いまさら聞けない!「有価証券報告書」はどこを見ればいいの?

企業の理解が1.5倍になる4つのポイントとは

「有価証券報告書」は企業を知るために役立つ情報の宝庫

昔ほど集中しなくなったとはいえ、6月の終わりは3月決算企業の株主総会がいっせいに開催されるシーズンです。この株主総会の直後のタイミングで、各社から「有価証券報告書」が公表されます。

有価証券報告書は、財務局に提出が義務づけられている、金融証券取引法に基づく法定書類です。これが期日通りに提出できないと、市場の信用は一気に落ちます。最近では東芝(6502)が代表的な例です。

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法定書類なので、どの会社のものを見ても構成は大体同じですが、なかなかの情報の宝庫です。そのため、アナリストとして気になる企業の有価証券報告書はなるべく目を通すようにしています。3月決算の上場企業は数が多いので、企業分析をする者としては、6月終わりから7月上旬は、スポーツの基礎トレーニングに打ち込むような、かなりタフなシーズンとなります。

個人投資家や就職活動で企業研究をする学生にとっても、有価証券報告書は企業概況や事業内容、営業状況、財務状況などを知るのに役立つものです。ちなみに、上場企業の有価証券報告書は金融庁の「EDINET」で閲覧することができます。

「有価証券報告書」と「決算短信」との違い

有価証券報告書とは別に、決算公表の時に開示される「決算短信」という書類があります。「⚪︎⚪︎株式会社の決算が発表されました」という時に、アナリストや投資家、メディアの担当者が見ているのが、この決算短信です。

決算短信は、決算速報のようなもので、証券取引所が定めた適時開示ルールに基づいて上場企業が作成し、証券取引所に提出する書類です。

速報性と重要性を両立させようと、重要性に応じて記載を省略できる仕組みがある一方、決算期末後45日以内に開示するよう求められます。「45日ルール」と言われるもので、3月決算の上場企業の場合、基本的には5月15日までに開示することになります。

上場企業はすべて、四半期ごとに決算情報を開示することが求められます。そのため、3カ月に1度の決算開示のたびに決算短信を提出するのですが、金融証券取引法に基づく書類もまた、四半期に1度提出されます。こちらは、通期決算の時は有価証券報告書、四半期決算の時は四半期報告書と名称が変わります。

ただ、四半期決算の場合は、決算短信と四半期報告書の内容の濃さは大体等しく、両者は、ずれても数日程度の、ほぼ同じタイミングで公表されることが多いです。

ところが、既に述べた通り45日ルールに則った通期決算の決算短信と、株主総会直後に公表される有価証券報告書の間には、1カ月以上のタイムラグがあります。その分、内容の濃さが違ってきます。

決算短信だけ読んで済ましてしまう人が多いので、決算短信では省略されていて、有価証券報告書に記載されている部分は意外な盲点で、実はここに大事な情報が詰まっています。

有価証券報告書で押さえたいポイント

筆者が情報の宝庫と筆者が考えているのは、「事業の内容」、「生産、受注及び販売の状況」、「対処すべき課題」、「事業等のリスク」の4つの項目です。これらに書かれている内容をまとめるだけでも、その企業の強み・弱み分析(SWOT分析)の大枠はできてしまうと思います。

「事業の内容」では、その企業の現在のビジネスモデルが説明されています。毎年同じビジネスを続けていれば記載内容はさほど変わりませんが、数年分を比較して違っている場合は、その部分に注意を払います。

「生産、受注及び販売の状況」では、セグメント別の生産、受注高、売上高が記載されます。もし、売上高の10%以上を占める顧客がいる場合は、主要顧客として名前が開示されます。顧客の実名が分かるだけでなく、これも数年分を比較すると、主要顧客との関係の変化が見えてきます。

「対処すべき課題」のところでは、経営陣が考えている現状の経営課題が示されます。経営陣はこの課題を解消しようとして動くわけですから、企業が今後何に取り組んで経営していくかのイメージが見えてきます。リアリティのある記載がなされているところは特に要注意です。

「事業等のリスク」のところは、経営陣が考えている不確実要因が列挙されています。外部環境から内部状況まで多岐にわたっていますが、詳細な数字が含まれている部分は特に気をつけて見たいところです。

「アニュアルレポート」と合わせて読むとさらに理解が深まる

法定書類の有価証券報告書とは別に、「アニュアルレポート」があります。作成義務がないため、一部の上場企業が作成しています。

こちらは企業が自由に作成できる点が、決まった書式に則って固い文章が続く有価証券報告書とは異なります。しかも、企業の未来について伝えようと各社工夫をこらしていますから、読み応えがあります。

有価証券報告書で過去の経緯と現在の状況、アニュアルレポートで向かおうとする未来が掴めると思いますので、合わせ読みはさらにお勧めです。

藤野 敬太

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藤野 敬太

東京大学経済学部を卒業後、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(現日本アイ・ビー・エム)等を経て、2001年から2013年まで、日興アセットマネジメントにて、アナリストおよびファンドマネージャーとして日本株ファンドの運用に従事。
現在は、オフィス・ラコルドの代表として、ファミリー向け・ファミリービジネス向けのコンサルティングおよびアドバイザー業務を展開する。
CFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、シニア・プライベートバンカー(日本証券アナリスト協会認定)。日本ファミリービジネスアドバイザー協会執行役員・フェロー