「猫専用」アパートの経営は儲かるのか? 大家さんに聞いてみた

その物件は「誰の」「何を」解決できますか?

(提供:Gatos Apartment)

2017年9月11日の投信1記事「『猫専用』アパートってどんなもの?大家さんに聞いてみた」では、最近話題の猫専用賃貸アパートの経営とコンサルタントに携わるGatos Apartment代表の木津イチロウ氏にその物件の特徴を伺いました。

実は木津氏が監修した都内2棟、横浜市1棟の猫専用賃貸物件は周辺の家賃相場よりも約3割高い家賃設定にも関わらず、常に満室が続いているといいます。他の賃貸物件と違う点はあるのでしょうか。今回は木津氏が語った猫専用賃貸物件を「不動産投資」という視点から見たときのポイントをご紹介します。

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猫好きだけじゃない? 日本全国の大家さんも「猫専用賃貸」に注目

サラリーマン時代、大家さんになることはおろか、家を建てることさえ考えていなかったという木津氏。しかし、ペット不可のテラスハウスに住んでいたとき、ひょんなことから生まれたばかりの子猫を含む5匹を匿うことになり、家を建てる決意をしたといいます。

「家を建てるお金は負債ですから毎月インカムを生んでほしいと思っていました。一方で猫を飼いたくても飼える部屋がないのは自分自身の経験からわかりましたので、そうした人のために部屋を貸して、家賃でやりくりできればと考えたのです」(木津氏)。

やってみると土地探しから建築、入居者募集のプロモーションまで、多くの苦労があったそうです。「私は当時普通のサラリーマンでしたし、賃貸ビジネスも大家さんも、すべてが一からのスタートでした。ただ、この時にナレッジをかなり吸収できたとも思いました」と、木津氏は当時の手ごたえを語ります。

「猫専用」という一風変わったスタイルは猫の飼い主の注目を集めるだけにとどまりませんでした。周辺の物件よりも高い家賃でもすぐに満室になった人気ぶりが話題となり、全国から大家さんの見学や相談が増えたのです。そして、横浜市の物件で全面監修を引き受けたことをきっかけに猫専用賃貸コンサルタントとしての活動を開始。今後はセミナーも開催する予定だといいます。

葛飾区の監修物件(提供:Gatos Apartment)

猫専用賃貸は「空き部屋対策」につながるのか

今、木津氏のところを訪れる大家さんの相談内容は、土地を持っていて有効活用したいというケースと、不動産投資目的で猫専用物件を作りたいというケースが半々だそうです。

「コンサルのレベルであればリフォームのご相談もありますが、私が監修する案件は100%新築になります。というのも、広さやトイレの置き場所など、私の要求するレベルのものは既存物件のリフォームで実現するのは難しく、新築した方が費用面でも安くなることが多いからです」(木津氏)。

一方、相談を受けているうちに「猫専用にすれば空き部屋が埋まって家賃を上げられる」と安易に考える大家さんが多いとも木津氏は感じたといいます。実際に空き部屋が多く困っているという大家さんに、木津氏が「あなたの物件は『誰の』『何を』解決する物件ですか」と尋ねると、多くの方は答えに詰まるのだそうです。

「マーケティングができていない方が非常に多いのです。仕事でも企画を立ち上げるときには人を説得しなければいけません。コンセプトも大切です。つまり『この物件は誰の何を解決するのか』は一番に考えなければならないことです」と、木津氏。

たとえば、木津氏の経営する「Gatos Apartment」であれば「猫を飼いたい、飼っているという20~30代の女性が猫と一緒に快適に住める住まい」をコンセプトにしています。このコンセプトに基づき、20~30代の女性が喜ぶ仕様の物件をつくることを考えたといいます。

「私の調べでは、日本の20~30代の女性で猫を飼っているという人は猫を飼っている人全体のわずか4%にすぎません。少なく感じられるかもしれませんが、物件がないということは、今は誰も取りに行っていない層だということです。ブルーオーシャンですよね。しかも4%でも絶対数にすればかなりの数になります。問題は、いくら誰も手を付けていないマーケットだといっても、この方々に的確に訴求できる物件でなければ、お客様にはなってくれないということです」。

猫を飼っている人は、自分にとっても猫にとっても住みやすい物件かどうかを家賃やロケーションとあわせてシビアに判断するものです。しかし、そこを無視して「猫可」にすれば儲かるというような発想の大家さんも多いのだと木津氏は指摘します。

「どんな人が猫と暮らす?」――まずはターゲットを決めるところから

猫専用賃貸に限らず、不動産経営において大切なのはマーケティングだと木津氏は考えています。

「まずは誰の何を解決するのかを考え、ターゲットを定めます。それに基づいてマーケティングの4Pを考えてもらいたいのです。どうすればターゲットを満足させる物件(プロダクト)になるか、どの程度のプライス(家賃)が適正か、建てるプレイス(場所)はどこか、プロモーションはどうするのかを並行して進めなければなりません」。

ただし、相続した土地などで場所を選べないこともあります。それでも挽回できる可能性はあると木津氏はいいます。

「たとえば東京23区以外でも、少し立地条件が悪くても、それを物件と家賃とプロモーションで補ってバランスがとれるかどうかがポイントです。たとえば20~30代女性というターゲットだと難しいような条件の土地だったとしても『車を持っている若い夫婦』というようにターゲットを見直し、そういう人が喜ぶ物件にすることは不可能ではありません。戦略を組み、設定次第でカバーできることもあるのです。ネガティブ要素があってもポジティブ要素をいかに増やせるかだと思っています」(木津氏)。

葛飾区の監修物件(提供:Gatos Apartment)

悩み迷う大家さんたちへのアドバイスは?

悩んでいる大家さんの多くは、現在所有の物件について「これがいいと勧められたので」「みんなやっているというので」つくったと言うのだそうです。「みんなやっているから大丈夫だろう」というだけでコンセプトがないまま提示された表面利回りを鵜吞みにして20㎡のワンルームマンションを作り、需要と供給のバランスが崩れた結果、負のスパイラルに陥っている現状があると木津氏は危惧します。

「大家さんをやる、不動産投資をするということは『経営』なのです。その厳しさをわかっていない方が多い気がします」と木津氏は語ります。

「猫専用にすれば空き部屋が埋まりそうだ、儲かりそうだ」「うちの物件も猫専用にして3割家賃を上げたい」と考えている大家さんに対しては、「利回りや儲けは、入居者がいないことには始まりません。繰り返しになりますが、誰の何を解決するのか、そのコンセプトを考えてほしいですね。これがなければ何やってもだめだと思います」と厳しく指摘します。

木津氏は「ベストプラン、ノーマルプラン、ワーストプラン」の3種類を考えることが成功の鉄則だと断言します。「猫専用賃貸に限らず、不動産経営では土地代、建築費、広告費など、トータルでかかる費用があります。これはどこに費用をかけるか、どこを削るかなどで変わります。どのビジネスプランに近づけるのか。儲けや利回りはその最終結果なのです」。

まとめにかえて

木津氏がこれまでに監修した物件は、必ずしも良い条件のものばかりではなく、また、大家さんが猫を飼ったことがないケースもあるといいます。それでもコンセプトを定め、様々な工夫を施すことで人気物件になっているというのが印象的でした。今もまた、新たに2棟、都内で計画が進められているといいます。今後の展開にも注目です。

取材協力:Gatos Apartment

投信1編集部

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