金利上昇期にはどんな資産に投資すればいい?

バンクローン、ABSに妙味

2008年のリーマンショックから続いていた日米欧の未曽有の金融緩和。日本はまだ出口が見えていませんが、米欧は明確に解除に向かいつつあります。米国では既に政策金利の利上げが開始され、現在は利上げのスピード感が市場のテーマになってはいるものの、緩和終了の方向は逆戻りしません。

欧州も、欧州中央銀行(ECB)の緩和縮小がいつ、どの程度のスピードで行われるかが市場の関心事項です。日本は緩和終了モードではないので、これからしばらくは米欧の金利が上昇し、日本とは金利差が拡大していくことが予想されます。

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一般的には、金利上昇は投資する際の資金調達コストが上がるために、投資の観点からはマイナスの影響があります。また、逆に預金金利が上がる効果もあります。そのため、個人投資家は無理にリスク資産に投資しなくても、預金の利回り上昇により元本を確保しながらお金に働いてもらう効率がアップしますので、リスク資産の下落要因となります。

では、金利上昇期に預金等の元本確保商品に資金を待機させる(=投資しない)以外に、どのような資産に投資すればよいのでしょうか? 資産ごとの特性を以下で見てみましょう。

債券

債券は預金と同じ金利商品ですが、金利が上昇すると債券価格は下落するので長期国債等は避けた方がいい資産です。

株式

経済の一般原則からすると、金利上昇は経済が浮揚する時に起きるため、株式はその時期に上昇する確率が高いと言えます。しかし、実際の市場はそれほど教科書通りにはいかないものです。

たとえば、レバレッジの高い(=負債依存度が高い)企業は借入コストが上昇し、業績の低下につながるので株価にはマイナスです。また、金利の上昇自体が経済の浮揚に伴う「良き」金利上昇なら問題ないですが、ハイパーインフレ等、「悪しき」金利上昇では購買力が低下し、経済にとってマイナスですのですんなり株価上昇とはなりません。

こうして見ると、銘柄や金利上昇の理由にもよりますが、株式は金利上昇期に無条件にお勧めできる資産ではありません。

商品

金や原油、農産物等の商品も教科書的には商品価格上昇⇒インフレ⇒金利上昇という公式に当てはまりますので、金利上昇期に投資や先物を通じて商品に投資するのは理にかなってはいます。

しかし、原油におけるOPECのように、商品価格は生産国の政策による人為的需給や備蓄放出、穀物における干ばつ等の天候の影響も大きいので、ストレートに金利上昇と敏感にリンクするかというと必ずしもそうとは言えません。

そもそも金利は「実質金利+期待インフレ率+信用スプレッド」という3つの要素に分解されますので、インフレ率は金利上昇の1つの要素でしかなく、その他の要素が向いている方向次第で、3要素の総和である金利がどちらに動くか読みづらいという問題もあります。

変動金利資産

投信の投資対象資産としてそれほどメジャーな存在ではありませんが、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な部分もある株式や商品より、もっとストレートに金利上昇が反映する資産がありますので、筆者はそれらに妙味があると考えます。

1つはバンクローンで、もう1つはABSです。

バンクローン

バンクローンは、広くは銀行が保有しているローン資産全般を指しますが、投信等の投資対象となっているのはそのうちのごく一部の形態で、米国が最大の市場で欧州等の先進国にも拡大しつつある企業向けのシンジケートローン(協調融資)です。

これは、個人向け住宅ローンおよび中小企業向けのような、個別に担保や保証等の条件が異なる形態ではなく、10行以上の銀行が相乗りで融資する形式で、最低でも300億~500億円相当、買収ファイナンスのように大きくなると数千億円にも上る大きな金額で融資条件を統一することにより、金融機関間でローン自体の売買を可能にしているものです。

また、LIBOR(ロンドン銀行間金利。1カ月や3カ月の短期)や米短期プライムレートにスプレッドを上乗せする金利決定方式が主流の資産なので、金利上昇時にはストレートに受取金利が増加します。そのうえ、長期固定金利の債券と異なり、金利が上昇しても価格は多少需給による変動こそあれ、パー(元本価格)近辺で推移します。

ただ、バンクローンは主としてハイレバと呼ばれる高借入企業への融資が中心ですから、金利上昇により業況が悪化してデフォルトすることもあります。

ローンは売買金額が500万USドル等と大きく、かつデフォルトリスクを一発で喰らわないようにするために十分な発行体の分散が必要なので、個人で投資できる代物でなく、プロが資金を集約して運用する投信を通じてアクセスすべき資産です。

米国ローンは当然USドル建てですが、金利が上昇していくと為替もドル高円安が見込まれますのでヘッジなしでもいいでしょう。ヘッジありの場合、日米の金利差そのものであるヘッジコストも金利上昇につれて上がりますが、受取金利が増えるのでコスト吸収効果があります。

本場米国ではいつでも買える追加型のバンクローン投信が多く存在しますが、日本では“為替フルヘッジで元本確保”的な狙いの、募集期間が当初設定時だけに限られる単位型での設定が多いので、そう頻繁にない募集の機会があれば投資をご検討することをお勧めします。

ABS

一方、ABS(Asset Backed Securities)とは資産担保証券のことで、担保となる資産は自動車ローン(CARS)、クレジットカード債権(CARDS)、住宅ローン(MBS)、銀行ローン(CLO)等、色々な種類があります。

2008年のリーマンショックの元凶の1つにCLOが挙げられたため、一部で毛嫌いされる傾向にありますが、返済優先度の高い上位格付けの銘柄を選べばAAA格等、極めて優良な格付けで流動性も十分です。また、一部のABSは短期金利連動型なので、これからの金利上昇期に適した資産だと思います。

ただ、ABSはまだ日本の投信の投資対象資産として入ってきていないので、決済面等の商品開発が進むのが待たれます。

林 俊宏

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林 俊宏

国内大手信託銀行を振り出しに、系列の投信運用会社、外資系運用会社、販売会社等で一貫して商品企画に携わる。
株、債券、リートにとどまらずバンクローン、デリバティブ、ヘッジファンド、プライベートエクイティも投資または組成経験あり。
証券アナリスト協会検定会員、ペンシルベニア大学・ウォートンスクールにてMBA取得