五輪の立候補都市がなくなる!? 異例の2大会開催地同時決定の背景

2032年大会の開催地決定に大きな課題

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IOC総会で2024年パリ五輪、2028年ロサンゼルス五輪が同時決定

あまり大々的に報道されませんでしたが、9月13日に開催されたIOC(国際オリンピック委員会)総会において、2020年東京五輪に次ぐ夏季五輪大会の開催地が決定しました(注:以下は断りがない限りは夏季大会を示す)。

決定されたのは、2024年がパリ(フランス)、2028年がロサンゼルス(米国、以下ロス)です。本来は2024年大会の開催地のみが決められるはずでしたが、96年ぶりとなる異例の2大会開催地の同時決定となりました。

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2024年大会でもまだ7年も先の話なのに、なぜ11年先の開催地まで決定する必要があったのでしょうか。

2024年大会は3都市が立候補を取り下げ

まず、2024年大会の開催誘致を振り返ってみましょう。開催誘致に名乗り出た都市、あるいは、開催誘致を検討したと報じられた都市は数多くありました。

しかし、最終的にIOCが定めた期限内に“とりあえず”立候補届を出した都市は、パリ、ロス、ローマ(イタリア)、ブタペスト(ハンガリー)、ハンブルク(ドイツ)の5つでした。

その後、住民投票の結果からハンブルクが撤退し、開催費用と財政負担の問題からローマとブタペストが立候補を取り下げ、最終的にはパリとロスの一騎打ちになったのです。

冷戦終了後に人気が高騰した五輪開催

ちなみに、開催地が決定されるIOC総会では、2020年大会の候補は3都市(東京、マドリード、イスタンブール)、2016年大会が4都市(リオ、マドリード、東京、シカゴ)、2012年大会~2004年大会が5都市、2000年大会~1992年大会が6都市でした。2都市の一騎打ちは、1988年大会(ソウルと名古屋)以来となります。

なお、その前の1984年大会の立候補はロス1都市であり、1980年大会は2都市、1976年大会は3都市でした。

こうして振り返ると、冷戦終了後は五輪開催誘致が熾烈な競争であったことがわかります。また、近年になってその人気が低下したことも見て取れます。

筆者はロスが有利と予想していたが…

筆者は昨年8月の時点で、2024年大会はロスが有利と考えていました(『リオ五輪閉幕。日本の産業界が期待する2024年の開催地は?』)。それは、開催地決定に際して重要視されるのが、従来の地域性から財政面を中心とした開催能力に変わりつつあったこと、またテロ事件が相次いでいたパリは警備の面からも敬遠されやすいと考えたからです。

結果的には、筆者の予想は外れました。しかし、2028年大会も同時に決めるという異例の措置により、ロスも“当選”を確保しました。なぜ、このような異例の事態になったのでしょうか?

五輪を開催する魅力は低下する一方

最大の要因は、オリンピック大会開催の人気低下です。確かに、五輪は世界最大のスポーツ大会です。しかし、実施競技数が非常に多いため、開催国が準備する施設の数も多くならざるを得ません。

また、実施競技の中には、いわゆるマイナースポーツも少なくないため、テレビ視聴率やスポンサーの偏向・偏重や、競技施設の新設が難しい等の問題が起きます。さらに、サッカーやバスケットなど球技を中心に、事実上、スター選手が出場できないという問題もあります。

その結果、スポンサー収入の減少につながる一方で、警備など運営費用の増加は止まるところを知らない状況になっています。五輪開催国の財政的負担は予想以上に重いと見ていいでしょう。

その点、五輪を凌ぐ規模のスポーツ大会であるサッカーワールドカップは、ドル箱スター選手も出場する、視聴率は稼げる、大手スポンサーも余りある、競技施設の準備が比較的容易などの理由から、現在でも開催地に名乗りを上げる国は多くあります。

2028年大会の開催地を決めないと非常事態に陥る危険があった?

今回、2024年大会の開催地のみを決定した場合、2028年大会の開催地を決める2021年総会には、立候補都市が1つも現れない懸念があったと推測されます。また、財政面で余裕がある中近東諸国やアフリカ諸国のみが立候補した場合、気候や運営能力の問題から、開催地の選定が難しくなることもありえます。

IOCのバッハ会長としては、2028年までの開催を確実なものとしたことで責任を果たしたということなのでしょうか。IOCが抱える五輪開催に対する人気低下という問題は別として、兎にも角にも、2028年までの開催が確定したことは喜んでいいのかもしれません。

今後の開催地決定に大きな問題を残した2028年ロス五輪開催

しかし、今後に大きな問題を残したのも事実です。ロスは2028年大会の開催に譲歩する“見返り”として、IOCに多額の財政支援を確約させています。実際、ロス市長はIOCと交渉した7月末に「見送るには良すぎる条件を示された」と語っています。

その内容は完全には明らかにされていませんが、各種報道によれば、IOCから18億ドル(約2,000億円)の支援に加え、大会で剰余金が発生した場合のIOCの20%取り分も放棄し、その分を大会組織委員会に渡すという内容のようです。4年間先伸ばしても実利を取ったと言えるでしょう。

ただ、ロスの次になる2032年大会の開催地から同様の支援要請が出る可能性が高くなりました。開催地だけでなく、IOCの財政負担も益々大きくなることは必至と言えます。

順当にいけば、2032年大会の開催地は、2025年のIOC総会で決定されます。既に2024年パリ大会は終了していますが、その時の世界経済情勢と合わせて、どのような都市がどのような目論見で立候補するのか、今から注目してもいいでしょう。

投信1編集部

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投信1編集部

投信1編集部は、証券アナリストやファンドマネージャーとして長年の調査経験を持つメンバーで構成されており、金融・経済ニュースや投資に関する知識・アイデアをわかりやすくお届けします。