インターネットが普及しているとはいえ、依然としてニュースやスポーツの視聴にテレビが欠かせないという方もいるでしょう。NHKが開示している「日本人の生活時間・2015」によると、時間量で見た場合のテレビの全員平均時間(テレビの視聴時間)は、平日で3時間18分となっています。

「はて、平日にそんなに長くテレビを観ているのか?」と思う方もいるでしょうし「もっと長時間観ている」という方もいるかもしれません。今回は、年齢や性別ごとに視聴時間を見ていくことにしましょう。

日本全体のテレビの視聴時間はどうか

テレビの視聴時間(平日)が2015年に3時間18分であったことはすでに触れましたが、この水準は過去と比べてどうなのでしょうか。

10年前の2005年は3時間27分、20年前の1995年は3時間19分ですので、10年前よりは減少していますし、20年前とはそれほど変わらない、まちまちの状況と言えます。

視聴時間が増えている世代、減少している世代とは

では、男女別、世代別に見るとどうでしょうか。

ひとつの特徴としてあげられるのは、10~60歳代ではどの年齢層も男女を問わず、1995年や2005年と比較して平均時間は減少しているか、ほとんど変わらないといった点です。

たとえば30歳代男性は、1995年の平日の平均時間が2時間29分であったものが2015年には1時間49分にまで減少しています。また、30歳代女性は3時間16分だったのものが2時間37分にまで落ち込んでいます。

その一方で、平均時間が増加している世代があります。それが、70歳以上の男女のカテゴリーです。70歳代以上の男性の場合、平日の平均時間が1995年に5時間10分だったものが2015年は5時間16分になり、女性の場合は1995年が5時間8分であったものが2015年には5時間29分にまで伸びています。

そもそもテレビの視聴時間が5時間という水準も他の世代と比較すると突出しています。70歳代の方はテレビをよく観ており、その割合も多いのだといえそうです。

女性の方がテレビ好きか?

また、男女別でみると、2015年はいずれの世代も男性より女性の方が平日の平均時間が長いことが分かります。

ある40歳代の女性は「朝起きるとまずテレビをつけ、家に帰るとまずテレビをつけます。テレビはBGM代わりです」と言います。ただ「じっと観ていないとついていけなくなる番組は見たくない」という理由で、もっぱらつけているのはバラエティ番組かニュースなのだそうです。

ちなみにこの女性の70歳代の両親もテレビ好きだといいますが「父は飽きっぽい性格のせいかどの番組もあまり続けては見ていません。母は韓流ドラマにハマっていますね。実家はケーブルテレビを契約しているので毎日夜遅くまで何かしら観ています」と話します。

別の40歳代の男性は「ニュース以外は録画ですね。それも隙間時間に見てCMは飛ばします」と、リアルタイムではほとんどテレビを見ていないと話します。録画している番組はドキュメンタリーやインタビュー番組が多いようです。

もちろんこれは一部の意見であって、全員に当てはまるわけではありません。また、若い世代では男女問わず、テレビそのものを持っていないという人も増えているようです。一人暮らしだというある20歳代の女性は「家にテレビはありません。普段はAmazonプライム・ビデオでお笑い番組中心に観ています」といい、テレビがない生活も特に不便はない様子です。

余談ですが、企業でマーケティングを担当しテレビ広告等を扱ってきた人の中には、極端な指摘だと断った上で「消費は最終的に女性が決める」と言う人がいます。その理由の一つとして、女性はテレビの視聴時間が長いことからCMに接する頻度が高く、商品についての認知があるから、という指摘もあったのですが、今後もその傾向は続くのでしょうか。

「ながら」テレビは何時間?

テレビを視聴しながら他のことをするのを「”ながら”テレビ」あるいは「”ながら”視聴」と言ったりしますが、今回の調査ではその時間の調査結果も報告されています。

これによると、冒頭に触れた国民の平日のテレビ視聴時間の3時間18分のうち、ながら視聴は1時間14分、その一方でテレビだけを見ている「専念」視聴は2時間3分となっています。

食事や家事はもちろんのこと、インターネットやスマートフォンが普及した現在では、テレビで見た内容を改めて検索したり、友達との間でのLINEを確認したりと、テレビを観ながらも様々な時間の過ごし方をしていることが多いのではないでしょうか。

まとめにかえて

「テレビを観ない人が増えた」「最近の若者はテレビを持っていない」という声を度々耳にするようになりました。それが事実である反面、世代ごとに受け止め方を変えなければならないということもこの調査は示しています。テレビの存在感に関しては、世代によって全く違った濃淡に映っているといえそうです。

青山 諭志