お盆休みの真っ最中ですが、いかがお過ごしでしょうか。暑いしどこも混んでいるからネットショッピングでも…という方もいらっしゃるかもしれませんね。

ところで、ファッションEコマースサイトの「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイが時価総額で1兆円を突破し話題となっています。今回は同社が株式市場で評価される背景を数字から見ていきたいと思います。

時価総額とは何か

時価総額1兆円と聞くとそれだけで”スゴイ”印象はありますが、同業他社や類似企業、関連する産業の企業と比較してどの程度の規模なのかを確認しておきましょう。

ちなみに、時価総額とは株価と発行済株式総数を掛け合わせたものです。現在の利益規模をベースにして利益成長への期待が高ければ時価総額は大きくなりますが、現在の利益規模が大きくとも成長期待が乏しかったりすると低い評価しか受けないということもあります。

スタートトゥデイ時価総額1兆円の立ち位置を確認しよう

さて、比較する対象を見ていくことにしましょう。Eコマースサイトの日本で代表的な企業は楽天ではないでしょうか。扱っているものは多岐にわたっており、金融事業なども行っているので比較する対象として違和感があるという指摘もあるでしょうが、そこはEコマースサイトとしてスタートトゥデイの競合企業のイメージを持つことを優先したいと思います。

楽天の2017年8月10日の時価総額は約1兆8,640億円。スタートトゥデイの同日の時価総額が約1兆780億円。両者を比較するとまだまだ楽天の方が時価総額は大きいですが、スタートトゥデイの成長スピードは目を見張るものがあります。

では、リアル店舗を持つ百貨店はどうでしょうか。三越伊勢丹ホールディングスは約4,410億円、J. フロント リテイリングが約4,320億円、高島屋が約3,630億円といった具合です。時価総額の比較だけであれば、スタートトゥデイの方が既に大きいことが分かります。

では、リアル店舗を持つアパレル小売企業はどうでしょうか。アパレル小売で時価総額が最も大きな企業はユニクロで知られるファーストリテイリングで時価総額は約3兆4,450億円あります。また、アパレル小売とは言い切れないまでもアパレルを取り扱っている無印良品を展開する良品計画は約8,720億円。しまむらは約5,090億円、青山商事が約2,100億円、アダストリアが約1,230億円、ユナイテッドアローズは約1,090億円といった状況です。ファーストリテイリングは別格といえそうですが、アパレル小売りと比較してもスタートトゥデイには存在感があります。

売上高や営業利益の成長率は40%を超える

時価総額の話が長くなりましたが、続いて業績の数字に話を移しましょう。

2017年3月期の同社連結の売上高は764億円、対前年度比は+40%増、営業利益は263億円、対前年度比は+48%増となっています。また、営業利益率は34%を超えており、非常に高い収益性を実現しています。

また、財務諸表を見ていくと、総資産は557億円、自己資本は294億円。大きな借入もなく、現金及び預金を220億円保有しており、非常に健全といえます。

スタートトゥデイは成長率も高く、また高い収益性を確立しています。その結果として財務体質も健全でなんとも勢いがあり盤石な企業がさらに成長をしている印象を持ちます。

スタートトゥデイはどういった事業で儲けているのか

スタートトゥデイの事業は大きく分けて3つの事業があります。一つはZOZOTOWN事業、次いでBtoB事業、最後にフリマ事業です。

2017年3月期で見れば、ZOZOTOWN事業の売上高は全体の89%を占めています。またその中でも受託ショップという各ブランドの商品を受託在庫として同社が預かり、受託販売をする事業がほとんどです。受託ショップ以外にも買取ショップやZOZOUSEDがあります。

受託ショップの取扱高は1,919億円であった一方、売上高は553億円と、売上高の取扱高に対する比率は約29%となります。

ZOZOTOWNの成長みる上で重要な指標とは何か

ZOZTOWN事業に関係する重要な指標であるKPIを見ていくことにしましょう。

ZOZOTOWN出店ショップ数は2017年3月期第4四半期で受託ショップが947、買取ショップが7の合計954ショップあります。対前年同期比で受託ショップが104増加し、買取ショップは17減少しています。受託ショップを増やす一方で、買取ショップが減少したという形です。ただ、ネットしてみれば87増加しています。2018年3月期第1四半期は出店ショップ数全体は987であり、受託ショップも買取ショップも対前四半期比で増加しています。

年間購入者数は、2017年3月期第4四半期で 632万人います。年間購入者数は対前年同期比で185万人増加しています。また、2018年3月期第1四半期の年間購入者数も増加しており、673万人となっています。ここでいう年間購入者数というのは会計期間末日以前の直近1年間です。

年間購入者数673万人の内訳ですが、アクティブ会員数は418万人、またゲスト購入者数が255万人となっています。アクティブ会員数は過去1年以内に1回以上購入した会員数、またゲスト購入者数は会員登録を行わず購入したユニーク購入者数です。つまり会員登録をせずに購入する層も38%存在することになります。

また、アクティブ会員をさらに詳しく見ていくと、2018年3月期第1四半期では、年間購入金額は4万7,119円、年間購入点数は10点を超えている状況です。この年間購入点数は多少の凸凹はありますが、四半期ごと見ても増加傾向にあります。

購買者のプロファイル

平均商品単価及び平均出荷単価をみると、2018年3月期第1四半期でそれぞれ4,099円、8,530円となっています。こうしたデータから見えてくるのは購買者の平均像は4,000円台の商品を約2点購入するというようなイメージでしょうか。

また、デバイス別出荷比率を見ると、2018年3月期第1四半期ではPC経由が約21%であり、ZOZOTOWNでは80%近いユーザーがスマートフォンで買い物をしていることになります。

アクティブ会員の男女比については、女性が67%、男性が33%と現時点では、女性が中心に買い物をしていることが分かります。地域分布については、関東が41%(うち東京が17.5%)、近畿・東海が27.7%となっています。全体の平均年齢は32.7歳で、男性が31.8歳、女性が33.1歳となっており、10代のアクティブユーザーもいるものの、主に支持しているのは社会人になり経済的余裕が出てきた年齢層とも見えます。

なぜZOZOTOWNは支持されるのか

このようにZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイは急激に成長を続けています。もちろんECサイトであることの便利さはあるものの、それ以外の要因も考えられます。たとえば、リアル店舗での買い物を超えるエンターテインメント性とコストパフォーマンスがそこにあるのではないでしょうか。

「買い物はエンターテイメントだ」という考えは多くの方が受け入れることのできる考えだと思います。ただ、その一方で買い物には様々なコストがかかります。商品の購入代金だけではなく、リアル店舗に行く際の交通費や買い物をしている時間そのものも、買い物が特に好きではないという人にとってはコストだと考えることができます。

また、買い物に変わる娯楽が存在する場合は、買い物よりもそちらにより時間を使いたいということもあるでしょう。お気に入りブランドの店舗が近くにない、欲しいものは決まっているけれどいろいろ見比べて買いたいという人がお店をはしごするとすれば体力も必要です。

こう考えてくると、これらのポイントをすべてクリアして買い物というエンターテイメントを楽しめるのがZOZOTOWNだという見方もできそうです。

ECサイトの品揃えやポイント制度、また配送インフラが確立している現状では、リアル店舗での買い物にもそうした便利さやお得度を上回るインパクトがなければ魅力が薄れてしまうという考えもあります。ECサイトはこれからの買い物をさらに変えていくでしょう。ECサイトの位置づけの変化とその中での主力プレーヤーである同社には引き続き注目です。

青山 諭志