高まる国際緊張、金融大ウェーブは起こるのか?

日本周辺の緊張に備える動き

アトラス・サバイバル・シェルターズ社、ライジング・S社、ビボス社。みんな米国のシェルター製造会社ですが、その3社に日本からの注文が殺到しているそうです。

今年に入ってすでに10発以上のミサイルが北朝鮮から発射され、中には日本国土をまたいで飛翔したものもあったことから、いつ本土に落ちるかもしれないと懸念しているわけですね。

その北朝鮮に対して米国のトランプ大統領は9月19日の国連一般討論の席で「(条件によっては)完全破壊も辞さない」と強い姿勢で演説し、日本の安倍首相も「対話でなく圧力」支持の姿勢を表明しました。

続きを読む

すると早速、中国当局が自国の旅行会社に対し日本への団体旅行を自粛するようにと指示したとの報道がありました。

周辺に緊張が走っているから危険、というニュアンスではなく、安倍総理の米国協調路線に対する抗議の意味合いが含まれるものと推察できます。国慶節に日本にやってくる中国観光客を当て込んでいた観光産業には痛手になるかもしれません。また、その中国ですが、9月にロシア軍と北朝鮮付近で複数回、軍事演習をしたとの報道もあります。

今回の問題でドイツ、フランス、スイスなどからは平和的解決を望む声が強まっていますが、日本時間9月22日未明に行われた日米韓首脳会談では北朝鮮への圧力強化に向け結束することで一致。当然、該当国からの反発も見込まれることから、万が一に備えたいという民間からのシェルター注文となっているのです。

危機管理のポイント

日本の株式市場には「遠い戦争は買い」「近くの戦争は売り」という先人の格言があります。今回のように、日本近海で緊張感が高まっている場合、危機管理の観点からは最高値を更新する米国株よりも日本の資産に対して備えておくべきでしょう。

まず、命あってのことなので、安全確保ができているかどうか。仮に他国からミサイルが日本国土に着弾した場合、現在、自治体で実施している室内で頭を抱えてうずくまるような防護ですべてを防ぎきれるものではないのは素人目にも明らかです。

ロンドンにあるシンクタンク、国際戦略研究所(IISS)が9月7日に発表したレポートでは、300キロトンの威力を持つ核爆弾が東京に着弾したと仮定した場合の被害を次のように指摘しています。

“If dropped in the middle of Tokyo, it would cause hundreds of thousands of instant deaths and third-degree burns for everyone from the Tokyo Dome to Setagaya, some 15km away.”
(もし東京のど真ん中に落ちたとしたら、数十万人が即死し、東京ドームから約15キロ離れた世田谷までにいるすべての人が3度の熱傷を負うだろう)

IISS「The North Korea Crisis」より引用

自治体が配布しているハザードマップや近隣調査で避難するとしたらどこがもっともふさわしいのか、家族などと目星をつけておきましょう。
 
落下物以外にもリスク管理は多岐にわたります。日銀や証券取引所など金融の中枢を担う場所が損壊された場合は、株価や為替にも大きな変動が生じます。すると、上場企業、取引会社、従業員などにも影響が出て日本経済に計り知れない影響が生じるだろうと思います。日本株、日本の債券だけで運用している場合、ポートフォリオの見直しが必要ではないでしょうか。

実弾でなく、サイバー攻撃という事態もあり得ます。実際、どこのだれが仕掛けたものかは不明ながら、取引先のサイトがサイバー攻撃にあい、取引ができないような事態を筆者自身も経験しています。推定の域を出ませんが、現実にはかなり頻繁にサイバー攻撃は起こっているのではないでしょうか。

株式やFXなどでトレーディング系の資産運用している場合、いざという時に注文できなくなるリスクについて対策しておくべきですね。信用取引の枠組みを目一杯使っていたり、FXのレバレッジが大きい取引を常用している場合、余裕を持たせた取引に切り替えるなどです。

有事に金という考え方がありますが、今のところ、ロンドンでの金価格は落ち着いています。ドル建て商品なので日本では為替動向に左右され、店頭金価格はややタイトです。

注意点として金実物の場合、1キロバーを何本もリュックなどに詰めて走るのは難しく、火災では溶けてしまうため、精錬に費用が掛かることなども念頭に置く必要があります。大量に金を所有している人は保管料を払って安全管理をしていますが、配当を生まない資産だけにコストを気にする人もいます。

過去の例に学ぶ資産運用のコツ

第二次世界大戦後、日本は高度経済成長し、株や不動産価格の上昇で資産形成ができた人は多くいます。

しかし、明治維新以降、たびたび発行された戦時国債は第二次世界大戦敗戦で無価値になり、株式市場も空襲が激しくなった1945年には閉鎖され、自由な売買ができなくなりました。

敗戦後は猛烈なインフレが進み、預金も自由に引き出せなくなり、新札に切り替わったことを知らずに旧札をタンス預金していて財産をなくした人もいました。

戦争に巻き込まれて家屋敷、家財を空襲で焼かれ、命の危険に見舞われた人も甚大な数にのぼります。

やっと戦争が終わったのに、1950年6月には朝鮮戦争が勃発しています。北朝鮮が韓国に攻め込んだのをきっかけに米軍を主軸とした国連軍が出動したのです。再び大戦争が始まるのかと世界がかたずをのんで見守る中、1951年6月にソ連が休戦を提案し、1953年7月に休戦に至りました。

さて、1949年に再開し、活況だった東京証券取引所では朝鮮戦争勃発時には株価指標の半値近くまで暴落してしまいます。

その後は奇跡といわれる日本経済の大成長が始まるわけですが、朝鮮戦争時の暴落を起点とした株価の最安値から最高値までの差は実に約457倍になります。当時のインフレ率を考慮した筆者の計算では1,500倍くらいの大資産効果があったことになります。銘柄によっては配当や株式分割などの恩恵からもっと利益が得られたでしょう。

株価平均は算出対象が時代時代で変わっていますから単純には比較できませんが、それでも大変動があったことは間違いありません。そして、後世、世界的な資産家としてランクインした日本人はこの時の波に上手に乗った人たちでした。

いずれにせよ、国際的な緊張や武力衝突は関連諸国の経済に大きな影響を及ぼし、予期せぬ大変動の引き金にもなりえます。今一度、自身の金融資産のリスク管理を点検し、大きなロスに巻き込まれないようにしたいですね。そして願わくは平和の配当で豊かになりたいものです。

木村 佳子

PR

木村 佳子
  • 木村 佳子
  • 生活経済情報研究所(株)ビューズ代表 経済アナリスト 資産運用アドバイザー

個人投資家向け資産運用情報に精通。全国での講演会数は累計3,000回以上。配当・株主優待を得ながら株価成長を待つカレンダー投資法を提唱。
日本FP協会CFP、一級FP技能士(国家資格)。早大院卒(専門職MBA)。財務省理財局株式専門委員を5期10年務め、現在は日本IRプランナーズ協会理事長として上場企業と個人投資家のより良き関係を研究テーマに活動。JPX女性講座グランドマスター。著書多数。