も米国株の上昇が予想されることから、魅力的な投資対象だと考えられているのです。

2 米国株式市場とその仕組み(取引時間、休日など)

米国にはニューヨーク証券取引所(NYSE)とNASDAQ証券取引所の2つがあります。それぞれの特徴を見てみましょう。

2.1 ニューヨーク証券取引所(NYSE)

ニューヨーク証券取引所(以下NYSE)は、時価総額世界最大の証券取引所です。上場基準が世界一厳しいとされており、世界を代表する優良企業が上場しています。また、世界の証券取引所の中でも際立って高い影響力を持ち、注目度も高く、世界の株式市場や為替市場に大きな影響を与えるため、世界中からその動向が注視されています。上場企業数は約2,400社、うち約460社が外国企業です。2017年5月現在、日本からは、ソニーやトヨタ、ホンダなどの12社が上場しています(このうちNTTドコモは来年3月に上場廃止予定)。取引は、祝祭日を除く月曜から金曜までの9:30~16:00(日本時間23:30~6:00(夏時間は1時間ずつ早まる))で、日本と異なり一場制(昼休みがない)となっています。

2.2 NASDAQ証券取引所

NASDAQは、立会場のない世界初の電子株式市場として1971年に開設された世界最大のベンチャー向け株式市場です。上場企業数は約2,900社であります。取引時間は、NYSEとほぼ同じですが、7:00~9:30と16:00~20:00にトレーディング時間が設けられています。

3 主な株価指数

次に、米国の代表的な株価指数を見てみましょう。

3.1 ダウ工業株30種平均

最も有名な株価指数は、「ダウ工業株30種平均」です。「NYダウ(ニューヨークダウ)」や「ダウ平均」とも呼ばれており、ニュースなどでよく耳にする方も多いでしょう。この指数は、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが算出・公表している株価指数で、NYSEやNADAQに上場している米国の優良銘柄30社で構成されています。銘柄は定期的に入れ替えが行われていますが、アップル、ボーイング、ウォルト・ディズニー、コカ・コーラ、マクドナルドなど誰でも知っているような銘柄が並びます。なお、算出が始まってから現在までずっと構成銘柄であり続けたのは、GE(ゼネラル・エレクトリック社)のみです。米国の株式市場の動向を示すバロメーターとして世界的に注目される指標です。

3.2 S&P500

「S&P500」は、こちらもS&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが算出・公表している株価指数で、米国の証券取引所に上場している代表的な500銘柄から構成されています。NYSEの時価総額の約80%をカバーしていると言われ、機関投資家のベンチマークとしても幅広く利用されています。

3.3 ナスダック総合指数

「ナスダック総合指数」は、NASDAQに上場しているすべての銘柄を対象に算出された指数です。マイクロソフト、ジョンソン&ジョンソン、アマゾン、スターバックスやグーグルなどが含まれており、ハイテクやネット関連の占める割合が高いため、そういった業界の動向を反映しやすいと言われています。

4 米国株のメリットとデメリット(日本株との相関は?高配当?成長性など)

それでは、米国株投資には日本株投資と比べてどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。ここではそれぞれを整理してみます。

4.1 米国株のメリット

4.1.1 市場が大きい

米国株投資の魅力の一つは、市場が大きく充実していることです。NYSEには、先ほど述べたとおり世界の誰でも知っているような優良企業が集まっており、日本の取引所より上場銘柄数も参加数も多く、取引も活発です。また、上場企業数だけでなくETFの種類も豊富です。株式に限らず債券、不動産、コモディティ(原油、金などの商品)、テーマ別といったさまざまなETFが上場されており、低コストでさまざまな資産へのグローバルな分散投資が可能です。市場が大きいということは、投資の幅が広がることにつながるので、より投資の醍醐味を味わえるでしょう。

4.1.2 日本に比べると高配当銘柄が多い

日本では、配当というと横ばいのイメージが強いでしょう。これに対して、米国では株主重視が強く、内部留保よりも配当に回す傾向があります。配当利回りが高いだけでなく、連続増配を続けている企業もあります。例えば、P&Gやコカ・コーラ、ジョンソン&ジョンソンなどは50年以上、マクドナルドやエクソンアンドモービル、ウォルマートなども30年近く増配を続けています。また、高配当銘柄の場合は、株価が下がると配当利回りが上がるため、株価が下支えされます。このように、高配当でも安心して投資できる対象がたくさんあるのです。

4.1.3 少額からの投資が可能

日本株には売買単位というものがあり、100株や1,000株など、その売買単位からしか購入できません。これに対して、米国株は1株からの購入が可能です。東証一部とNYSEに上場しているトヨタ自動車を例に取ってみましょう。5月16日の株価では、日本では最低売買代金は609,300円となります。一方で米国市場では106.41ドル(円換算12,056円)になります。同じトヨタ自動車でも売買できる最低金額がこんなに違うのです。実際には、売買するには手数料がかかりますので、ある程度まとまった金額で投資することをおすすめしますが、米国市場の方が少額から投資できる分、投資金額が柔軟に決められるという点は大きなメリットです。

4.1.4 リアルタイムでの取引ができる

サラリーマンの方など、日本の市場が開いている日中には取引が出来ない方でも、時差のある米国市場であればリアルタイムで取引することも可能です。米国市場の開いている時間は日本時間では、標準時間の場合23:30~6:00、サマータイムだと22:30~5:00です。

4.2 米国株のデメリット

4.2.1 企業情報が得にくい

日本に在住している場合、日本企業に比べると米国企業の情報はリアルタイムでは得にくいでしょう。時差ももちろんありますが、テレビや新聞でも日本企業ほど大きくは扱われないことが多く、意識してこちらから見にいかなければ見落としてしまうことも少なくありません。また英語が苦手であれば、内容を把握するのも時間がかかるでしょう。時差、情報量、取得手段などいろんな意味で情報が得にくく、投資の判断がしづらいというデメリットがあります。

4.2.2 為替リスク

米国の株に投資していると、株価の変動だけでなく為替の変動の影響も受けます。円高になれば為替差損、円安になれば為替差益というように、株価変動以外に為替というもう一つのリスクも負うことになります。ただし、これは必ずしもマイナスというわけではありません。株価下落と円高が重なれば損失は拡大しますが、株価上昇と円安が重なれば利益は拡大するのです。一方で株価下落と円安、株価上昇と円高では相殺されて変動が小さくなることもあり得ます。リスク要因をなるべく少なくしておきたいという方にはデメリットになりますが、場合によってはメリットと捉えることもできるでしょう。

4.2.3 手数料が高い

米国株は、日本株に比べて売買手数料が高くなっています。日本では、ネット証券はずいぶん売買手数料が低く抑えられていますが、米国株となると高くなります。下記は、米国株を扱っている代表的なネット証券の売買手数料です。

  日本株 (10万円以下) 米国株
SBI証券 139円 約定代金の0.45%
(下限5ドル、上限20ドル)
楽天証券 139円 25ドル
マネックス証券 100円 約定代金の0.45%
(下限5ドル、上限20ドル)

この3社は、国内証券会社の中でも最も日本株、米国株いずれも手数料が安い証券会社ですが、それでも日本株と比べると米国株は高いことがわかります。手数料は、取得価額を引き上げる要因になるので、それだけ利益を圧迫することになります。

5 米国株投資のはじめかた

それでは、実際に米国株投資を始めるにはどのようにすればいいのでしょうか。

5.1 証券会社を選ぶ

まずは、証券会社を選びましょう。直接米国の証券会社に口座を開設することもできますが、日本の証券会社で米国株取引の口座を開設する方が、言葉の壁もなく日本の投資家向けなので使い勝手もよいのではないでしょうか。

以下は、米国株取引ができる主要なネット証券です。他にも取引可能な証券会社はありますが、取扱い銘柄数や手数料などからこの3社がおすすめです。

  SBI証券 楽天証券 マネックス証券
手数料

約定代金の0.45%
(下限5ドル、上限20ドル)

25ドル 約定代金の0.45%
(下限5ドル、上限20ドル)
取扱銘柄数 約1,400銘柄 約1,300銘柄 約3,300銘柄
成行注文 ×
指値注文
最大有効注文期間 当日中もしくは機関指定注文
(発注日含む最長15米国営業日)
当日中 90日間
注文受付時間 米国営業日の以下を除く時間帯
日本時間の19:00~19:30
日本時間取引終了時から10:30まで

23:30~6:00
(サマータイム22:30~5:00)

24時間
特定口座

5.2 投資対象を考える

続いて、証券会社の取扱銘柄の中から投資対象を選びます。もし、どうしてもこの銘柄というこだわりがあれば、①と②は順序が逆でもよいでしょう。上記の証券会社であれば、個別株式だけでなくETFなども数多く取り扱っているので、いろいろと検討してみることもできます。個別株式であれば、NYダウの構成銘柄や先にあげたような高配当で増配が続いている銘柄などは、世界的に有名で情報も入りやすくなじみもあるので、まず第一歩として始めやすいのではないでしょうか。ETFでは、世界中の企業に投資するVTや米国上場株式のほとんどを網羅しているVTI、S&P500に連動させたVOOやIVV、高配当の米国株を対象とするVWMなどもあります。いずれも純資産金額が大きく信託報酬もかなりの低水準であり、人気が高くおすすめの商品です。

5.3 注意すべき点

米国株投資で注意すべき点は主にデメリットで述べましたが、他に日本と異なる点で「ストップ高」と「ストップ安」がないということがあげられます。「ストップ高」「ストップ安」は、極端な値動きを避けるために設けられた一日の株価の値幅制限のことです。これが米国にはないため、株価が一気に上昇することがある一方で、大幅に下落することもあり得ることは頭に入れておいてください。

6 米国株の税金はどうなるの?

米国株を購入した後、売却したり配当を受け取ったりした場合の税金はどうなるのでしょうか。

6.1 売却益にかかる税金

米国株を売却して利益が出た場合、国内株式と同様に20%(所得税15%、住民税5%)の申告分離課税の対象となります。米国での課税はありません。

6.2 配当金にかかる税金

配当金にかかる税金は、米国で10%の源泉徴収がされたあと、その差し引かれた金額に対して日本でも源泉徴収(20.315%)がされます。つまり二重に課税されることになりますが、確定申告を行えば外国税額控除によって、米国で課税された分が一定の限度額内で所得税や住民税から控除されます。なお、NISAについては外国税額控除は対象外となります。

7 まとめ

いかがでしたか。米国株投資に対するハードルが少し低くなったでしょうか。米国株は国内の証券会社の取扱い数の増加や手数料の引き下げなどで、だいぶ身近なものになってきました。投資家や専門家の中には、これからは日本株ではなく米国株に投資すべきだ、という意見も少なくありません。日本だけでなく米国にも目を向けてみると、より一層投資の魅力を感じることができるのではないでしょうか。この機会にぜひ一度検討してみてください。

LIMO編集部