不動産投資は銀行融資ありき!

不動産事業を拡大するには銀行融資がつきものです。

前回の『不動産投資で失敗しない資金調達の常識とは?』では、銀行融資を受けて物件を購入するメリットと、銀行評価の大切さをお伝えしました。

銀行融資を活用すると得られる直接的なメリットは下記3点です。

メリット① 銀行融資を受けることで節税になる場合がある
メリット② 大規模修繕など突発的な事態に対応できる
メリット③ 次の物件購入時も銀行融資がつきやすくなる

このようにメリットの大きい銀行融資ですが、融資が受けられれば何でもいいというわけではありません。

自己資金は極力少なく(融資額は多く)、返済期間はなるべく長く、金利はできるだけ小さく。

これが融資を受ける際に気を付けるべきポイントです。中でも返済期間は特に注意してください。

また、返済条件を間違えると、家賃が入ってもお金が残らない場合があるので、気を付けてください。

条件次第で手元にほとんどお金が残らなくなる!?

Aさんという方から、「フルローンでしかも低金利なので喜んで借りたのに、なぜかお金が残らない・・・」という相談がありました。

  • 荒川区
  • 築20年超のRC 5階建
  • 1.5億円超
  • 表面利回り9%

利回りもいいですし、物件は悪くないです。むしろ割安ではないでしょうか。でもなぜか毎年の手残りキャッシュフローがほとんどないそうです。

なぜ家賃収入があるのにお金が残らないのかというと、Aさんの現状は下記のように、税引き前キャッシュフロー265万円がほとんど納税にまわっているからです。

[ 現状:期間20年/金利1.0% ]

家賃収入 1445万円
運営費  300万円
支払利息 130万円
元金返済 750万円
減価償却 400万円

<税引き前キャッシュフロー>
家賃収入-運営費-支払利息-元金返済=265万円

<課税所得>
家賃収入-運営費-支払利息-減価償却=615万円

<所得税>
課税所得615万円 × 税率40%=246万円

ちなみに、返済比率(注)を見てみると60%です。

注:年間家賃収入に対する年間返済額(元金+利息)の割合のことをいいます。

Aさんのキャッシュフローが手元に残らない原因は、融資条件を見誤ったことです。

返済期間が短いため、元金返済部分が大きくなりますが、元金返済部分はお金は出ていくのに経費計上できません。純資産が増える=利益とみなされるので、元金返済部分にも税金がかかってくるのです。

この状態から脱するには融資条件がよくないので、銀行に交渉するか、借り換えしかありません。しかし購入時に融資を受けて、まだ1年も経っていませんので条件変更は厳しそうです。

こうなると借り換えを検討するしかありません。借り換えをして返済期間が長くなるとどうでしょうか。

金利が上がっても手残りキャッシュフローが増える場合は?

借り換え先では多少金利が高いかもしれませんので、下記の条件で見てみましょう。

[ 期間25年/金利2.0% ]

家賃収入 1445万円
返済年額 814万円
返済比率 56%

返済比率は現状とあまり変わりません。ですがこの借り換えには意味があります。

利息と元金のバランスで税引き後キャッシュフローが変わります。利息は経費計上できるので利息の支払いが増えても課税額はアップしません。

[ 借換後:期間25年/金利2.0% ]

家賃収入 1445万円
運営費  300万円
支払利息 316万円
元金返済 498万円
減価償却 400万円

<税引き前キャッシュフロー>
家賃収入-運営費-支払利息-元金返済=331万円

<課税所得>
家賃収入-運営費-支払利息-減価償却=429万円

<所得税>
課税所得429万円 × 税率40%=171万円

借り換え前後の変化を見てみましょう。

返済期間:20年 ⇒ 25年

金利:1.0% ⇒ 2.0%

税引き前キャッシュフロー:約プラス70万円
265万円 ⇒ 331万円

所得税:約マイナス70万円
246万円 ⇒ 171万円

不思議な感じがするかもしれませんが、期間を長くすることで、金利は上がったのに税引き後のキャッシュフローが改善しました。

期間を長くすることでなぜ所得税額が下がるのかは、こちらの記事『【不動産投資】融資状況で収益がガラッと変わる!?』をご参照ください。

返済期間を長くとることで起こるデメリットとは?

返済期間を長くとることには、もちろんデメリットもあります。利息が増えるので、長期的に見ると総返済額がアップします。

借入金額:1.5億円超

[期間20年/金利1.0%]
総返済額:1億7656万円

[期間25年/金利2.0%]
総返済額:2億0345万円

完済まで持ち切ると返済額がかなり違います。

また、毎月の元金返済分が少なくなるということは借入残高が減るスピードがダウンするので、途中で売却する場合は売却手残りが減ることになります。

収支を取るか返済額をとるかということになるのですが、長期的に持ちこたえることができるなら売却益狙いでもよいかもしれません。

現実的には収支マイナスでOKという人はなかなかいませんので、今回のような対処が妥当かと思います。

融資の条件を見極めて、勝てる投資家戦略を練ろう!

融資の条件次第で税引き後キャッシュフローが大きく変わってしまうという恐ろしい事実。

銀行融資は節税効果もあるのですが、ご自身できちんと試算をされずに行うのは危険です。本当に基本的なことですが、つい忘れがちです。

融資額、返済期間、金利のバランスに気をつけてください。これらの条件さえ揃えば勝ち続けることが可能です。

うまく銀行と付き合えるようにご自身で知識をつけ、不動産投資家として活動していきましょう。

以上、株式会社コン・パス代表 村上俊介でした。