好決算に株価はほとんど無反応、それはなぜか

8月1日に発表されたソニー(6758)の第1四半期決算は、実績が大幅な増収増益となり、通期予想の売上高も上方修正されました。営業利益は据え置きながら、20年ぶりとなる5,000億円台が予想されています。

ただし、こうした好決算にもかかわらず、発表翌日の2日の株価は下落し、7月27日に付けた年初来高値4,616円から約200円強下げた水準となっています。

株価が好決算に無反応である理由としては、以下の3点が考えられます。

第1は、通期予想が「市場の期待」に届かなかったことで、失望売りとまではいかなかったものの、材料出尽くしとなった可能性です。

市場の期待とは証券アナリストの予想数値の平均であり、「市場コンセンサス」とも呼ばれていますが、既に決算発表直前で5,000億円を大きく上回っていたのです。これに対して、会社予想が据え置かれていたため、市場は肩すかしを食らったことになります。

第2は、今年度の会社予想は保守的過ぎであり、上振れの可能性はあるものの、その後の見通しが良くわからない、あるいは今年度がピークとなってしまうことが懸念されている可能性です。言い方を変えれば、「魚の頭と尾はくれてやれ」という投資格言に従い、利食い売りが増加したということになります。

第3は、据え置かれた会社側の利益予想に対して、株式市場はなお疑心暗鬼となっている可能性です。そうであれば、「20年もの長期にわたり達成できなかった利益水準を、やすやすとは達成できるわけがない」と、依然としてソニーは慎重な見方をされていることになります。

20年ぶりの営業利益5,000億円は本当に達成可能なのか

上述の3つの理由はいずれも可能性であり、また日々の株価は上にも下にもランダムに動くことが常ですので、“本当の理由”は、誰も知る由がありません。

ただし、8月1日の決算説明会での決算内容や会社側のメッセージを検証すると、上記3番目の「今年度の5,000億円営業利益が未達となる」という懸念が高まっている可能性は、現時点では極めて低いと考えられます。

というのも、会社予想にはビジネスリスクで約700億円、為替変動リスクで約400億円、合計で約1,100億円という、何かが起こった時の備えとして多額の“リスクバッファー”が織り込まれているためです。

もちろん、今後の為替動向は依然として不透明であり、またビジネスリスクとして織り込まれている部材コストの急激な上昇、競争激化、急激な需要減、金利や株価の大幅な変動などが、今後全く顕在化しないとは限りません。

とはいえ、1,100億円という金額の大きさを考慮すると、今年度の営業利益5,000億円が未達となる可能性はかなり限定的と考えられるのではないでしょうか。

今後の注目点

よって、決算後の株価の反応が今ひとつである理由は、短期業績の下振れ懸念というよりも、5,000億円を達成した後の来年度以降の業績動向を見極めようとする動きを反映しているためではないかと推察されます。

こうした観点から、足元の半導体やデジカメの好調さが今後も継続するのか、またPS4ハードの普及が一巡した後も、利益率の高い自社ソフトやPSVRのような新製品の効果で今後も収益を拡大していけるのかなどが気になるところです。

また、デジカメの交換レンズやゲーム・音楽配信事業のような、継続的な収益拡大が期待できるリカーリング型ビジネスモデルの幅が広がっていくのかについても注視しながら、「今年度がピークとなってしまうリスク」がどの程度あるのかを見極めていきたいと思います。

ソニーの過去10年間の株価推移

LIMO編集部