2017年は“現時点では”台風が少ない年

2017年も8月が終わろうとしていますが、現時点では、今年は昨年(2016年)に比べて台風が少なくなっています。8月28日現在、日本に上陸した台風の数は2つ(7月に1つ、8月に1つ)ですが、昨年は同時期で4つでした。しかも、この4つは全て8月中旬以降に上陸しています。

そして、昨年8月に上陸した台風は、各地に甚大な被害をもたらしたことが特徴だったと言えます。

昨年8月には4つの台風が上陸、各地に大きな被害

特に、観測史上初めて太平洋側から東北地方に上陸した「台風10号」は、台風としては例外的な大雨をもたらす強い勢力を伴って進行したため、各地で甚大な被害が発生しました。高齢者施設の浸水被害などを中心に、死者23人、行方不明者4人という大災害となりました。

また、この「台風10号」を始めとして8月に上陸した4つの台風は、直接的、および間接的に東北・北海道の農作物に大きな被害を与えました。その中でも、北海道の農作物が受けた影響はひときわ大きく、野菜やコメの不作による価格高騰となって消費者にも跳ね返ってきました。

また、今年4月、食品メーカーによるポテトチップスの品不足が明らかになり大きな話題となりましたが、これも昨年8月の台風被害によるジャガイモの収穫不足によるものだったことは記憶に新しいところです。

台風は少なくても豪雨による被害は甚大

それに比べると、今年は上陸した台風は少ない状況です。また、7月下旬~8月上旬にかけて話題となった「台風5号」のような“長寿台風”はあったものの、台風の直撃による被害は少なくなっている模様です。

しかし、上陸した台風の数や台風による被害は少ないとはいえ、今年は豪雨による被害が深刻なものとなりました。7月初旬に起きた「九州北部豪雨」は甚大な被害(死者36人、行方不明者5人)をもたらし、その後も秋田県(大仙市など)で大雨による被害が出ています。

また、甚大な被害とまではいかないまでも、今夏は山陰地方や四国を始めとする全国各地で猛烈な大雨を記録しています。今年は大雨のニュースが多いと感じた人も少なくないかもしれません。

気象庁による「記録的短時間大雨情報」とは?

気象庁は、数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨を観測・解析した時は、各地の気象台が「記録的短時間大雨情報」というものを発表しています。

この基準は、1時間雨量歴代1位または2位の記録を参考に、概ね府県予報区ごとに決められていますが、現在の降雨がその地域にとって土砂災害や浸水害、中小河川の洪水害の発生につながるような、稀にしか観測されない雨量であることを知らせるためです。

平たく言うと、“大雨により命の危険が迫っている”というもので、即座に命を守る行動(避難など)を促すことが特徴です。単なる大雨情報とは次元が異なるのです。

圧倒的に多い今年の「記録的短時間大雨情報」発令回数

その「記録的短時間大雨情報」が発せられた回数を見てみると、2017年は既に81回を数えており、昨年2016年の年間58回を軽く上回っています。ちなみに、同情報が発せられた年間回数は、2013年が77回、2014年が53回、2015年が38回ですから、今年2017年の回数の多さが理解できましょう。

ちなみに、同情報の運用が正式適用されたのは2013年8月下旬からです。2013年の77回には、それまでの大雨特別警報が含まれているものと推測されますので、一概に比較することは出来ません。

ただ、いずれにせよ、今年2017年は豪雨被害の危険度が例年になく高まっていることは確かでしょう。

台風の直撃よりも甚大な被害をもたらす豪雨が多い

私たちは、大雨による災害というと、台風による災害を想像しがちです。しかしながら、台風による大雨よりも、台風以外の豪雨、例えば、梅雨前線や秋雨前線による豪雨の被害の方が意外に多いのが現状です。

実際、今年7月の「九州北部豪雨」だけでなく、直近数年間でも2015年9月の関東・東北豪雨(鬼怒川の堤防が決壊、死者8人)、2014年8月の広島市土砂災害(死者77人の大惨事)、2012年7月の九州北部豪雨(死者30人)などは、いずれも台風の直撃ではなく、梅雨前線や台風の余波による災害でした。

台風が直撃となると、事前に避難をするなどの準備態勢が整っているのに比べて、こうした事例では事前準備の余裕がなかったことも被害を拡大した一因と考えられます。

豪雨災害の危険が高まる可能性を忘れずに

今年は台風が少ないからと言って安心できませんし、油断は禁物です。元々、9月は台風が多く発生する時期であるのと同時に、秋雨前線が活発になる時期でもあります。豪雨被害に対する準備は十分過ぎるくらい行ってもいいでしょう。

LIMO編集部