「できませんと言うな」はパワハラか? ハイテク企業経営者の思いとは

オムロン、浜松ホトニクス、日本電産〜創業者の心にしみる名言

この名言、誰のものかわかりますか?

偶然なのか必然なのか、名経営者といわれる人たちは同じような名言を残しています。

たとえば、「できませんと云うな」、「できないと言わずにやってみろ」、「すぐやる! 必ずやる! 出来るまでやる!」

ところで、この言葉は誰のものであるかご存じでしょうか。答えは、いずれも日本を代表するハイテク企業の創業者によるものです。

では、それぞれの名言がどのような背景から生まれたのかを見ていきましょう。

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「できませんと云うな」

この言葉は、今から約60年前にオムロン(6645)が世界初となる「無接点近接スイッチ」を開発した時の、同社創業者の立石一真氏(1900~1991年)によるものです。

オムロンといえば、体温計や血圧計が有名ですが、実は同社の主力事業は工場の自動化を行う制御機器事業です。また、同社がこの分野で飛躍するきっかけになったのが、この無接点近接スイッチ開発の成功なのです。

当時の開発現場の状況については、『「できません」と云うな』(湯谷昇羊著)に詳しく描かれていますが、非常に興味深いことに、「できませんと云うな」という叱咤は、実は開発者に対してだけではなく、立石氏自身に対してのものでもあったということです。

では、なぜ、何が立石氏をそこまで駆り立てたのでしょうか。

それは、無接点近接スイッチという壊れないスイッチに対する需要が、高度成長によるオートメーションの高度化に伴い大幅に拡大するという“読み”が同氏にはあったこと、さらに、この製品を開発することは単純に同社だけの利益ではなく、より良い社会をつくるための「ソーシャルニーズ」に応えることだという思いがあったためです。

ちなみに、現在のオムロンは多くの事業を展開していますが、社会に役立つオートメーション価値を提供するという創業理念が、それぞれの事業に継承されています。

自分の仕事が社会に役立つという視点を持つことが、いかに大きな力になるのかを、立石氏の言葉から学びたいと思います。

「できないと言わずにやってみろ」

この言葉は、浜松ホトニクス(6965)の創業メンバーの1人であり、現在は取締役会長である晝馬輝夫氏(91歳)によるものです。

浜松ホトニクスは光関連の電子部品、電子機器の開発製造企業です。「Photon is our business」が同社の社是であり、photon(フォトン:光の粒子)の可能性を追求する研究開発型の企業です。

2002年に「ニュートリノ」と呼ばれる素粒子の観測に成功した功績が認められ、小柴昌俊博士がノーベル物理学賞を受賞しましたが、この発見を陰で支えたのも同社の電子増倍管です。

1979年に小柴博士に直径50センチの光電子増倍管(素粒子を検知するセンサー) の開発を依頼されたものの、当時の同社は最大で20センチの試作品しか作ったことがありませんでした。

晝馬氏は、難色を示す技術陣に対して「できないと言わずにやってみろ」とハッパをかけるだけではなく、「人類未知未踏を目指せ」とまで言い続け、ついに1981年に開発に成功し、1987年に「カミオカンデ」とよばれる研究施設でニュートリノの観測に成功しています。

また、こうした成功体験を背景に、医療機器、半導体製造装置、産業機器など様々な業界で同社の光電子増倍管や光半導体の採用が進み、現在では世界シェア90%という圧倒的なポジションと比較的高い採算性(2016年9月期営業利益率17%)を確保しています。

ビジネスでの成功のカギは、何を置いても差別化であり、そのためには他社が追随できないほどの圧倒的な努力を行うことが肝要だということを、この言葉から学び取ることができると思います。

「すぐやる! 必ずやる! 出来るまでやる!」

この言葉は、日本電産(6594)の創業者であり現在は代表取締役社長兼会長の永守重信氏(72歳)によるものです。

日本電産には、「すぐやる! 必ずやる! 出来るまでやる!」以外に、「情熱、熱意、執念」、「知的ハードワーキング」というモットーもあり、この三大精神が社内風土となって定着しています。

創業からわずか40年あまりで売上高1兆円を超える世界的な総合モータ企業となった後も、大企業病に陥らずに成長が続いているのも、“一番でなければ生き残れない”、という強い危機感が社内に醸成されていることと無関係ではありません。

まとめ

単なるパワハラのようにも感じられる「できませんと言うな」という言葉の背景を理解すると、そこには、様々な含蓄があることがご理解いただけたのではないでしょうか。

とはいえ、単に「やれ」と言うだけなら誰でもできるでしょう。その点、この3人は「結果を出させる」ことに秀でたリーダー、つまり人心掌握力のある魅力的な人物であったのではないかと推察されます。また、それが結果が出ない“残念な経営者”との大きな違いであるとも感じられます。

いずれにせよ、ビジネスの成功の秘訣は「やりきる」ことであり、それによって圧倒的な差別化を実現すること、さらに、それが社会に役立つことが大切であることを、先人の例から学び、心に刻みたいと思います。

投信1編集部

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