「相続対策=建てる」はおやめなさい! アパート新築の落とし穴とは?

失敗しないアパマン投資は「逆算」の発想から

相続対策における「危険な発想」

先日、週刊ダイヤモンド(6/24号)に「不動産投資の甘い罠」と題して、アパートメーカー各社の営業の手口が赤裸々に公開されていました。

かなり衝撃的な内容だったと思いますが、ここに書かれている土地活用手法は、われわれプロの間では絶対にやってはいけない投資手法としては極めて常識的なことでした。しかし、いつの時代になっても騙されてしまう人が後をたちません。

相続対策としてのアパート経営はCMなどの効果もあって根強い人気があります。相続対策で失敗したくないし、無駄な税金は払いたくない、という人はいったいどうすればいいのでしょうか?

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相続対策というと、地主系の資産家であれば、「今ある土地にアパマンを建てる!」ということをまずはイメージするのではないでしょうか?

実はこれ、すごく危険な発想なのです。なぜなら、アパマンはあくまで相続対策のいち手段にすぎないのに、いつのまにか建てることが自体が目的になってしまう人がほとんどだからです。

仮に相続対策が目的であっても、借りたお金は返さなければいけませんので、採算性を最も重要視すべきでしょう。

もっとも、「活かす」という本来の意味を考えれば、「そこ」に「何か」を「建てる」だけでなく、その土地を「売」って、都心の中古アパートに買い替えるという選択もあるし、その土地を「担保」にお金を借りて、都心の中古アパートを「買う」という選択もあるわけです。

そもそも「そこ」に何かを「建てる」ことで、相続対策になると思うこと自体が間違いなのです。

多くの資産家が陥るパターン

想像してください。たとえば、あなたが市街地とは離れた郊外に土地を持っているとしましょう。

郊外とはいっても、周りにアパマン需要がないわけではありません。しかし、市街地に比べれば家賃単価も低く、稼働率もあまり良いとはいえないローケションです。

パッと思いつく相続対策は、この土地にアパマンを建てることしか想像できません。周りの地主もアパマン経営をしている人が多く「土地活用=アパマン」というイメージが染み付いているということもあるでしょう。

しかし、ハウスメーカーの営業マンから最近流行のオール電化や太陽光発電をミックスした賃貸経営で差別化を提案されると、次第にあなたは、「これなら競争に勝てるかもしれない」と思い始め、さらに、家賃保証でダメを押されて、「家賃が保証されるなら」と契約書にハンコを押してしまいます。

えてして、アパートメーカー+家賃保証で提案されたアパートの表面利回りは5〜7%程度がほとんどです。最初から土地を持っている地主さんなのに、これはかなり低い利回りといわざるを得ません。

なぜなら、中古なら都内でも表面利回り10%の土地つき中古アパートを手に入れることができるからです。土地があるのに、5〜7%の利回りがいかに低いのかおわかりいただけるでしょう。

借金5000万円で手取りはわずか月8万円

仮に5000万円のアパートを全額ローンで建てたときの表面利回りが7%なら、家賃収入は350万円となります。

そこからローンを返済したり管理費や修繕費や固定資産税などを支払うと、手取りは良くて2%程度の約100万円。さらに、これを12カ月で割ると、毎月の手残りはたったの8万円。

5000万円の借金という大きなリスクを負うのに、仮に満室を維持しても月々8万円の手残りでは、さすがに心もとないでしょう。もし、家賃5万円だとしたら、空室2戸でマイナスのキャッシュフローになってしまいます。

いくら相続対策(資産圧縮)目的のアパート経営でも、これでは苦労するだけですね。

相続対策といっても、借りたお金は返さなければなりません。したがって、最初から持っている土地にアパートを建てるなら、その表面利回りは最低でも10〜12%以上は狙わないといけません。それでも、フルローンをして手元に残るキャッシュフロー(実質利回り)は3〜5%程度なのです。

5000万円でアパートを建てたとすれば、年150万~250万円が手元に残ります。冷静に考えると、残るお金はそんなに多くないということがわかります。私が相談者にこの事実をお話すると、多くの方が「ハッ」と我に返るのです。

新築は得られる家賃から逆算して予算を決める

土地活用で絶対やってはいけないこと、それは、「差別化した建物を建てさえすればアパート経営は成功する」と、積み上げ式の発想をしてしまうことです。「建物ありき」の計画は、間違いなく失敗しますので素人は絶対にやってはいけません。

逆に、絶対に失敗しない企画の立て方は、得られる家賃から逆算して建物予算を求めることです。

たとえば、ワンルーム8戸の計画があったとしましょう。家賃の相場は5万円だとすると、月40万×12カ月=年間480万円の家賃収入が見込めますね。これに10を掛けると、表面利回り10%が実現する総事業費がわかります。

つまり、総事業費が480万円×10=4800万円以下の計画であれば、利回り10%が実現するわけです。

しかしこれには建築費以外の経費(税金や設計料など)が約10%含まれますので、純粋な工事費は4800万×90%=4320万円となります。さらに、空室リスクやさらなる利回りアップを見込むとすれば4000万円くらいを建築予算のMAXと考えなければなりません。

我々プロは先に建築予算を決めてから企画をスタートさせます。この予算の範囲でアパートを新築できるなら、大きく事業計画が狂うことはありません。

この絶対に超えてはいけない予算がわかれば、工務店にも「広さ●●㎡のワンルーム8戸を4000万円以内の予算で建てられますか?」というように、より具体的なネゴシエーションができるようになります。

工務店もこの予算が実現できれば、受注できる可能性は高くなるわけですから、一生懸命見積もってくれますし無駄な見積りをすることもなくなります。多くの人はこのような逆発想ではなく、積み上げ式の発想で事業を組み立ててしまうから失敗してしまうわけです。

「得られる家賃から逆算して予算を決める!」 アパートを新築する際は、絶対にこれだけは忘れないでほしいと思います。

アパートを建てないで相続対策をする方法

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浦田 健
  • 浦田 健
  • 株式会社FPコミュニケーションズ代表取締役
  • 一般財団法人日本不動産コミュニティー(J-REC)代表理事

明治大学商学部卒。
2002年個人向け不動産コンサルティング会社を創業。 近年、国内はもとより海外の不動産コンサルティングを手がける。
2008年「すべての人に不動産の知識を!」を使命としJ-RECを創設、 同時に「不動産実務検定」を開始。全国35カ所以上に教室を開設し、いつでも、だれでも、どこでも 不動産実務知識が学べる環境をつくる。
主な著書に「金持ち大家さん」シリーズ他不動産関連書籍多数、発行部数は業界最多となる累計30万部を超える。