今年度の予想を事業別に見ると、遊戯事業が減収、減益見通しであるのに対して、ゴルフ事業は増収、増益見通しとなっています。つまり、遊戯事業が足を引っ張っていることになります。

低迷が続くパチンコ、パチスロ市場

では、日本の遊戯機市場はどのようになっているのか、同社の決算資料をもとに見てみましょう。

まず、国内のパチンコ市場ですが、過去10年間、漸減傾向が続いています。2007年(暦年)に約30兆円あった市場は、2010年には約26兆円、2015年には23兆円に減少しています(日本生産性本部調べ)。

一方、パチンコ・パチスロのホール軒数は、2009年の1万2,652軒から2016年には1万986軒に減少した一方で、1ホールあたりの設置台数は2009年の356台から2016年には411台に上昇しており(警察庁調べ)、集約化とホールの大型化が進んでいることがうかがえます・

このように、遊戯市場の低迷は最近始まったことではなく、かなり以前から起きていたことになります。また、今年度の不振は、こうした傾向に加えて規制強化が市場低迷に拍車をかけたことによるようです。

ゴルフ事業には2011年から本格参入

このように、同社にゴルフ事業がなければ今期の業績はさらに悪化していたことになります。そのため、2011年にゴルフ場運営会社であるPGMホールディングスを買収した戦略は理にかなうものであったと考えられます(2015年に株式交換により完全子会社化)。

ちなみに、買収前の2011年3月期には65%であった自己資本比率は、買収直後の2012年3月期には28%まで低下したものの、その後は業績の拡大に伴い2017年3月期末の自己資本比率は48%まで回復しており、買収による財務体質の悪化も深刻なものとはなっていません。

今後の注目点

8月に発表された2018年3月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比▲38%減、営業利益が同▲68%減と大幅な減収、減益決算となりました。また、事業別では、遊戯事業の売上高は同▲71%減、営業利益がゼロとなった一方で、ゴルフ事業は売上高が同+4%増、営業利益が+4%増と増収、増益となっています。

低迷する株価が立ち直るためには、まず、一段と厳しさを増す遊戯事業を競争力のある新機種の投入などにより回復させていくことが可能であるのかが注目されるところです。

PGMについては、2017年3月期末時点で132のゴルフ場を保有しており、アコーディア・ゴルフと並びトップクラスのポジションを確保しています。

また、PGMではブランドや運営体制の強化、会員募集の促進、ゴルフ場のM&Aなどに取り組むことで、競合他社との差別化を図り、規模をさらに拡大していく方針を示しています。

こうした取り組みにより、シニア世代以外の若者世代や女性のゴルフファンを増やしていくことができるか、また、さらなる買収によりスケールメリットを発揮することや、運営の効率化で採算性を向上させることができるのかなど、同社のゴルフ事業における“勝ち残り策”についても注視していきたいと思います。

LIMO編集部