いまさら聞けない「こども保険」の内容と課題

小泉進次郎氏らの構想は共感を呼ぶのか?

小泉進次郎氏らが「こども保険」の創設を提言

小泉進次郎氏ら若手議員が中心メンバーとなっている自民党の「2020年以降の経済財政構想小委員会」は2017年3月28日、子育て費用の負担軽減などを目指す「こども保険」の創設を提言しました。これはどのような構想なのでしょうか。

こども保険の仕組みは、健康保険、厚生年金保険、介護保険などのように社会保険方式を活用することによって教育や子育ての財源に充てるというものです。

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小泉氏らの提言では、勤労者や企業の社会保険料を0.1%ずつ上乗せして徴収することで約3,400億円が得られ、児童手当を1人当たり月5,000円増やすことができるとしています。さらに、保険料の上乗せを0.5%まで増やせば、約1.7兆円の財源が捻出されます。

これにより小学校入学前の子ども約600万人に児童手当を月25,000円加算できるため、幼児教育・保育を実質的に無料にできます。最終的には上乗せ率を1.0%まで引き上げ、財源を3兆円規模に増やすことを想定しています。

こども保険と教育国債や消費税との違いは

こども保険は、社会保険方式により財源を確保しようとするものです。自民党では以前、教育国債なども議論されていました。両者はどのように異なるのでしょうか。

国債はその名のとおり国の借金です。現役世代(親世代)はさほど痛みを感じませんが、将来世代(子どもたち)に借金をつけ回すことになります。また、日本の国債発行額は2016年で国内総生産(GDP)の2.3倍と先進国中で最悪の水準に達しています。これ以上の国債発行はなかなか厳しいところです。

消費税を財源に使うという考え方もあります。すべての国民が広く負担するため公平感もあります。ただし、10%に増税した場合の使途はすでに決まっています。さらに、なかなか税率を上げることができていません。

政府も「人材への投資」に力を注ぐ方針

こども保険が注目を集める以前から、子育てにかかる費用を軽減する制度導入はいくつか検討されてきました。たとえば、公的年金の積立金を活用する案です。このほか、社会保険方式による「育児保険」などが提言されたこともあります。ただし「子どものいない人が負担するのは不公平」などの声もあり、実現しませんでした。

ここにきて再度、こども保険が議論されるようなった背景には、小泉氏が語るように「少子化が待ったなしの状況になっている」ことに加え、安倍政権が高等教育の無償化に意欲を示していることもあるでしょう。9日に決定した経済財政運営の基本方針(骨太の方針)でも、「人材への投資」が柱として示されました。

さまざまな人たちが納得のいく仕組みが必要

与党内でこども保険の構想は評価されているものの、その実現のためにはいくつかの課題があります。たとえば、不公平感の解消です。こども保険により児童手当などを受け取れるのは、就学前の子どものいる家庭だけです。子どもがすでに学齢期になっている家庭や子どものいない家庭は保険料の負担が増えるだけです。

経済界も現時点ではこども保険には慎重な考えです。国民年金の未納率は4割に達し、その負担が勤労者や企業にかかっています。他の保険料や税と同様に「取れるところから取る」ということになるのではないかと懸念しているのです。

このほか、小泉氏が構想の中で指摘するように、日本の社会保障制度では若い世代は給付より負担が多く、高齢者は負担より給付が多くなっています。世代間の不公平感を解消するためには、高齢者にもこども保険の保険料を負担してもらう必要がありますが、理解してもらうのには時間がかかりそうです。

このほか、こども保険の給付の方法にも議論の余地があります。現状は一律現金給付となっていますが、ばらまきになる恐れがあります。保育所整備などに充てるべきという意見もあります。また、介護保険のように現物給付のほうが確実な成果につながるという声もあります。

課題の解決のためには、単に制度設計だけでなく、経済的に恵まれない家庭への支援なども含め、総合的に日本の子育て環境づくりを議論する必要があるでしょう。

下原 一晃

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下原 一晃

マーケティング会社、リクルートなどを経て、PRプランナー・ライターとして独立。
株式投資、投資信託をはじめとする資産形成や、年金、相続などに関する情報提供を行っている。あわせて、個人投資家がテクニカル理論を身に付けるためのヒントや知識の紹介にも取り組んでいる。
日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト(CMTA)。