娘が彼氏を連れてくるとしたら?

娘を持つ父親なら、こんな相手と結婚してほしいと妄想(?)することはあるのではないでしょうか。それとも、娘を手放すことなど考えたくない!と思う方が多数派でしょうか。

ただ、もし娘が彼氏を連れてくるとしたら、人柄はもちろん、どんな仕事をしているのかも気になるところだと思います。特に、証券アナリストというさまざまな企業の財務状況や将来性などを常日頃からウォッチしている立場では、つい厳しく見てしまうかもしれません。

では、どんな勤務先だったら娘の見る目をほめてあげたいと思うか、妄想ついでに考えてみました。いくつも候補はありますが、今回は1つに絞りました。それは旧財閥系という一見古くさそうなイメージでありながら、早くから経営改革に着手し、また20人以上の役員が1億円を超える役員報酬を得ている三菱電機です。

三菱電機は勝ち組の総合電機メーカー

三菱電機は2015年3月期に過去最高益を更新しており、「日本の総合電機の勝ち組企業」と言われています。かつては名門と言われたものの、8月から東証第2部へ指定替えになってしまった東芝(6502)とは対照的です。

では、なぜ勝ち組となることができたのでしょうか。その理由は2つあると思います。

第1の理由は、「事業ポートフォリオ・マネジメント」という考え方を他社よりも早く取り入れ実践してきたことです。

現在は業績順調な三菱電機ですが、今から約20年前の90年代後半には半導体への投資の失敗で2年連続の当期純損失となり、資金繰りに窮するほど財務が悪化した時期もありました。

そこで、同社が取り組んだのが、”強い事業をより強く”という考え方に基づいた事業の取捨選択です。

具体的には、パソコン生産からの撤退(1999年)、DRAM事業のエルピーダへの譲渡(2003年)、システムLSI事業の分社化(2003年)、携帯電話端末事業からの撤退(2008年)などですが、特筆すべきなのは、三菱電機はこうした取り組みを他の総合電機メーカーよりも10年ほど早く実行したことです。

このため、現在の三菱電機の事業ポートフォリオのなかには、構造的な問題を抱えた事業はほとんどない状態になっています。

第2の理由は、異なる事業を複数手掛ける総合電機という業態でありながら、比較的“風通しのよい組織”となっていることです。

10年ほど前から、経営の意思決定スピードを早めることや収益責任を明確にするために、社内カンパニー制やドメイン制を導入する大手電機メーカーが多く見られましたが、三菱電機はこうした流行には乗らず、事業本部制を維持してきました。

その結果、経営資源の再配分の自由度を確保できています。このため、通信技術とFA技術の融合など、IoT 時代に見合った製品やサービスの開発を素早く行うことが可能となっています。

役員にまでなれたら年俸は1億円超、でも競争は激しい

三菱電機が勝ち組企業であることは、役員報酬1億円超の執行役の数が上場企業で最多であることからも伺い知ることができます。2017年3月期は22人と昨年よりも1人減ったものの、4年連続で最多数の記録を確保しています。

なお、同社の執行役の報酬は、社外取締役が過半数を占める報酬委員会において、経営方針の実現および業績向上へのインセンティブを重視しながら、業績の達成度合い、企業価値向上への貢献度合い、さらに外部の報酬コンサルタントの意見などを交えて決められています。つまり、“ポリティカルゲーム”ではなく、透明性を持った仕組みで決められていると言えるでしょう。

とはいえ、ここまで到達するのはもちろん簡単なことではありません。22人というのは確かに多いですが、三菱電機の連結従業員数が14万人弱であることを考慮すると、競争は相当に激しいでしょう。また、当面の業績は好調が続くとしても、たとえば20年後にどうなっているかはわかりません。

まとめ

今回は娘の彼氏というテーマでしたが、娘ならずとも子供の将来を心配しない親はいないでしょう。ただ、親の世代とは企業をとりまく環境も、働き方も違います。また、変化のスピードが増している今では、先の見通しが立ちにくい難しさもあります。結婚するかしないかも本人次第ですが、まずは自分のやりたいことを見極めて充実した人生を送ってほしいと思います。

LIMO編集部