「ホリエモンロケット」打ち上げで注目を集める宇宙事業

2017年7月30日、ホリエモンこと堀江貴文氏らによって創業された宇宙ビジネスのスタートアップ企業であるインターステラテクノロジズ社(以下、IST)が行った、観測ロケット「MOMO」の打ち上げが話題となりました。

注目された最大の理由は、これまで国や大企業を中心に行われてきたロケットの発射実験が、小規模なベンチャー企業により行われたことにあります。

今回の試みは部分的な成功に留まりましたが、同社ではこの経験を活かし、近いうちに再び後継機を打ち上げる考えを表明しています。今後、宇宙事業に対する注目度が一段と高まることが予想されます。

そもそも宇宙事業とは

そもそも宇宙事業とは何を指し、日本の現状はどうなっているのでしょうか。

実は、宇宙事業は非常に範囲が広く市場規模も巨大です。

具体的には、①宇宙機器産業(ロケット、衛星、地上局などの衛星機器など)、②衛星通信・放送サービス、③宇宙関連民生機器(GPS受信機、カーナビなど)、④宇宙利用産業(高精度測量ビジネス、衛星データ利用ビジネスなど)に大別され、その市場規模は世界全体で20兆円程度、うち日本は6兆円程度とされています。

ちなみに、日本と米国における宇宙機器産業の市場規模を比較すると、日本市場は米国の約15分の1に過ぎません(日本:約3,000億円、米国:約5兆円)。

また、米国市場が長期にわたってほぼ右肩上がりで成長してきたのとは対照的に、日本市場は90年代半ばにピークを付けた後、2000年代に入ってからは低迷が続いており、未だにピークレベルまで回復していません(2015年時点、出所:日本航空宇宙産業協会)。

ただし、2008年に制定された「宇宙基本法」や、2015年に策定された「新宇宙基本計画」により、国家戦略として宇宙事業の重要性が認識され始めたことや、今回のITSのような意欲のあるベンチャー企業が増えてきたこともあり、今後、日本でも宇宙ビジネスが活発化していくことが期待されています。

誰が儲かるのか

では、今後どのような企業が宇宙事業拡大の恩恵を受けられるのでしょうか。そのことを考えるために、宇宙事業の産業構造を俯瞰してみましょう。

まず、日本の場合、発注者(資金の出し手)の約9割は国(政府)および宇宙航空研究開発機構(JAXA)であり、そこからの需要を三菱重工(7011)、三菱電機(6503)、NEC(6701)などがプライムメーカーとして受注し、サブシステムメーカー、ソフトウエアメーカー、コンポーネント・材料メーカーなどの協力を得て衛星やロケットを製造するという構造になっています。

一方、海外の場合、ロケット打ち上げの取りまとめを行うプライムメーカーは、ロッキードマーチンやボーイングなどの大企業だけではなく、SpaceX、ベクタースペースシステムズ、ロケットラボ、ヴァージンオービットなどの宇宙ベンチャーが多数存在しています。

なお、日本でもIST以外に、アストロスケール(宇宙ゴミの除去サービス)、インフォステラ(人工衛星向けアンテナシェアリングサービス)、アクセルスペース(超小型人工衛星の開発製造および超小型衛星を利用したソリューション提案)といった宇宙ビジネス関連のベンチャー企業が現れてきています。

これらの企業が成長していけば、官需中心の日本の宇宙ビジネスの産業構造も、次第に海外と似たような姿に変化していくことも考えられます。ただし、投資の視点としては、これらの企業は非上場企業であるため、今すぐには「宇宙ビジネス」というテーマ投資の対象とすることはできません。

一方で、大手上場企業が共同でロケットビジネスに参入するというニュースも最近いくつか見られますので、こうした企業に注目するのも一案かと考えられます。

具体的には、PDエアロスペース(非上場)、エイチ・アイ・エス(9603)、ANAホールディングス(9202)の3社による宇宙輸送事業や、キヤノン電子(7739)、IHI(7013)の100%子会社であるIHIエアロスペース、清水建設(1803)、日本政策投資銀行の4社によるミニロケット開発事業への取り組みです。

いずれにせよ、今すぐに儲かるという話ではありませんが、夢の持てる取り組みであるため、今後の動向を大いに注視していきたいと思います。

LIMO編集部