不動産投資の「ダークサイド」に落ちないために知るべきこと

不動産投資は「投資」ではなく「事業」である本当の理由

不動産投資の「原理原則」

不動産投資は「事業」である。これは、私は独立する前から一貫して訴えてきたことです。

投資であっても「事業」であるかぎり、それは「社会」にとって「役立つ」ことでなければならず、社会への「価値」の提供によって「事業」が継続し、投資は成立する。これは、何も不動産投資に限ったことではなく、あらゆる業界に共通する「事業」の原理原則になっているはずです。

しかし、投資の初心者はこの原理原則を理解していない人もいて、大きな落とし穴にはまってしまうことがあります。

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不動産投資の世界は、扱う金額が大きいだけに一度失敗するとリカバリーがかなり大変です。したがって、テクニック云々よりもこの原理原則をしっかり理解しておくことが何より重要なのです。

投資を始める時、誰しも一度は、グレーな誘惑に駆られることがあると思います。ですが、この誘惑に負け「ズル」をすると例外なく天罰が下ります。

反面教師として、ある投資家の顛末をお話します。あなたには彼と同じ轍を踏んでもらいたくありません。そのためにも、今一度、不動産投資とは「何なのか」について考えていただければと思います。

初心者が陥るフルレバの誘惑

その投資家は、当社の会員さんでした。

30代の公務員で、早期リタイヤを目指していました。年収は平均的サラリーマンのレベルです。しかし、彼の職場は上下関係も厳しく毎日の仕事が好きになれなかったのだそうです。フルレバ(=フルローンの意)で1、2年で3億円くらいの資産を作りたいというのが初回の相談でした。

どうやら彼も、多くの初心者が一攫千金を狙うパターンにはまっているようでした。彼との会話からは「早くお金持ちになって楽に暮らしたい」というニュアンスの言葉が毎回伝わってきたからです。

どこかの「楽して儲ける系」のセミナーや書籍でインスパイアされた人との会話はさすがの私も疲れます。

もっとも、投資の動機は人それぞれですから、私が立ち入るべき領域ではないと思います。しかし、投資の基本を教える上では、投資家が今いるステージによって投資のスタイルは違う、ということは絶対に伝えなければなりません。

盲目的に資産を増やし続けることが正解であると信じている人に、投資の基礎を教えるのはかなり大変です。結局、彼に「不動産投資の基礎」を理解してもうらうのにかなりの時間を要してしまいました。

しかし、1年後、最初は「フルレバで3億位のRC物件を買いたい」といっていた彼が、今の自分にはフルレバは危険であると理解し、中古戸建や中古アパートをまずは購入したい、と言い出したときは少し報われた気がしました。

ところが、それもつかの間、次第に彼はグレーな領域に手を出すようになっていくのです。

貧困ビジネスで儲ける、という過ち

はじめての投資を行う際に、中古戸建を購入して自らも住んでルームシェアをするというのはとてもいい方法です。彼は独身でしたのでなおさらです。

何度か電話コンサルを行った結果、彼は1,000万円前後の中古戸建を探し始めます。しかしこの辺から、彼の行動に「???」がつくようになっていきます。

彼はルームシェアで家賃の長期安定を狙うために、あえて生活困窮者を狙うことを思いつきます。彼らに生活保護を受給させて自分の戸建に住まわせようというのです。

そして彼は、生活困窮者に近づくために、生活困窮者のためのNPOにボランティアとして参加します。なるほど、こうすれば生活困窮者の紹介が受けられるというわけですが、魂胆がみえみえです。

そうこうするうちに、彼は手頃な中古戸建を見つけました。アパートではなく、一戸建ですから住宅ローンが使えます。しかも、彼は公務員ですから属性はバツグン、満額融資も可能です。

相談を受けた彼のプランでは、彼自身が使うスペースは1割程度。それ以外の9割は3畳の部屋に区切って最大7〜8人でシェア。そして入居者ターゲットは生活困窮者。収入はほとんどありませんから、生活保護を受給させて入居させる計画でした。

そもそも、住宅ローンを利用する場合は基本的に50%以上を賃貸に出したら契約違反になります。これは2世帯住宅などの片方を賃貸するケースを想定して50%以上は自宅として利用することが住宅ローンを使う時のルールになっているのです。

しかし、彼は銀行に自宅で50%以上利用すると嘘をついて、融資の申し込みをしていたのです。

当然、私は彼に苦言を呈しましたよ。最初から自分で住むつもりがなく、ほとんどの部分を賃貸する計画なら、プロパー(事業融資)で融資を受けるべきです。自己資金も多少はありましたから、それも可能なはずだったのです。

しかし、彼はあくまでフルローンということで、私の反対も押切り、住宅ローンの申し込みをしてしまいます。

そして、契約。彼からの相談には呆れてしまっていた私でしたが、仏の顔もなんとやらで、契約の際のチェック事項をアドバイスすることにしました。

契約の際、私の本『「金持ち大家さん」になる! アパート・マンション成功投資術』をしっかり読んでその通りの項目をチェックするようにアドバイス。特に注意しなければならないローン条項にかかわる白紙撤回については口頭でも念を入れて教授しました。

最後に「本当にこの物件に惚れていますか?」「本当に後悔しませんか?」という言葉をかけました。すると彼は自信を持って「大丈夫です」とハッキリ答え、契約に向かったのです。

そして自己都合による契約の撤回

しかし、1カ月後、「やっぱり契約を撤回したい」という相談が入ります。

撤回の理由を聞くと、ただ単に「買うのをやめたくなった」とのこと。それ以上の理由はわかりません。契約時に手付2割として200万円は既に支払い済み。ローン特約の期間中は融資がつかなければ白紙撤回も可能です。しかし、彼は公務員。銀行にとっては優良顧客ですから、住宅ローンがつかないわけがありません。

ローン特約とは、あらかじめ設定された期間内に金融機関から融資が受けられない場合に契約を白紙撤回できるという特約です。白紙撤回ができれば当然、手付金も全額返還されます。

しかし、彼の場合は、優良顧客で既に銀行からのローン承認は降りていましたし、ローン特約の有効期間もとっくに過ぎてしまっていたのです。

こうなると、買主都合の契約解除は、手付金200万円の放棄しかありません。これは、宅地建物取引業法第39条で明確に規定されている条項です(ちなみに売主都合による撤回は手付金倍返し)。

なのに、彼はわざと住宅ローンが受けられないように、「自分の評価に汚点をつけることはできないか」などという、実に、実に、世の中をナメくさった相談を私にしてきたのです。しかも、物件の引き渡しはもう数日後に迫っているのに、です。

仮に彼のローンが取り消されたたとしても、ローン特約の有効期限はとっくに過ぎていますので白紙撤回はできません。売主、仲介業者、銀行、NPOすべての関係者にとって大変迷惑な話です。

さすがの私も堪忍袋が切れて激怒しましたよ。もう愛のある指導などできません。

「あのね、何をいっているんですか?白紙撤回などできるわけないじゃないですか?」

すると彼は、「裏技がないかと思って相談してるんじゃないですか? なのになんで説教されなきゃいけないの?」と逆ギレ。もう、彼にアドバイスできることは何もありません。即刻、当会も除名処分です。

その後、彼がどうなったかは知りません。恐らく、手付け放棄で契約を解除したか、そのまま購入のどちらかでしょう。

そのまま購入して、生活保護者を受け入れて、仮にうまくいっているとしても、どの道、彼にはさらに試練が待ち受けています。今目の前に起こっている事象の意味を客観的に考え、自分にその原因はなかったか内省し、次にその教訓を生かせなければ投資家はもとより、人間としての成長は絶対にありません。

それは社会に役立つ事業なのか?

生活保護者を入れれば、家賃の取りっぱぐれがなくて儲かる、なんてことを自慢げに言う不動産投資家がいますが、これは非常に危険な考えです。

もちろん、生活保護者を受け入れることはとても社会的意義があることです。しかし、社会復帰できる可能性があるのに、あえて生活保護を受給させ続け、それによって賃貸経営が成立するというのは絶対に「おかしい」のです。

少し前に、関西の業者が生活困窮者に住所貸しをし(実際には住まない)、生活保護を受給させ手数料を荒稼ぎしていたという事件が摘発されましたが、こんなのは摘発されて当たり前です。

大家さんが、生活保護者を受け入れたなら、障害者や高齢者を除き、社会復帰の道筋を示すなどして生活保護者の力になるべきだと私は思います。

補助金を受給しながら職業訓練ができる基金もありますし、そういった制度を大家さんは常に把握して、入居者の相談に乗ってあげれば、社会の底辺を脱することができる入居者も少なくないはずです。

これからの時代、事業を行う者は社会的責任(social responsibility)が果たせるかどうかを考えながら事業を行わなければ、儲けるどころか、事業の継続すら難しい時代になってきます。

あなたの仕事は子供に自慢できますか?

あなたの日常にも「グレーだな」と感じる場面が多々あるでしょう。

そう感じたら是非いったん立ち止まって、内なる心に話しかけてみてください。この事業で「自分は社会的責任が果たせるのかどうか」と。

社会的責任が果たせるどうか、よくわからないという人は、自分の子供や親にそのことが「自慢できるか」どうかを考えてみるといいでしょう。「お父さんカッコいいねっ!」子供にそういいわれたなら、それは自信をもって事業を進められるサインです。

お金というのは、どれだけ世の中に貢献したかを図るバロメーターです。欲をかいて儲けたお金は、欲をエサに商売をする人にいずれ奪われるのが世の常。人間性を磨かなければ、たとえ大金を手にしても手の間からこぼれ落ちてしまうものなのです。

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浦田 健

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浦田 健
  • 浦田 健
  • 株式会社FPコミュニケーションズ代表取締役
  • 一般財団法人日本不動産コミュニティー(J-REC)代表理事

明治大学商学部卒。
2002年個人向け不動産コンサルティング会社を創業。 近年、国内はもとより海外の不動産コンサルティングを手がける。
2008年「すべての人に不動産の知識を!」を使命としJ-RECを創設、 同時に「不動産実務検定」を開始。全国35カ所以上に教室を開設し、いつでも、だれでも、どこでも 不動産実務知識が学べる環境をつくる。
主な著書に「金持ち大家さん」シリーズ他不動産関連書籍多数、発行部数は業界最多となる累計30万部を超える。