なぜ銀行は債務超過の借り手を支えるのか?

大企業救済の追加融資をめぐり駆け引きも

債務超過というのは、「資産を全て売却しても負債を全部返済することができない」状態を言います。通常、そうした会社に対する貸し手は「他の貸し手が返済を受けてしまうと、自分が返済を受けることができなくなってしまう」と考えるので、「他の貸し手が回収する前に急いで貸出を回収しよう」とします。こうして全部の貸し手から返済要請が来ると、全部は返せませんから、倒産することになるわけです。

しかし、場合によっては、銀行が回収を急がず、したがって借り手が直ちには倒産しないことがあります。今回は、銀行が回収を急がない事情について考えてみましょう。

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景気の回復などが見込まれる場合

第一に、借り手の業況回復が見込まれる場合です。一時的な不況で債務超過になったとしても、景気が回復すれば黒字となり、債務超過が解消されると期待される場合には、急いで回収するよりも回復を待った方が得になるのです。「バブル期の投機に失敗して債務超過に陥っているが、本業が好調なので債務超過の解消は時間の問題である」、といった場合なども同様です。

第二に、銀行が評判を気にする場合です。「あの銀行は冷たい」と思われると、他の借り手が逃げて行き、他行から借りるようになってしまう可能性があるのです。当該借り手との関係だけを考えれば、回収した方が得でも、銀行全体を考えれば回収しないで借り手が少しでも長生きできるように見守ることが必要なのです。

急いで回収するより待った方が回収額が多そうな場合

第三は、「貸出の回収を待とう。その方が結果として回収できる金額が増えるだろうから」と考える場合です。そう考える背景には減価償却による利益とキャッシュの乖離があります。

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塚崎 公義

1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ
(近著)
増補改訂 よくわかる日本経済入門
なんだ、そうなのか! 経済入門
世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書
老後破産しないためのお金の教科書
経済暴論: 誰も言わなかった「社会とマネー」の奇怪な正体
(雑誌寄稿等)
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