富士通を除くと日本の携帯電話メーカーは3社に

2017年8月22日、日本経済新聞は富士通(6702)が携帯電話事業の売却に向けた調整に入ったと報じています。現時点で会社側からの撤退に関する正式発表はないので実現しない可能性は残るものの、仮にそうなった場合、国内の携帯電話メーカーはソニー(6758)、京セラ(6971)、シャープ(6753)の3社のみとなります。

“ガラケー”全盛期の2000年代前半には国内メーカーが11社もあったことを考えると隔世の感は否めません。また、残った3社のなかに旧電電ファミリー4社(日立、NEC、富士通、OKI)の名前がないことも時代の変化を感じさせます。

では、今後残った3社はどのような事業展開を行っていくのでしょうか。順を追って見ていきましょう。

ソニーはグローバルでも生き残っている唯一の日本メーカー

ソニーは100%子会社であるソニーモバイルコミュニケーションが、「Xperia(エクスペリア)」のブランド名で携帯電話事業を展開しています。

同社は、2018年3月期には20年ぶりに営業利益5,000億円台回復が見込まれるまで業績が改善していますが、数年前までは液晶テレビ事業と同様に携帯電話事業も苦しく、撤退の噂もありました(注:同事業は2015年3月期にはのれんの減損を含め2,000億円以上の営業赤字を計上しています)。

ただし、その後はコスト削減に加え、販売地域の絞り込みや製品構成の見直しを行った結果、2017年3月期には黒字転換となりました。2015年3月期に年間3,910万台だった販売台数は2017年3月期には1,460万台にまで縮小してしまいましたが、採算性という点では復活を果たしています。

では、今後の携帯電話事業はどうなるのでしょう。同社では、短期的には大きく減少した出荷台数の回復、ソニーらしい技術(CMOSイメージセンサー、4Kディスプレイ、アンテナ技術など)による商品の差別化、販売オペレーションの強化、強みを持つ日本・欧州市場などへの一層の集中で業績改善を目指すと見られます。

また、中期的にはスマホの商品力の継続的な強化に加え、首を動かすことによってスマホの操作が可能なイヤホンなどのユニークなアクセサリーや、IoT 技術を活用した家族見守りサービスなど、周辺ビジネスも強化することで成長を目指していく考えのようです。

KDDIの筆頭株主である京セラはニッチ戦略で生き残りを目指す

1959年創業の京セラは元々はセラミック部品からスタートしていますが、現在は部品事業に加え、通信機器、プリンターなどの機器事業も展開している総合電機メーカーです。

同社の通信機器事業への参入は1979年からで、2000年に米クアルコム社の携帯電話端末製造部門を、また2008年には三洋電機の携帯電話事業部門を買収しています。

販売は国内ではau向けが中心となっています。これは、同社がKDDI(9433)の筆頭株主であることが一因と考えられます。

また、同社の製品ラインアップには、防水、防塵、耐衝撃に優れた高耐久モデルが目立ち、ニッチ分野を狙う差別化戦略を展開していることがうかがえます。

通信機器関連事業の業績は2016年3月期は赤字を計上していましたが、2017年3月期は黒字転換しています。このため、今後もニッチ戦略やKDDIとの密接な関係を活用することで生き残りを図っていくと考えられます。

経営再建中のシャープは携帯事業で「人に寄り添うIoT 」を目指す

「AQUOS (アクオス)」ブランドで知られるシャープの携帯電話事業の歴史は22年間と長く、これまでカラー液晶、大画面液晶、カメラ付き、ソーラー搭載などの当時としてはユニークな機能を他社に先行して投入してきました。

同社は液晶事業への過剰投資などにより経営危機に陥りましたが、携帯電話事業がメインの「IoT通信」セグメントは、2016年3月期も2017年3月期も黒字を確保していました。

また、2018年3月期からはセグメント変更により、携帯電話事業は「スマートホーム」セグメントに組み入れられていますが、同セグメントの第1四半期(4-6月期)の営業利益は、スマホの販路拡大や白物家電の好調により大幅な増益を確保しています。

今後も液晶ディスプレイなどの自社デバイスや鴻海(ホンハイ)との協業による海外展開の加速により、他社と差異化しながら成長を目指すと見られます。また、モバイル型ロボット電話「ロボホン」のように、通信とAIを融合させた商品も強化していくと考えらえます。

このため、携帯電話事業は、同社がビジョンとして掲げる「人に寄り添うIoT 」の実現には欠かせない存在になるのではないでしょうか。

今後の注目点

このように、残った3社が富士通に続き撤退を模索する兆しは今のところ全くありません。また、富士通についても事業を終息するのではなく、今後も成長するためにアライアンスパートナーを探している可能性が高いようです。

そのため、国内市場の競争環境が劇的に緩和される可能性は小さく、上記3社が残存者利益を早期に享受することは期待薄であることになります。

そうした市場環境のなかで、国内メーカー同士の競争に加え、国内市場の約半分を握るアップルや格安スマホで存在感を増してきている中国のスマホメーカーに対してどのように立ち向かっていくのか、今後も注視していきたいと思います。

LIMO編集部