欧州発の金融緩和縮小で金利・為替・株価すべてに動きが出た1週間

先週(2017年6月26日-30日)の世界の株式市場は前週とは打って変わり、材料豊富で動きの出た1週間でした。主要市場の週間騰落率は、現地通貨ベースで上海総合が+1.1%、TOPIXが横ばい、米S&P500が▲0.6%、独DAXが▲3.2%となりました。

最大の材料は世界的な金融緩和基調から脱する期待が高まったことです。ドラギ欧州中央銀行総裁は、足元の物価上昇率が落ち着いていても政策スタンスの軸足を金融緩和強化ではなくその縮小に置いているという趣旨の発言をしました。ここに英国、カナダの中央銀行が早期利上げを示唆したことで「脱金融緩和」観測が一気に強まりました。

この結果、米欧の長期金利は急騰し、またユーロ、ポンド、カナダドルが上昇しました。

株式市場にも一定の動揺が走りました。主要市場のいわゆる恐怖指数が上昇したことがその現れです。ただし株価指数の反応は全面安でも全面高でもなく、実はまちまちでした。ドイツをはじめとする欧州株、ナスダック指数の下げが大きく、日本株は横ばい、中南米、上海、東アジアの株式市場は上昇しています。

これは各国の景気と金融政策の方向性を素直に反映した結果だと思われます。さらに、イエレンFRB議長が株価の水準に警戒感を示す発言を行ったこと、2017年の折り返し地点を迎え年前半に好調だったテクノロジー株にポジション調整の圧力があったことも作用しています。

なお、米国株式市場ではテクノロジー株が下落する一方、金融株の上昇が指数を支えています。これは金利上昇の恩恵と株主還元期待を反映していますが、金融株以外に上昇したセクターが無かったことにも注目すべきでしょう。

アウトルック:欧州株は下げ止まるか、米国ではテクノロジーから金融へ資金シフトが続くか試す1週間に

今週(2017年7月3日-7日)は、マクロ指標を睨みながら、欧州株の下げ止まりと、米国株でのセクターローテーションの継続性を試す週になるでしょう。

米国企業の決算発表シーズン入りまでにはもう少し時間がありますので、当面の注目はマクロ指標です。特に今週は、米国では6月雇用統計と5月の製造業新規受注など、欧州では5月の小売売上高と独仏の5月の鉱工業生産、中国では購買担当者景気指数、日本では日銀短観が発表されます。景気と物価を睨みながら世界の長期金利の上昇余地を見極める週となりそうです。

先週欧州は長期金利上昇(債券安)と株安になりましたが、欧州の脱金融緩和の動きは足元の景気の足取りの確かさの反映ですので、いずれ欧州株は下げ止まるとみるべきでしょう。これが確認されれば世界の株式市場は落ち着くと思われます。

一方気になるのは米国です。景気の足取りと長期金利の先行きを考えるには、雇用統計(特に賃金)に加えて6月の新車販売などがカギになりそうです。また先週はナイキがアマゾンと連携を強化すると発表し株価が急騰(+10%)しましたが、このようなリアルの小売店舗をバイパスする動きが強まると、雇用面では少なからずのマイナスの影響が出てくる可能性が生まれます。米国の長期金利がさらに上昇に向かうのか下降するかは株式市場の物色の方向性も左右します。テクノロジーが下げ続けるのか下げ止まるのか、そのとき金融株はどうなるのか、あるいは金融株以外に物色をあつめるセクターが台頭するのか、米国株内でのセクターごとのパフォーマンスのゆくえが問われる週になりそうです。

椎名 則夫