株価低迷が続く主力自動車メーカー、投資好機はまだか?

米国の政治リスクに加え円高リスクも再浮上へ

Ed Aldridge / Shutterstock.com

2017年、世界の金融市場は比較的穏やかに推移

早いもので2017年も3分の2が過ぎようとしています。今年は1月の米国トランプ政権発足以降、それに伴う世界の金融市場の激変が期待・懸念されてきました。しかし、現時点では、大きな動きが見られずに推移してきたと言えましょう。

たとえば、昨年(2016年)は、2月上旬に世界的な株価下落、6月下旬にブレグジット(株価急落)、そして、11月初旬の米大統領選におけるトランプ勝利(株価急騰)というように、3回にわたって金融市場が激変しました。

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ところが、今年は短期的には多少の変動は起きたものの、少なくとも昨年のような“激変”、“急変”という状況は金融市場で起こっていません。

日本の株式市場もボックス圏相場が続く

それでも、米国を始めとして、世界の株式市場は緩やかな上昇基調にあります。それに比べると、日本の株式市場は大きな動きがないばかりか、上昇基調にあるとは言い難い状況です。

昨年の日本の株式市場を振り返ると、前述した3回の激変を含めて、相応に大きな変動がありました。日経平均株価を見ると、年間の値幅(高値と安値の差)は4,728円(高値19,592円、安値14,864円)ありましたが、今年は現時点では2,094円(高値20,318円、安値18,224円)に止まっています。

もちろん、これから大きな変動が起きる可能性は十分ありますが、現時点ではボックス圏相場から抜け出せない状況と言ってもいいでしょう。

自動車株のパフォーマンス低迷が深刻

日本株式市場が冴えない状況の理由は必ずしも1つではありませんが、個々のセクターを見ると特徴的な動きもあります。日本株が鈍い動きを続けている中でも、際立って低調なパフォーマンスとなっている主力セクターの1つが自動車株です。

2017年に入って以降の株価パフォーマンスを見ると、日経平均株価が+2%上昇、TOPIXも+6%上昇しているのに対して、トヨタ自動車(7203)が▲11%下落、ホンダ(7267)が▲11%下落、日産自動車(7201)が▲8%下落、SUBARU(7270)が▲20%下落、マツダ(7261)が▲17%下落となっており、深刻な不振にあることがわかります(2016年12月30日終値と2017年8月30日終値との比較、以下同)。

現時点では、円高の影響は株価不振の理由ではない

自動車株のパフォーマンスが悪い時、すぐに思い浮かぶのが円高の影響です。しかし、円/ドルレートを前年同期比で見ると、2017年1-3月:114円(2016年同期は115円)は若干の円高となりましたが、2017年4-6月:111円(2016年同期は108円)は円安に転じており、2017年7-8月も約110円(2016年7-9月は102円)と大幅な円安になっています。

おそらく、各社の第2四半期(7-9月)決算は円安メリットで好決算が期待できます。いずれにせよ、少なくとも現時点では、円高の影響が自動車株の低迷の大きな要因になっているとは言えません。

三菱自動車とスズキは高いパフォーマンス

一方、全ての自動車株が不振というわけではなく、三菱自動車(7211)は+20%上昇、スズキ(7269)は+34%上昇、ヤマハ発動機(7272)は+20%上昇となっており、高いパフォーマンスを上げています。

このうち、2輪車メーカーのヤマハ発動機を除くと、三菱自動車とスズキには大きな共通点があります。それは、トップダウン経営が徹底しているということもありますが、何と言っても、米国事業の比重が小さいということです。

逆に言うと、株価パフォーマンスの不振が続く他社は、米国事業が極めて重要な位置にあることが共通点です。

自動車メーカーは米国の政治リスクから解放されていない

つまり、トヨタやホンダなど、米国事業のウエイトが高い自動車メーカーは、その“米国リスク”が大きく意識されていると考えられます。

確かに、ここ直近はあまり懸念視されていませんが、トランプ政権発足直後は、日本からの自動車輸出が日米貿易不均衡の最大要因の1つに指摘されたり、米国内に新たな工場建設を要求されたりなどしていました。こうしたトランプ政権による政治問題に巻き込まれるリスクが払拭されていないと判断できましょう。

11月以降は円高による収益悪化懸念も再浮上

さらに、実は足元は前年比で円安となっている為替レートも、株価低迷につながっている可能性があります。なぜならば、現状の為替レート(109~110円/ドル)が続く場合、今年11月以降は“円高”に転じてしまうからです。

思い起こせば、昨年は大統領選のトランプ勝利以降、急速な円安進行となりました。すでに忘れてしまった人も多いかと思いますが、大統領選の2016年11月8日は103円/ドルでしたが、11月末には115円/ドルの円安(ドル高)になりました。

現状の為替レートが続けば、11月以降は円高デメリットが自動車メーカーの収益悪化要因として一気に顕在化してくる可能性は高いのです。

米国事業を収益源とする自動車メーカー各社の株価不振は、こうした為替レートのマイナス転換を織り込んでいるとも考えられます。パフォーマンスが低迷している自動車株への投資は、こうしたリスク要因が十分に織り込まれた後でも決して遅くはないと思われます。

投信1編集部

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