マンション投資に潜むリスク、「室内での賃借人の死亡」の現実

高齢化加速に伴う孤独死を中心に、今後も増える可能性は高い

広く浸透するマンション投資、サラリーマン大家さんもめずらしくない

歴史的な低金利と金融機関の貸し出し規制の緩和等により、不動産投資が活況です。特に、新築マンションの供給増や価格高騰などもあり、一般サラリーマンにもマンション投資が広く浸透しています。

マンション投資は、多くの場合がローン(借入金)を組んでマンションを購入し、それを賃貸します。得られた賃貸収入から、ローンの返済や管理費など諸費用を差し引いた分が手許に残るというのがザックリした仕組みです。また、ローンを返済しながら、購入物件の価格上昇を待って、タイミングよく売却して値上がり益も狙うことができます。

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マンション投資に潜む数多くのリスク、「室内での賃借人の死亡」もその1つ

一見すると魅力的ですが、当然、リスクも少なくありません。主なものとして、空室リスク、金利上昇リスク、家賃滞納リスク、物件価格下落リスク、家賃下落リスク、震災・災害リスクなどがあります。

しかし、これらに加えて、あまり表立って言われていない重大なリスクが潜んでいます。それは、物件内(室内)における賃借人の死亡です。まずは、筆者の知人Mさんに最近起きた実例を紹介しましょう。

中古マンションを賃貸していたMさんの実例

Mさんは7年前に中古のワンルームマンションを購入し(ローン残高あり)、不動産賃貸の管理会社を通じて賃貸しています。賃借人はAさん(42歳の独身男性、会社員)です。

7月X日

マンションの管理人からMさんに電話がありました。内容は、「809号室に入居しているAさんの勤務先の上司の方が、“もう1週間以上、無断欠勤をしている。室内を確認したい”と言ってきた。所有者の許可を得たい」というものでした。驚いたMさんはその旨を了承し、管理人は「結果は追ってまた連絡する」と電話を切りました。

7月Y日(翌日)

管理人からMさんに電話があり、「警察立会いの下、開錠して室内に入ったところ、Aさんが死亡していた。事件性はないようだが、警察が実況見分後に遺族に連絡し、遺体を引き取っていった。ご遺族の方が所有者と連絡を取りたがっている」とのことでした。Mさんは賃貸管理会社に連絡をして、ご遺族の方への連絡・手続きなどを依頼しました。

7月Z日(2日後)

Mさんは賃貸管理会社から途中経過の報告を受けました。それによると、Aさんは浴室前に全裸で倒れていたようで、何らかの急性発作を起こした模様です。幸いと言うと不謹慎かもしれませんが、エアコン(冷房)がつけっ放しだったため、夏にもかかわらず遺体の腐敗は思ったほど進んでいなかったようでした。

とはいえ、死後10日ほど経っていたため、床の一部に体液が染み込んでおり、特殊清掃が必要とのこと。原状回復への費用負担などはご遺族と相談して、また報告するとのことでした。

Aさんは5年前に当該マンションに入居して以降、家賃の滞納など一切ありませんでした。何よりもまだ42歳と若く、働き盛りです。目立った持病はなかったようですが、本当に痛ましいことです。MさんはAさんと面識はないものの、心からお悔やみを申し上げていました。一方で、Mさんが最も恐れていた自殺ではなかったことに、少なからず安堵したようです。

賃借人が死亡しても賃借契約は終了しない

さて、賃借人が死亡した場合、賃貸契約はどうなるのでしょうか? 民法では、この場合でも賃借契約は当然には終了せず、相続人が引き継ぐことになっています。これは、賃借契約が借家権という“権利”だからです。

引き継いだ相続人は、賃貸料や管理費の支払義務があることになります。今回のMさんの場合だと、Aさんのご遺族(注:相続人という前提)が賃借契約を引き継ぎ、賃貸料や原状回復費用の精算を行って、その後に賃借契約を終了するということになります。

自殺の場合とそうでない場合は損害賠償請求が大きく異なる

ここで問題になるのが、その死因です。自殺の場合、特殊洗浄など部屋の原状回復に多額の費用を要する以上に、物件の評判が悪くなり、次の借手が見つかり難いなど極めて大きな損害が発生します。民法では、自殺の場合、こうした損害賠償を賃借人の連帯保証人や相続人に請求することができます。

ところが、自殺でない場合、具体的には、孤独死・病死・事故死の場合は、連帯保証人や相続人に対して、こうした損害賠償の請求ができません。これは、借主が故意や過失で死亡したわけではないからです。

もちろん、部屋の明け渡しまでの賃料や、“通常の”原状回復費用は請求できますが、特殊洗浄費用は請求できないことになるのです。実際には、相続人に対して一部負担を“お願いする”ということになるのですが、あくまでも任意という形になります。

Aさんが自殺ではないことを知って少し安堵したMさんですが、Mさんが負担する費用はかなり大きくなりそうです。また、当該物件は、相当の長期間にわたる空室も予想されるため、Mさんは頭を抱えてしまいました。

孤独死を始めとして「賃借人の死亡」リスクは高まる可能性大

さて、マンション投資を始めて“サラリーマン大家さん”になった皆さん、これは他人事ではありません。今回のMさんの事例は、いつ起きても不思議ではないのです。それどころか、今後の高齢化加速を勘案すると、孤独死を始めとして、その可能性は年々高まっていくと考えられます。

最近では、高齢者の入居に際しては、事実上の“孤独死保険”のような保険も登場しているようですが、まだ十分に補うレベルには至っていません。“さぁ、私もマンション投資をやってみよう”と考えている方々、数多いリスク要因をもう一度チェックしてみてからでも遅くはありませんよ。

投信1編集部

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