アパレル売り場の試着室。男女で正反対の売れる「コツ」とは?

触って売るか、1ミリも触らずに売るか

オフレコ会話がおもしろいのは、アパレル業界も同じ

取材はテープを止めてからがおもしろいと言われています。現在ならテープの代わりにICレコーダーですが、取材時には記事を書くためメモのほかに録音機器も使うことがほとんどです。

記録するモノが動いている間は、取材相手も当然、警戒しています。初めて会うに等しい相手からいろいろと尋ねられるのですから、どうしても当たり障りのない応答に終始しがちです。

これでは、聞いておもしろい、読んでおもしろい話など引き出せるわけはありません。

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だからベテラン記者は、ひと通りの取材をしたあと、テープを止め、ややオーバーアクションでメモも閉じます。ここからは一切、記録していませんよという合図です。

その瞬間、取材相手も肩の荷をおろしたようにホッとした表情に変わります。

取材相手、とりわけ会社員は話し方、表情、話の内容すら同じことが珍しくありません。取材する前から、すべてを予想できるほどです。

しかし、オフレコになった瞬間、個々の人柄が見え、個々の人間性の味わいが感じ取れ、血の通った会話になります。思いもしなかった意見が出てくることも多くあります。

想像もしていなかった発見があるから、「テープを止めてからがおもしろい」と言われているのでしょう(公にできないことは書かないのはもちろんですが)。

オフレコ会話がおもしろいのは、アパレル業界も同じです。

紳士服は、お客の肩をポンッ、ポンッと叩けば売れていく

アパレル業界のベテラン販売員が数名、有志で集まり、情報交換が行われました。

モノが売れない時代にあって、アパレル業界は業績微増が続いています。しかし内訳を見ると、ファーストリテイリングやしまむら、ネット販売の好調によるもので、百貨店など既存のアパレルは依然として厳しい状況にあるようです。

なんとか打開しようという趣旨での会合でしたので、業界体質などの問題点がいくつか挙げられていましたが、有効な対策案にまでは至らないまま予定の2時間が過ぎていきました。

散会。お疲れさまのあいさつのあと、誰からともなく切り出された話題が来店客とのやりとりでした。やはり最大の関心事は、どうやって売るかということなのでしょうか。

紳士服のベテラン男性販売員が言います。

「最後は、肩のあたりをポンッ、ポンッ! と軽く2回ほど叩くのです。これで、大抵は売れますね」

これを聞いて、婦人服のベテラン販売員は一同仰天です。

「そんなことをしたら、そのお客は気持ちわるがって二度と来店しなくなるわね」

婦人服の販売は、可能な限りお客の体に触れないようにして売る

紳士服でも、婦人服でも、ほとんどは試着した上で購入されます。売れるかどうかの勝負は試着で決まり、紳士服の場合は、上着を試着したお客の肩のあたりを叩くことが多いそうです。

このベテラン販売員によれば、何らかのスキンシップがなければ売れないことが多いのだと言います。

対して婦人服では、まったく逆。婦人服でももちろん、ほとんどは試着した結果で買うか買わないかが決まるのは同じです。

試着したものが似合っているかいないか、2~3枚試着室に持ち込んだ場合はどれが似合うかを助言する程度です。それでも迷っているようなら、もっと似合いそうな服を提案できるかどうか。こうした助言やアドバイスを的確に行うと売れるのだそうです。

もっとも、お客が気に入っているときは、たとえ似合っていないと思ったときでも、はっきりと「似合わない」と言う販売員はいませんが。

いずれにしても、試着したときは、可能なかぎり体には触れないように細心の注意をしているのだそうです。

紳士服を女性が、婦人服を男性が売ったらどうなる?

同じ衣料品販売に従事しながら、お客の体に触れるか触れないかのちがいがあることは、男女販売員双方ともに初耳だったようです。

よく知っているつもりでも、知らないことは少なくありません。

現状では、紳士服は男性販売員が売り、婦人服は女性販売員が売るケースがほとんどです。今回も現状の体制から生まれた発見です。万一、入れ替えたら、つまり紳士服は女性販売員が売り、婦人服は男性販売員が売るとしたら、どんなオフレコ発言が聞けるか楽しみでもあります。

男性が女性を、女性が男性を接客するのは、美容院ではよくある体制ですが、評判は上々。同じことが衣服でも通用するのか、はたまた、まったく売れないという事態となるのか……。

間宮 書子

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國學院大學法学部卒業。法律系出版社、弁護士事務所勤務を経て、現職に。
ビジネス法務を中心に、ビジネス全般、旅やエンタメなど広く取材・執筆に従事。
現在は埋もれていても100年後に大化け、通説となるようなネタを求めて活動中。