ブラジルの預金金利は10%超。あなたは移住したいですか?したくないですか?

サンパウロ駐在を思い出しながら考える

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皆さん、「預金金利が10%」と言いわれたら信じられますか。実はブラジルでは銀行の預金金利が10%にもなります。仮に、この10%の金利で10年間運用し続けたとしたらどうなるでしょうか。今回は、日本ではありえないが、世界では存在している夢のような世界(?)を想像していくことにしましょう。

複利で資産は10年で2倍以上に

10%の金利で10年運用すれば元本は2.6倍に増えることになります。現在のブラジルの預金金利だけ見れば、下手な株式投資よりよっぽど安全確実な資産運用方法と言えるでしょう。

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仮に1億円持っている方が、ブラジルに移住して銀行に預けっぱなしにしたとしましょう。為替レートが変わらないとすれば、利息は年1000万円(税引き前)相当入ってくる計算になります。

物価が安いブラジルでは、預金に預けておくだけで一生働かなくて済むかも?と思っているあなた。移住を決断する前に次の注意事項を必ず読んでください。

確かにブラジルの預金金利は高い

まずはブラジルの銀行金利がどのように推移してきたかを見てみましょう。トレーディングエコノミクスによれば、過去10年間のブラジルの預金金利は平均で年率10.2%になります。今のところ、ブラジルが日本や欧州のようにマイナス金利に陥る気配は全くありません。

ブラジルの預金金利が高いのは、高インフレでブラジル中央銀行の政策金利が高いからです。最近、その政策金利は10.25%から9.25%に引き下げられましたが、これはブラジル国内のインフレ率が低下傾向にあるからです。先ほどのトレーディングエコノミクスを見ると、確かに2016年をピークとしてインフレは劇的に低下しています。

しかし、足元のインフレ率が3%程度まで下がっても、政策金利が10%近くあるというのは、中央銀行がインフレ率の低下は一時的なものだと判断しているからしょう。おいそれと政策金利を3%や4%に引き下げて、またインフレが再発したら元の木阿弥です。

ただし、預金金利が10%でインフレ率が3%であれば、実質金利はなんと7%。たとえ短期間でも、実質金利が7%もあれば、投資家ならずとも庶民は大喜びです。でも、あまりそんな声は聞こえてきません。それはなぜなのでしょうか。

ブラジルの物価は今や先進国並み

ブラジルの現在の物価がどのようなものか、ナンベオのデータから拾ってみましょう。「レアル」はブラジルの現地通貨です。

  • 国産ビール:6レアル(500ml 約210円)
  • コカコーラ:4.1レアル(330ml 約140円)
  • 牛乳:3.4レアル(1L 約120円)
  • ガソリン:3.7レアル(1L 約130円)
  • スポーツシューズ:320レアル(ナイキ 中クラス 約11,200円)
  • トヨタ カローラ:82,500レアル(1.6リッター 約290万円)

いかがでしょうか。こうしてみると、ここに挙げたものであればブラジルの物価はほとんど日本と変わらないか、場合によっては日本より高いものが散見されます。自動車をはじめとする耐久消費財は、正直日本よりもかなり高いなという印象です。

ブラジルの労働者平均年収は約80万円

ブラジルの労働者平均年収は約22,000レアル(約80万円)で、日本の年間平均給与は420万円です。日本人の給与をベースに単純計算すると、ビール1缶が1,100円、コカコーラは740円、ナイキのスポーツシューズは5万9,000円、カローラは何と1500万円超にもなるのがブラジルの物価感覚です。

幸いなことに、ブラジルでは給料がインフレ調整されて昇給しますので、現地の方々は何とかやり繰りしています。ただし、いくら実質金利がプラスであっても、すぐに物価が上がっていきますので、一般庶民がその恩恵に浴しているわけではありません(特に輸入品は高い)。

移民するなら為替レートにも注意

さて、もし本気で移住を考える場合は、為替レートの変動にも注意しなければなりません。

現在のブラジルの通貨であるレアルが導入されたのは1994年7月で、たった23年の歴史しかありません。それ以前は高インフレの影響で、何度もデノミや切り下げで通貨が変わっています。それほど、ブラジルの通貨は脆弱だったわけです。

現在のレアルの対円為替レートはブルームバーグをもとに筆者が作成した下図のようにに推移しています。足元の為替レートは1レアル当たり35円前後ですが、レアルが導入された1994年7月からは大幅な円高になっています。

導入当時と比べると、レアルの価値は対円で3分の1から4分の1に減価し、ここ10年でも半減しています。

預金金利が未来永劫10%ならかなりの円高も吸収しますが、1997年から2003年にかけての大幅な円高や、リーマンショック以降の円高は予想困難なものでした。

最近は、1レアル=30円から35円くらいで落ち着ているようですが、今後どうなるかは不明です。というのも、通貨安の最大の原因である高インフレ・高金利が継続するブラジルの通貨が、一転してレアル高・円安(上図では右上方向)になるとは考えにくいからです。

移住して一稼ぎを狙ったはいいものの、長年かけて貯めたレアルを円転したら円ベースでは半分になっていた、では泣きっ面に蜂です。

最後に

ブラジルへの移住という極端な例を挙げましたが、実はこの事例、外貨預金を作成する際や海外の株式や債券に投資を行う際の考え方と同じなのです。外貨運用する際は、次の点をよく調べてから行いましょう。

  1. 高金利・高利回りにはワケがある(通常、そうした国は高インフレで経済が脆弱)
  2. 為替変動には気をつける(というか予想不可能。特に高金利国の通貨)
  3. 投資対象国が資本流出規制をしていないかどうか(投資資金が日本に戻せないリスクがあり、ブラジルでも同国からの個人海外送金には一定の規制がある)

こうした事情を知ったうえで移住なり投資するなら、後悔はしないでしょう。

太田 創

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太田 創
  • 太田 創
  • 株式会社GCIアセット・マネジメント
  • 執行役員 チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)

関西学院大学卒。1985年、三菱銀行入行。1988年より約10年間、ロンドンおよびサンパウロで資金為替・デリバティブ等の運用、投資信託の管理業務に携わる。
その後、2000年からシティグループ(米)、UBS(スイス)、フィデリティ(米)において投資信託のマーケティング・商品企画を統括。
2015年に株式会社GCIアセット・マネジメントに移籍し、投資信託事業に従事。
主要な著書には、『ETF投資入門 』(日経BP 2008年)、『お金持ち入門』(実業之日本社 2015年 共著)などがある。