男の言い分、女の言い分。離婚の法的場面で認められやすいのは、どっち?  

女性弁護士が見た「信用されない理由」

私生活、とりわけ男女間のモメごとほど誹謗中傷が起こりやすい

政治、ビジネス、私生活、好むと好まざるとに関係なくさまざまな場面で起こるモメごとは、勝っても負けても後味のいいものではありません。

勝ち負け以上に悔しい思いをすることもあります。自分では正しいと思っていることが認められない、あるいはやってもいないことをやったと決めつけられた場合です。こうした誤解や中傷はモメごとに付き物といっていいくらいです。

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誤解や中傷は、政治やビジネスなどの公的なモメごとより、いっそう感情的になりがちな私生活上のモメごとほど起こりやすいのです。なかでも最も感情的になりやすいのは、男女間のモメごとです。このところ連日、TV、ネットを騒がせているように、他者からは判断のつかない誹謗中傷が一方的に繰り返されています。他人ごととはいえ、身につまされる気分になります。

モメごとは当人同士で解決できない場合、行きつく先は法的決着しかありません。法的な場面で、言い分が認められやすいのは男女いずれでしょうか。

女性の言い分は法的場面でも、わがままと捉えられやすい

女性が離婚問題を抱えたときは、やはり女性弁護士のもとを訪れることが多いようです。気持ちを共感してもらえると思うからでしょうか。

都内・新宿に事務所を構えるA弁護士は、弁護士を目指した動機が両親の離婚だったと言います。

「母の言い分は、わがままとしか受け取ってもらえませんでした。身近で両親を見てきた娘の私が母の言い分が正しいと言っても、聞いてはくれません。専業主婦である母より、社会的地位や肩書のある父の言うことのほうを信用してしまうのです。正しいと思うことや事実を主張するにも社会的地位や肩書が必要だと痛感しましたね」

離婚は当人同士で解決できない場合、まず調停を申し立て、話し合いがまとまらない場合は、裁判を申し立てることになります。調停は、弁護士など司法関係者に、社会経験のある人が加わり、調停委員として双方の言い分を聞きながら、打開の道を探っていく手続きです。

女性の社会進出が進み、地位や肩書を持つようになった現在でも、調停、裁判ともに「女性の言い分は通りにくい」という声が根強くあります。

細かい記憶がない男性の言い分は、法的場所では信用されにくい

一方でB弁護士のように、男性の言い分のほうが認められにくいと言う声もあります。

B弁護士は、離婚弁護士と冠されることもあるほど、多数の離婚案件を扱っています。夫側、妻側のいずれの代理人にもついてきた経験から、「認められにくいのは、男性のほう」だと言います。

「覚えていないのよ、男の人は。『奥さんはこんなこと言ってるけど、どうなの』と尋ねても、『言われてみれば、そんなこともあったかな』という程度。そのときの状況がわからなければ、反論のしようがありませんから、泣き寝入りになってしまいがちです」

たとえば夫が深夜タクシーで帰宅したとします。妻の言い分は、そのときタクシーの中には若い女性が手を振っていた、夫にはよく女性からのメールが入っていて、朝方帰宅することも何回かあった。だから、夫は浮気をしているというものだったとします。

妻の言い分を夫に伝えても、覚えているのは、深夜タクシーで帰宅したこと、メールがあったこと,朝方帰宅したことがあった、くらい。

タクシーの中には女性のほかに男性がいた。たくさんのメールのうち女性からのものはわずかで大半は男性だった。朝方帰宅したのは電車で居眠りをして終点まで行ってしまい、始発電車で戻った。したがって、一連の出来事にはなんらの脈絡もなく、浮気もしていない。これが事実だとしても、よほど明確な証拠があれば別ですが、個々の細かな記憶がなければ、事実だとしても認められにくいのは確かです。

対して妻は、タクシーが止まったとき自分は何をしていたか、タクシー会社名などのほか、街路灯がかすかに点滅していたなどの周辺状況まで記憶していることがめずらしくありません。メールでも、文章を正確に記憶し、絵文字があった、1日に何通来るなどと細かい記憶があります。

当事者でない調停員や裁判官にしてみれば、どうしても細かい記憶があるほうを信用してしまうのです。

法的場所で認められやすい言い分は、総論で男性、各論で女性

現実には、細かな記憶がないのは、やましいことがないからだというのもよくあります。人は、やましいことをしているときは、必要以上に神経が鋭敏になるものです。その分、細かいところまで神経が行きとどくので、記憶にも残りやすいというわけです。また、やましいことがあると、人はやたら饒舌になるものでもあります。

しかし、これを法的場所で認めてもらえるように説明するのは容易なことではありません。

というわけで男性の言い分、女性の言い分のどちらが認められやすいかについての結論は出ません。あえて結論を見出すとすれば、総論ではやはり男性ですが、各論で見ていくと女性の言い分が認められているケースが多々あるということのようです。

間宮 書子

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國學院大學法学部卒業。法律系出版社、弁護士事務所勤務を経て、現職に。
ビジネス法務を中心に、ビジネス全般、旅やエンタメなど広く取材・執筆に従事。
現在は埋もれていても100年後に大化け、通説となるようなネタを求めて活動中。