セブン・アスクル連合はアマゾンに勝てるのか

大都市圏でのECの戦い、本格化へ

セブン&アイ・ホールディングスとアスクルが業務提携

2017年7月6日、セブン&アイ・ホールディングス(3382)とアスクル(2678)が業務提携の基本合意を発表しました。

セブン&アイは再構築中とはいえB2Cをメインとするオムニチャネル戦略を進めており、LOHACO事業を展開するアスクルとは競合関係にあるともみなせます。そのため、この提携に意外感や新鮮味を感じた方も多かったのではないでしょうか。

事業規模を比べると

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業務提携の内容を考える前に両社の事業規模を見ておきましょう。

セブン&アイは、2017年2月期のグローバルのグループ売上(日米コンビニ加盟店の売上を含む)が10.6兆円に上りますが、イトーヨーカドーのネットスーパーの売上は447億円でした(EC売上全体では977億円)。これは前年度に対して+3%の成長であり、同社としては決して満足できるレベルにはなかったと思われます。

一方、アスクルの2017年5月期の売上高は3,359億円でした。ただし、メインはB2B事業の2,919億円でありB2CであるLOHACOの売上は390億円という規模です。

ちなみに、アマゾンジャパンの2016年度の売上高は約1.2兆円と推計されています(2017年6月28日付日本経済新聞)。商品構成の違いから単純比較はできませんが、アマゾンが日本でも揺るぎないポジションを築いているという認識に異論は少ないでしょう。

そのアマゾンはECとリアル店舗の小売業を融合した新しい小売りのプラットフォーム構築にまい進しています。日本でも生鮮を含む食品、日用品・雑貨、専門店グルメなどをカバーして、日々の食卓をサポートするアマゾンフレッシュを強化しています。

こうしたなか、ネットスーパーが伸び悩むセブン&アイ、倉庫の火災でLOHACO事業の成長戦略を見直す必要に迫られたアスクルが業務提携に進むのは自然なことと思われます。

セブンの狙い、アスクルの狙い

業務提携の骨子は次の3点です。

第1は、セブン&アイのECサイト「オムニ7」とアスクルの「LOHACO」の相互送客、第2は、1時間毎に配送時間を設定できる「LOHACO」のプラットフォームを利用した生鮮食品のECビジネスの開始、第3が「オムニ7」の効率化です。

セブン&アイにとってはこの新しいプラットフォームで品目数を管理が容易な数値に絞りこみ、セブンプレミアムの商品を核にしたレシピを動画を活用して提案することを狙うと同時に、従来は非効率だった配送コストをアスクルのプラットフォームで効率化することを目指します。

一方、アスクルとしてはスーパーで生鮮を扱うセブン&アイの知見を活用し、アマゾンフレッシュと比べても遜色のない品揃えやセブンプレミアムという差異化の図れるブランドを扱うことでLOHACO事業の成長を加速したいということでしょう。

消費者の視点で見ると配送の細かい点でアマゾンと少し違いがあるものの、おおむね同レベルのサービスとみなせそうです。このような選択肢が増えることは好ましいと思います。2017年11月以降の事業開始を楽しみに待ちたいと思います。

アマゾンの背中は遠い!?

とはいえ、アマゾンの規模、顧客の満足度とロイヤリティはなかなか崩すことが難しそうです。アマゾンの強みはいろいろありますが、本質的な強みは既に膨大なユーザーの購買履歴を抱えていることでしょう。筆者もそうですが、日用品を中心に隙間時間でのリピートオーダーが増えており、それが大変便利だからです。

しかし、アマゾンフレッシュは日本では2017年4月から始まったばかりで完全に勝負がついたという段階にはありません。「強いアマゾン」を射程に収めるには2つカギがあるでしょう。

第1は食品を含めた日用品の買い物をECで行いたいというニーズが最も高い大都市圏、端的に言えば都区内、特に山手線内でどれだけいい勝負ができるかです。この地域は共稼ぎ層が多く、郊外に比べてスーパーなどが充実していない地域でもあります。コンビニの牙城とも言えますが、この地域をしっかり押さえられるかが重要でしょう。

第2はアスクルの親会社であるヤフー、その親会社であるソフトバンクとの連携が可能かということでしょう。現在ヤフーのEC事業はTポイントを介してソフトバンクユーザーを深耕しています。セブン&アイがソフトバンクユーザーを今回提携した共同事業にも誘致し、定着させたいと考えるのは自然な発想です。セブン&アイがどう回答を出すのか、注目が続きます。

投信1編集部

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投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。