クラレの活性炭世界最大手買収、株価の反応と今後の行方は?

米カルゴン社買収は割高なのか

クラレの米カルゴン買収発表翌日、株価は下落

9月21日午後4時にクラレ(3405)による記者会見があり、同社が活性炭世界最大手の米カルゴンカーボン(Calgon Carbon Corp.、以下CCC社)の全株式を買収することが発表されました。

発表後、機関投資家やアナリストを対象にした説明会において伊藤正明社長が買収に関する説明を行いましたが、アナリストからは買収価格が割高ではないかとする指摘も出ていました。

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翌22日のクラレ株の始値は前日比▲2.4%安の2,050円、同日午前中には同▲3.6%安の2,025円まで売られ、終値は前日比▲3.5%安の2,027円となりました。同日の日経平均は同▲0.25%安に留まっており、下落の要因は21日の買収発表の内容によると見てよさそうです。

市場はやはり今回のCCC社買収価格を割高と読んだのでしょうが、これは短期的には妥当な反応に思えます。一方、中長期的観点に立てば、ビニルアセテートやイソプレン事業に続く成長分野を模索していたクラレにとっては事業拡大のテコになる可能性もあります。

投資スタンスとしては、短期的な株価下落を睨みながら、中期的には同社株への新規投資のタイミングを探る良い機会かもしれません。

活性炭市場とCCC社のポジション

CCC社は、世界トップのシェアを有する活性炭製造企業です。活性炭というのは、石炭、木材、やし殻を原料に製造されるものです。

活性炭の表面には無数の穴(ポア)があり、この中に排ガスや不純物などを取り込む性質を利用して、水処理、排気ガス処理などの環境システムに多く使われているほか、リチウムイオン2次電池の負極材としても開発が進んでいます。

クラレの調べによると、世界の市場規模は2017年で160万トン、金額で1,500~1,600億円程度の典型的ニッチマーケットです。また、世界の市場成長率は年率+5~7%と同社では推定しています。

このニッチマーケットでは、米国のCCC社やキャボット社などが世界的なトップグループを形成しています。クラレはそれに続く位置にありますが、やし殻を原料にした高品質の活性炭を製造しているところが強みとなっています。

今後の成長市場は、急激な経済成長によって大気汚染や水質汚染に悩む中国その他の新興国と見られており、工業用空気清浄、水処理、窒素酸化物分離、キャパシタ、またリチウムイオン2次電池材料などへの展開が期待できると見られます。

買収の概要と株価への影響は

今回の買収に話を戻すと、クラレはNY市場に上場するCCC社の全株を1株21.5ドルで買収し、独禁法をクリアしつつ2017年末までのクロージングを予定している模様です。

これはCCC社の直近52週の平均株価15.2ドルに対して41%のプレミアムを乗せるなど、やや高めの買収価格と見られます。買収総額は約1,218億円で、資金調達は短期借入金、社債等で行う方針です。

のれん償却の期間、短年度業績への影響は現時点では不透明ですが、足元のCCC社の株価は上記の15.2ドルを下回る13ドル台で推移しており、結果としては60%以上のプレミアム付与になるため、市場は買収価格を割高だと判断し、株価の大幅な下落につながったと考えられます。

米カルゴンカーボンの株価推移(2010年以降)

出所:SPEEDAをもとに筆者作成、株価は週足ベース

株価の下落は新規投資のチャンスか?

クラレは意外と海外投資の実績が豊富です。2001年の独クラリアントのポバール設備の買収、2014年の旧デュポン社のビニルアセテート事業買収など、コア事業の海外展開に果敢に挑戦してきた経験を持っています。

現在の中期経営計画「GS-STEP」では、成長性ある新領域の確保、地球環境に貢献する製品ラインの拡大を目指していることから、今回のCCC社買収を決断したと考えられます。その前段階として、活性炭事業を行ってきた子会社クラレケミカルを本体に吸収し、2017年1月に炭素材料事業部を正式に立ち上げています。

この新体制にCCC社の有する16カ国の世界的な販売網を加え、有機的にシナジーを引き出すことでコア事業として展開できると考えたのかもしれません。シナジー効果については現時点では未公表ですが、ニュアンスとして50〜100億円のイメージといったところです。

2014年の旧デュポン社のビニルアセテート事業買収は6億ドル強でした。それに対して、今回のCCC社は11億ドル超と同社としては過去最大の買収案件となります。

今後、のれんの金額はいくらなのか、具体的なシナジーやリチウムイオン2次電池の負極材への事業展開はどうなるのかなどは、年内クロージングに向けて明らかになるでしょう。それまでは、先述のように買収価額が割高だと市場が判断し、株価が低迷する可能性が高いと考えられます。

しかし、同社はビニルアセテート事業を利益の柱とする素材セクターの勝ち組企業ですので、この局面での株価の低迷が新規投資のチャンスとなる可能性もあるでしょう。その意味で、今後のCCC社に関する情報には注視していきたいと思います。

石原 耕一

ニュースレター

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石原 耕一

早稲田大学法学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン校AMP修了。
大学卒業後、和光証券(現 みずほ証券)に入社。その後、リーマンブラザーズ証券、UBS証券、みずほ証券等でアナリストとして40年以上株式市場で調査活動に従事。特に化学セクターでは20年以上の調査経験を持つ。