「猫専用」アパートってどんなもの? 大家さんに聞いてみた

猫好き住民の間に共助のコミュニティも

(提供:Gatos Apartment)

ペットと暮らしたくても住んでいるのがペット不可の賃貸だから我慢している、という方は多いでしょう。特に猫の飼い主さんなら、引っ越しの際などに「猫可」の物件の少なさに四苦八苦した経験を持つ方も少なくないはずです。実際に猫2匹以上が飼える賃貸となると、物件探しはいよいよ困難を極めます。

そのようななか、今「猫専用」のアパートが話題になっています。猫を飼っている人、これから飼う予定の人が入居の第一条件で、人が猫とともに快適に暮らすための設備が考え抜かれているというのです。

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一体どういう物件なのでしょうか。今回は猫専用賃貸コンサルタントであるGatos Apartment代表の木津イチロウ氏にお話を伺いました。

ペット不可のテラスハウスに猫が5匹!?

木津氏は現在、猫専用賃貸を作るためのコンサルティングを行っています。監修した猫専用賃貸は、杉並区、葛飾区、横浜市にあり、すべての部屋が満室。空室待ちはこの3棟合わせてなんと60人にものぼる(2017年8月現在)という人気ぶりです。

一方、木津氏自身は元々サラリーマンで、マーケティングや新規事業の立ち上げに長く携わってきましたが、不動産にかかわったことはなかったといいます。そんな木津氏がこの世界に足を踏み入れるきっかけとなったのは今から約8年前、当時住んでいたペット不可のテラスハウスの庭に野良猫が子猫を連れてきたことでした。

「連れてきた子猫は目やにで目がふさがっていて、保護して入院、手術を受けさせたのです。しかも一緒に保護した母親猫も妊娠していて、すぐに3匹赤ちゃんを産みました」(木津氏)。

急に5匹に増えた猫をペット不可の賃貸に匿うのは無理があります。必死でペット可の賃貸を探した木津氏は、このとき「猫可物件には難あり物件が多いことに気づいた」のだそうです。「駅からとても遠かったり、古かったり。その割に家賃は高い。ペット共生物件も見に行きましたが、ほとんどが犬を想定して作られたものでした。猫のためのものはまったくなかったのです。だったら作ってしまえと」。

こうして2011年、木津氏は購入した土地に「Gatos Apartment」を建てました。そして2階を自身と家族の住まいにし、1階は猫を飼っている人のための賃貸として貸し出したのです。

基本は「人間ファースト」。猫も快適に暮らせる家の条件とは?

木津氏は、賃貸物件をつくるにあたり、ターゲットを「猫を飼っている(飼いたい)20代、30代の女性」に絞りました。そして、対象となる人が喜ぶ仕様にすることを念頭に計画を練ったといいます。ポイントは、あくまでも「人間ファースト」であること。その工夫は物件の随所に見ることができます。

その1:人と猫が一緒に住むのに十分な広さ

「猫可の賃貸物件は20㎡前後のものが多いのですが、たとえば30代の一人暮らしの女性が猫を2匹飼っている場合『快適だな』と感じるには35㎡は必要だろうと考えています」と木津氏。猫を飼う条件として完全室内飼いを標榜していることもあり、コンサルティングの際には、人も猫も快適に暮らせる広さを確保できるようアドバイスをしているといいます。

その2:掃除がしやすい水回りに猫トイレを置ける

木津氏監修の猫専用賃貸では、必ずパウダールーム(トイレ、洗面所など)に猫トイレを2つ置けるスペースがあるのだといいます。「猫の習性を考えれば、360度視界がひらけている場所に蓋のないタイプのトイレを置けるのが理想です。このほかにも、すぐに猫トイレを掃除しやすい導線にしたり、置き場所の近くには換気扇を設置するなど、猫にも人にも優しい仕様にしています」。

葛飾区の監修物件(提供:Gatos Apartment)

その3:猫脱出防止用扉(猫にいたずらされたくないものを置くスペースの確保)

玄関近くには猫の飛び出しを防ぐ脱出防止用扉も設置されています。ところが実際の使い方を見てみると「扉で仕切って、そこに猫に触られたくないもの、たとえばキャットフードや猫砂、コートなどを置いている方が多いようです」と、木津氏は笑います。脱出防止と猫がいたずらできないスペースの確保が兼ねられて一石二鳥ともいえそうです。

その4:人の居住空間に溶け込む、猫のためのスペース

猫専用を銘打っているとはいえ、木津氏が監修する賃貸物件のコンセプトの根底にあるのは「人間ファースト」。「猫のグッズであふれた猫カフェのような部屋を想像してお越しになる方が多いのですが、そういったものがなく、普通のおしゃれな物件なので、驚かれます」と、木津氏。

人の生活を第一に考え、猫のための設備やスペースはそこに溶け込むように作られているのだそうです。とはいえ、猫が好む風通しのよいスペースや外の様子が眺められる窓はしっかりと確保。「これみよがしのものは作らず、飼い主が自分で工夫できる余地を残しています」(木津氏)。

葛飾区の監修物件(提供:Gatos Apartment)

「猫好き」の共通点を持つ住民同士のコミュニティ

木津氏が監修した3棟では、ここ最近の単身世帯中心のアパート・マンションでは珍しく、住民同士の交流も生まれているようです。「猫という共通フィルターで仲良くなれるようです。また、(客層のターゲットとしていた)女性にとって、近隣の人が誰かわかるのは、安心であり、防犯上もいいようです」と、木津氏。

住民の間にコミュニケーションが生まれたことで、助け合いの輪も広がりました。というのも「猫は家につく」と言われるほど、環境が変わることが苦手な動物です。そのため、家を空けるのは日帰り、長くても1泊2日までという飼い主も多くいます。

「住民同士で飼い猫の世話を頼みあえるほどに関係性が深まり、両親を連れて旅行に行けた、と喜ばれた例もありました。毎日忙しく働いている方はキャットシッターを探す時間がありませんし、信頼がおけるかもわからないのに知らない人に鍵を預けるのにも大変な抵抗があるようです。いいコミュニティができているなと思います」(木津氏)。

まとめにかえて:なぜ猫専用賃貸を作るのか

木津氏は猫専用賃貸が増えることで、若い世代が猫を飼えるようになり、ひいては殺処分される猫が減るのではないかと期待しているといいます。

「20~30代女性が猫を飼えないという理由には、ペット不可物件に住んでいることや十分に世話ができないことがあげられているようです。ですが、若い世代に喜んで入居してもらえる猫専用賃貸が増え、そこでのコミュニティが活性化すれば、これらの阻害要因を払拭できるかもしれません。広い視点で考えたときには、そうしたことも目指していきたいと考えています」と木津氏は語ります。

実は、木津氏が監修した猫専用賃貸物件は周辺の家賃相場よりも約3割高い家賃設定にも関わらず、常に満室が続いています。猫専用賃貸物件を不動産投資という視点から見たときのポイントについても木津氏は語ってくれました。こちらは後日、別記事でお伝えします。

取材協力:Gatos Apartment

投信1編集部

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