金価格はまだまだ下値を切り上げる? 本家“デジタル・ゴールド”の登場も

4-6月期の金需要は10%減、それでも相場は下がらない

2017年上半期の金需要は前年同期比14%減と大きな落ち込みとなりました。ただ、金価格の年初来の騰落率は7月31日現在で10.6%上昇と堅調をキープしています。

需要が後退しているにもかかわらず、なぜ金価格は上昇しているのでしょうか? 今回は需要が低迷してもなお好調が続く金市場の最近事情をまとめてみました。

4-6月期の金需要は10%減、ETFの減速が響く

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、4-6月期の金需要は953.4トンと前年同期を10%下回りました。金ETFへの投資が56トンと前年同期の237.4トンから76%減少したことが響いています。ただし、バー・コインへの投資は240.8トンと13%増加し、インドで26%増加、中国で56%増加しています。

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宝飾品需要は480.8トンと8%増加し、インドで41%増加した一方で、中国では5%減少しています。インドでは物品サービス税(GST)の導入を前にした駆け込み需要が発生した模様ですが、税率は3%と予想を下回ったことから、反動による需要後退のリスクは小さいのではないかと見込まれています。

このほか、工業用需要が81.3トンで2%増加、公的機関の購入は94.5トンで20%増加しています。

一方、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)公表の金価格を見ると、7月31日現在は1267.55ドル(1オンス当たり、以下同)と年初来の騰落率は10.6%上昇となっています。また、1-3月期の平均価格は1219.49ドル、4-6月期は1256.59ドルとなっており、緩やかに価格レンジを引き上げています。

需要が低下しているにもかかわらず価格が上昇している理由としては、需要の減少はETFに集中しており、メインとなる宝飾品をはじめとしてその他の需要がすべて堅調であることが挙げられます。

昨年は、英EU離脱に絡んで金ETFへ資金流入が急拡大しました。今年の需要の低下は昨年の記録的な増加からの減速であって、ネットでの増加は維持しており、資金が流出しているわけではありません。

現在の政治リスクは昨年の英EU離脱ほどのインパクトはないものの、トランプ政権のロシア疑惑などが引き続き金市場をサポートしている模様です。

仮想通貨の普及も影響? “本家デジタル・ゴールド”を準備中

明確な関係があるとは言い切れませんが、中国で金ETFへの投資が急減速しており、同国でのビットコインの普及が影響している恐れがあります。中国政府は自国からの資本流出を防ぐ目的で金輸入の規制を強化しており、その一方でビットコインの需要が増加しているからです。

中国では人民元への信用が低いことから資産価値を守る目的でドルや金が購入されてきた経緯がありますが、これらは政府による強力な管理下に置かれています。一方、ビットコインは政府からの監視を逃れやすく、国外へ移住する場合にもドルや金に比べ、こっそりと送金するには便利と言えるでしょう。

ビットコインが「デジタル・ゴールド」の異名を持つことでもわかるように、“誰の負債でもない”という点は金と同じであり、金が果たしてきた役割の一部を担っていることは確かです。

とはいえ、金には金そのものに価値の裏付けがあるのに対し、ビットコインは資産の裏付けが明確ではあません。

現在、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)と英王立造幣局はブロックチェーン上で金を管理するプロジェクトを進めており、年内にはロイヤルミントゴールド(RMG)と呼ばれるデジタル・ゴールドの取引が開始される予定です。

金の裏付けを持った”本家本元”のデジタル・ゴールドが満を持して登場というわけです。これは、ビットコインと同じプラットフォームを利用して金を取引すること、すなわちビットコインで支払いができるように金での支払いが可能になることを意味します。

ビットコインの魅力は、これまでのところ取引手数料が格段に安いこと、実際の決済に利用できること、そして何よりも中央政府による監視が難しいことにありました。こうした利便性がデジタル・ゴールドでも可能になり、近い将来にはスタバやアマゾンで利用することができるのかもしれません。

トランプ政権の混乱も下支え

トランプ政権の混乱も金価格を下支えしている模様です。

ロシア疑惑を捜査中のモラー特別検察官が大陪審を招集したと報じられており、トランプ政権への捜査は着実に前進していることを匂わせています。

また、トランプ政権内部もごたごたしており、7月21日にスパイサー報道官が辞任したのに続き、28日にはプリーバス大統領首席補佐官を更迭し、首席補佐官にはケリー国土安全保障長官が起用されました。

31日には混乱の原因となっていたスカラムチ広報部長を解任して事態の収拾を図っていますが、スカラムチ氏は就任から10日という異例のスピードでの解任となっており、トランプ劇場の健在ぶりが伺えます。

オバマケアの改廃案も見込み通りには進んでおらず、その影響もあって公約としていた法人税率の15%への引き下げも23%にまでトーンダウンしています。

税制改革やインフラ投資などの公約実行能力に対する疑念は深まるばかりとなっており、政権内でのごたごたやロシア疑惑が引き続き金価格をサポートする見通しです。

下半期も下値を切り上げる展開か

金価格は需要が大きく低下しているにもかかわらず安定しています。

背景には、需要の減少は前年に記録的な増加をしたETFとの比較であり、中国での金ETF減速の影響が大きく、それ以外の需要は堅調であること、また政治的リスクは健在であることなどが挙げられます。

仮想通貨は金市場にも少なからぬ影響を与えていると考えられますが、ビットコインは分裂騒動などもあって不安定な値動きが続いています。こうした中で、年内には本家の“デジタル・ゴールド”の販売が開始される予定です。ビットコインのようにスタバやアマゾンで利用でき、タンス預金としての利便性も一段と向上することが期待されます。

トランプ政権が依然として不安定なこともあり、金価格は年後半も上半期同様に下値を切り上げる展開となるのかもしれません。

投信1編集部

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