「山の日」に考えるべきは空の安全性~過去の事故を振り返る

32年前の日航機墜落事故の悲惨さを風化させるな

昨年から始まった祝日「山の日」が8月11日になった経緯

8月11日は「山の日」です。これは昨年から導入された祝日です。今年はこの「山の日」が金曜日に当たるため、11日~13日は3連休となります。

ただ、8月のお盆休み時期は、学校が夏休みであることはもちろん、多くの企業は夏季休暇を導入しているため、3連休で嬉しいと感じているのは金融機関の職員と官公庁の公務員くらいかもしれません。多くの人にとっては、あまり関心が高い祝日とは言えないのが現状ではないでしょうか。

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ところで、この「山の日」は当初、8月12日に制定されるはずでした。しかし、1985年8月12日に日航機墜落事故が発生したことなどから、8月11日に変更された経緯があります(参考:『新たな祝日「山の日」は、なぜ8月12日ではなく11日になったのか?』)。

1985年8月12日に発生した日航機墜落事故とは?

その日航機墜落事故ですが、発生から今年で32年が経過します。恐らく、事故発生当時に小学校低学年だった方々を含めると、現在の40歳以下の方々は、大惨事の記憶がないものと推測されます。

32年前に起きたその日航機墜落事故とは、どのような事故だったのでしょうか?

日航機墜落事故は、1985年8月12日、JAL123便(定刻18時00分羽田発の大阪伊丹空港行き)が、離陸後約20分後に機体の操縦能力を失い、迷走を経て18時56分(推定)に群馬県多野郡上野村の山中に墜落した大事故です。乗員乗客を合わせた死者520名、生存者4名。この大事故で生存者が4人もいたのは奇跡的なことだと言えます。

死者520名の未曾有の航空機事故、墜落事故としては世界最大

この墜落事故がどれだけの大惨事だったかは、その死者数で分かります。過去、全世界で起きた航空機の事故(墜落、衝突、火災、乱気流など)を死者数の多さで見てみます。なお、戦争による交戦時の撃墜は含まれません。

  • 第1位:583人(1977年、テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故)スペイン
  • 第2位:520人(1985年、日航機123便墜落事故)日本
  • 第3位:349人(1996年、ニューデリー空中衝突事故)インド
  • 第4位:346人(1974年、トルコ航空DC-10パリ墜落事故)フランス
  • 第5位:329人(1985年、インド航空128便爆破事件)大西洋上

決して死者数の多い少ないだけで事故の惨状度合を測るものではありませんが、日航機墜落事故がいかに甚大な事故であったが分かります。

なお、第1位のテネリフェ空港衝突事故は、空港の滑走路における2つの航空機による走行時の衝突事故だったため、日航機事故は“墜落事故”としては世界最大の惨事だったと判断されます。

日航機墜落事故以降、国内の旅客機死亡事故はゼロ

この日航機墜落事故を最後に、日本国内では日本の航空会社による乗客の死者を伴う旅客機事故は起きていません(注:ヘリコプター、セスナ機、訓練機、貨物専用機、自衛隊機、米軍機を除く)。32年近くもの間、“死者ゼロ”が続いているのです。

なお、1994年4月に名古屋小牧空港で台湾の中華航空墜落事故(死者264人)が発生していますが、日本の旅客機事故には含めていません。

日航機墜落事故前は5~6年に1度は起きていた航空機事故

実は、1985年の日航機墜落事故が発生する前までは、国内でも大きな旅客機事故(墜落、空中衝突)は、ザックリ言うと5~6年に1度くらいの割合で起きていました。特に、1960年代~1970年代前半にかけては、多数の死傷者を伴う悲惨な事故が何度も起きています。

1980年代に入って以降も、“逆噴射”という流行語を生みだした日航機350便羽田沖墜落事故(1982年、死者24人)などがありました。

もちろん、こうした航空機事故が起きるたびに、安全対策が強化されてきたはずです。しかし、未曾有の大惨事となった日航機123便墜落事故を契機に、抜本的な安全対策、および官民挙げての安全強化などが講じられ、その後の“死者ゼロ”に繋がっていると考えられます。

現在の空の安全は、520人という多くの尊い犠牲の上に成り立っていると言っても決して言い過ぎではないはずです。

空の安全性に対する緊張感が薄れ始めた?

一方で、あの大惨事から32年という長い時間が過ぎようとしており、“空の安全性”に対する緊張感・危機感が薄らいでいるとも考えられます。実際、大事故には発展しませんでしたが、滑走路への誤進入や、機体の整備不足から起きたと思われるような不具合は、最近になって数多く報告されています。

また、昨年は札幌千歳空港で、保安検査を受けない乗客が搭乗してしまうアクシデントも起きました。幸い、国内ではまだテロ事件は起きていませんが、セキュリティー管理が甘くなれば、いつ起きても不思議ではありません。

空の安全は決して永遠ではないことを肝に銘じるべきでしょう。

改めて「空の安全」を考える

祝日の「山の日」には、本来の制定目的である「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」を実感すると同時に、改めて“空の安全”に思いを巡らせるのも有意義ではないでしょうか。

空の安全に対する緊張感を今一度思い出す日が、1年に1度くらいは必要な時代だと感じます。

投信1編集部

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