ダイキンのエアコンはなぜ世界で強いのか

今後はICT(情報通信技術)の活用が注目点に

先週末は島根県益田市で39度を超える今年の国内最高気温となりました。日中は熱中症対策もあり、エアコンなしでは過ごせませんね。そこで今回は、空調機器メーカーの中でも専業メーカーとして独自の地位を築いているダイキン工業(以下、ダイキン)にフォーカスして見ていきたいと思います。

ダイキンの時価総額は日立や三菱電機に迫る

ダイキンは空調機器の専業メーカーですが、時価総額が総合電機メーカーで空調機器も扱う日立製作所や三菱電機と同水準にあることをご存じでしょうか。

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時価総額って何?という方もいるかもしれませんので、ざっくりと説明しておくと、時価総額は「株価に発行済み株式総数をかけたもの」です。別の観点では「利益規模と株式市場の成長期待を掛け合わせたもの」と言うこともできます。

ダイキンの時価総額は8月4日時点で約3.4兆円、それに対して日立が約3.6兆円、三菱電機が約3.7兆円となっています。この3社はいずれも空調機器を事業として扱っていますが、こと空調事業に関していえば、専業メーカーであるダイキンが高く評価されていることが分かります。

ダイキンは何で稼いでいるのか

2017年3月期の決算書を見ると、ダイキンの事業構造は非常にシンプルです。

連結の営業利益は2,308億円ですが、そのうち空調事業で2,087億円を稼いでいます。その他の化学事業が183億円、その他事業が37億円となっています。

空調事業の売上高は実に1.8兆円を超えていますが、特筆すべきは営業利益率が11%を超えている点です。製造業で営業利益率が2桁あるのは収益性が高い事業と言えます。

では、空調事業の中身を見ていきましょう。

空調事業の地域別売上高で最も大きいのは米州の5,134億円で、全体の30%弱を占めています。国内の売上高が4,317億円ですので、すでに空調事業では国内よりも米州の方が大きいことになります。

これは、ダイキンがこれまで積極的なM&Aによって米国企業(グッドマンなど)を買収してきたことで積み上げられているものです。過去に同社は米国進出での失敗や苦労もありましが、そうした経験を糧にして売上高を拡大してきています。

米州以外にも中国で2,971億円、ヨーロッパで2,505億円、アジアで2,329億円の売上高となっており、同社の海外売上高比率は76%にも達しています。まさに空調のグローバル企業と言えるでしょう。

ダイキンは誰と競っているのか

ダイキンが空調事業で競っているのは国内メーカーだけではありません。ダイキンの最も大きな競合には、米国ユナイテッド・テクノロジーズ(以下、UTC)傘下のキヤリアがあります。

UTCの事業セグメントであるUTC Climate, Control & Security(UTCCCS)の2016年の売上高は168.5億ドル(1ドル110円換算で約1兆8500億円)、営業利益(ここではオペレーティング・プロフィット)は29.6億ドル(同3,250億円)で、売上高はダイキンの空調事業とほぼ同水準、利益水準ではUTCCSの方が上回っていることになります。

もっともUTCCSは事業部の名の通り、制御やセキュリティも含まれているので、いわゆる空調事業だけを取り出せば売上高はダイキンの方が大きい可能性はあります。

気になるのは、UTCが空調事業に制御とセキュリティを組み合わせてきたことです。空調事業はもはやインフラとも言える事業です。今後、空調機器やそれに付随する機能がこれまで以上にネットワークに接続されることが進めば、空調機器はIoTの中で重要な役割を果たすでしょう。

つまり、空調機器のハードウェアをネットワークへ接続し、ユーザーにさらなる付加価値を提案するサービスへと事業構造が変化を遂げる可能性もあるのです。

余談ですが、グーグルを含む持ち株会社であるアルファベットの傘下にあるネスト(Nest)は、サーモスタットなどを取り扱っています。2014年に当時のグーグルが買収して話題となりましたが、グーグルも「家」のエネルギーに関心があると見ることができます。

こうした大手企業が仕掛けてくれば、空調を含むエネルギー領域とICT(情報通信技術)がこれまで以上に絡み合ってくるスピードは加速するように思えます。

空調は文化

空調機器とICTがこれまで以上に関係し合うのは止められない流れだというのは誰もが考えることでしょう。とはいえ、空調が文化であるという側面も見逃せません。

冷房が中心となる地域、暖房が中心となる地域、セントラルヒーティングが中心となる建物構造の多い地域、ダクトレス方式の空調機器で対応できる地域など、空調は各地域の建築物や気候風土・文化とともにある点を忘れてはならないでしょう。

まとめにかえて

ダイキンはいち早く欧州や中国で事業を展開し、現地の文化や商習慣を理解し、また空調文化の地域差をM&Aで埋めながら、その中に日本のインバーター制御による空調技術を埋め込むような展開をしてきました。

しかし今後は、そうした事業と地域で構成されるマトリックスを埋める作業から、ICTを活用したサービスとしての空調の付加価値をいっそう高めるという、これまでとは全く異なる競争に突入していくのかもしれません。

投信1編集部

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